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ミアシャイマーの提案する四つの「対中戦略」

今日の横浜北部は朝からよく晴れましたが、午後から少し雲が出てきました。

さて、久々の更新です。

その理由なんですが、実はミアシャイマーの『大国政治の悲劇』の第二版の翻訳作業が佳境を迎えておりまして、数日以内に完成させないと他の仕事ができないので必死やっていたからであります。

今回の特色は、すでにご存知の方もいらっしゃるように、最後の第十章がすべて今後の中国の分析に書き換えられているところでありまして、当然ですが、いくつか興味深い記述があります。

その中でもとくに気になったのが、今後の中国に対してアメリカやその同盟国たちがとるべき戦略についてのもの。

ミアシャイマー自身によれば四つあるとのことですが、それが書かれた部分を、今回はここで特別に要約して掲載しておきます。

===

●台頭する中国に対処するための最適な「第一の戦略」は「封じ込め」である。これによれば、アメリカは北京政府が領土を侵略したり、より大きくみればアジアにおいて影響力を拡大するために軍事力を行使するのを牽制することに集中すべきであることになる。

●この目標のために、アメリカの政策担当者たちは中国周辺のなるべく多くの数の国々を巻き込んでバランシング同盟の結成を狙って動くことになる。そこでの究極の狙いは、NATOのような形の同盟関係を構築することだ。冷戦期のNATOは、ソ連の封じ込めという意味ではかなり効果的な制度だったからだ。

●また、アメリカは世界の海の支配の維持に努めなければならず、これによって中国がペルシャ湾や、とりわけ西半球のように、離れた地域に戦力を投射するのを困難にしなければならないからだ。

●オフショア・バランサーとして豊富な歴史を持つアメリカにとって理想的な戦略というのは、なるべく背後にいて、中国の周辺国たちに中国封じ込めのほとんどの重荷を負わせるというものだ。つまりアメリカは実質的に中国を恐れるアジアの国々にバック・パッシングをするということだが、これは以下の二つの理由から、実際には行われない。

●その理由としてまず最も重要なのは、中国の周辺国が中国を抑え切れるほど強力ではないということだ。したがって、アメリカには反中勢力をリードするしか選択肢は残されておらず、その強力な力のほとんどをリードすることに傾けることになるはずだ。

●さらにもう一つの理由は、中国に対抗するためのバランシング同盟に参加するアジアの多くの国々の間には大きな距離の開きがあるという点であり、これはインド、日本、そしてベトナムの例を考えてみても明白だ。

●したがって、ワシントン政府には彼らの間の協力関係を取り持ち、効果的な同盟体制を形成する必要が出てくる。もちろんアメリカは冷戦時代に似たような状況にあったわけであり、ヨーロッパと北東アジアでソ連を封じ込める重荷を背負う他に選択肢はなかった。

●現地の国々が潜在覇権国を自分たちの力で封じ込められない場合には、沖合に位置しているオフショア・バランサーというのは、 実質的にオンショア、つまり岸に上がらなければならなくなるのだ。

===

「封じ込め」の代わりとなる戦略は三つある。最初の二つは、予防戦争を起こしたり、中国経済の発展を遅くするような政策を採用することによって中国の台頭を阻止することが狙われている。

●ところがこの二つのどちらもアメリカにとっては実行可能な戦略とはならない。三つ目の戦略は「巻き返し」(rollback)であるが、これは実行可能でありながらその利益はほとんどない。

「予防戦争」が実行不可能な理由は、単純に中国が核抑止を持っているからだ。アメリカは自国、もしくは同盟国に対して報復可能な国の本土に対して破壊的な攻撃を仕掛けることはできない。また、中国が核兵器を持っていなかったとしても、アメリカの大統領が中国に対して予防戦争を仕掛けることは想像しづらい。

●中国がこのまま急激な経済成長を続けることができるのか、そして最終的にアジアを支配しようとして脅威となるのかは誰にも確実なことが言えないのだ。この未来の不確実性も予防戦争を見込みのないものにしている。

「中国経済の成長を遅くする」という戦略は、核戦争に比べれば確かに魅力的な選択肢ではあるが、これもまた実行不可能なものだ。この場合に一番の問題となるのは、アメリカの経済にダメージを与えずに中国経済を鈍化させる実際的な方法が存在しないという点だ。

●もちろん「中国経済の方がより大きなダメージを受けるはずだから相対的にアメリカ経済の立場が上がる」という議論もできるだろう。ところがこれが実現するのは、アメリカが中国以外の貿易相手を見つけることができて、中国側は見つけられないという二つの条件が合わさった場合だけだ。

●あいにくだが、世界中の多くの国々は中国と経済的な結びつきを深めたいと考えており、ワシントン政府が中国との貿易と投資を断絶するためにつくりだした真空状態は、それらの国々によって埋められることになる。

●たとえばヨーロッパの国々というのは、中国に深刻な脅しを受けることがないため、貿易相手としてアメリカの立場に取って代わる最有力候補であり、彼らが中国経済の発展を引き続き促すことになるはずだ。端的にいえば、中国は経済的に孤立させることはできないため、アメリカはその経済に対する悪影響をあまり与えることができない。

●「封じ込め」に代わる三つ目の戦略は「巻き返し」であるが、これにはアメリカが中国を弱体化を狙ってその友好国の政権の体制転換をしたり、さらには中国国内でトラブルを起こしたりすることを含む。

●たとえばパキスタンが中国側と密接な関係を結んでいるとすれば(これは将来確実に実現しそうなことだが)、ワシントン政府はイスラマバード政府の体制転換をして、親米派のリーダーにすげ替えるのだ。もしくはアメリカは新疆ウイグル自治区やチベットなどで独立派を支援するなどして政情不安を煽ることもできる。

●アメリカは冷戦時代にソ連に対して主に「封じ込め」を実行していたが、現在わかっているのは、いくつかの面で同時に「巻き返し」をやっていたということだ。一九四〇年代後半から五〇年代前半にかけてソ連国内で反乱工作をしかけていただけでなく、親ソ派と思しき世界中の無数の政府のリーダーたちを次々と追放していった。

●実際にもワシントン政府は、一九五〇年代から六〇年代にかけて中国に対していくつかの隠密工作を直接仕掛けている

●このような「巻き返し」工作は、超大国の間のバランス・オブ・パワーにはわずかな影響しか与えておらず、ソ連崩壊を早めることにはつながらなかったと言えるが、それでもアメリカのリーダーたちはあらゆるところで「巻き返し」を実行しており、ワシントン政府の政策担当者たちが将来強力になった中国に対して、この政策を使わないはずがないとは言い切れないのだ。

●それでもアメリカにとっても最も効果を発揮する戦略が、今後も「封じ込め」である事実は変わらない。

===

いかがでしょうか。

まとめると、

1,封じ込め
2,予防戦争
3,中国経済の鈍化
4,巻き返し

となるわけですが、最終的には「封じ込め」を推しております。

うーん、なんというか、彼の国際政治の理論の中には「相互利益」とか「協力」とか「愛」という要素は微塵もないわけで(苦笑

ということで夏までには出版できそうな雰囲気です。がんばります。

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