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データでつかむサイバー犯罪動向

1.イメージではなく数字で全体像を把握する

 インターネットが身近な存在になり、みなさんも、ニュースサイトを見たり、SNSに投稿したり、ショッピングサイトで買い物をしたり、オンラインで自分の銀行口座から振込を行うことなどが増えてきたのではないでしょうか。こうしてインターネットの利用シーンが拡大するにつれ、インターネットユーザーを狙った犯罪も増加しています。みなさんも普段からサイバー犯罪の深刻さを伝えるニュースを目にしているのではないでしょうか。

ところが、ニュースで取り上げられることの増えた「サイバー犯罪」ですが、その全体像が伝えられることはあまりありません。増加するサイバー犯罪への対策を適切に講じるためにも、データに基づき正確に現状を把握することは、インターネットを通じてさまざまなサービスを提供する企業にとっても、サービスを利用するユーザーにとっても大切なことです。今回は、警察庁から3月に公表された最新の各種サイバー犯罪統計を用いて、サイバー犯罪の現状を、なるべく全体像を把握しやすいようにまとめました。

2.サイバー犯罪全体の動向


 サイバー犯罪の全体的な動向は、警察庁「平成25年中のサイバー犯罪の検挙状況等について」にまとめられています。サイバー犯罪が過去どのような推移をたどってきたかを併せて把握するため、警察庁が過去に公表したデータも併せてグラフにしました(図1)。

図1 サイバー犯罪の検挙件数の推移

 図1で確認できるとおり、昨年のサイバー犯罪の検挙件数総数は8,113件と過去最高を記録しました。また、これまでの推移を見ると、平成23年を除いて、検挙件数は一貫して増加を続けてきたことがわかります。

これらのサイバー犯罪の検挙件数のうち、最も大きな割合を占めるのが「ネットワーク利用犯罪」(図1青部分)です。ネットワーク利用犯罪とは、警察庁の定義によれば、「犯罪の構成要件に該当する行為についてネットワークを利用した犯罪、または構成要件該当行為でないものの、犯罪の実行に必要不可欠な手段としてネットワークを利用した犯罪」です。これではわかりにくいため、簡潔に要約をすると「犯行の重要な部分でインターネットを利用している犯罪」といったところでしょうか。例えば、電子メールやSNS上で詐欺をもちかけること、出会い系サイトの運営においてサクラ従業員を雇って不正に料金をだまし取ることなどが該当します。

 このように、「サイバー犯罪」という言葉から一般的にイメージされがちな「高度なIT技術を駆使して企業や個人のパソコンに侵入する」などのイメージとは異なる犯罪もサイバー犯罪に含まれます。サイバー犯罪統計で集計される犯罪には、このように多様な種類の犯罪が含まれることに留意する必要があります。

3. ネットワーク利用犯罪の動向


 さて、ネットワーク利用犯罪の検挙件数の内訳も過去の推移を含めて確認してみましょう。これも先ほどの警察庁資料から確認することができますが、警察庁資料では内訳の分類がやや細か過ぎるため、全体の傾向を捉えやすいよう改めて分類し直しました(図2)。

図2 ネットワーク利用犯罪件数の推移
 図2で確認できるとおり、最近では著作権・商標権の侵害(図2青部分)、児童ポルノやわいせつ物の頒布(図2緑部分)が増加しているのが確認できます。
他方、かつては大きな比率を占めていた詐欺(図2赤部分)は件数、全体に占める比率のいずれも低下しています。この要因の一つとして、かつてインターネット利用詐欺全体に大きな比率を占めていたオークション詐欺の件数が大きく減少したことが挙げられます(図3)。

 Yahoo! JAPANにおいても、1999年にオークションサービスを開始して以来、次々に新たな手口が試みられる詐欺に対して、本人確認の厳格化、パトロールの導入、不正利用検知対策の充実、インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)を通じた模倣品の排除など、さまざまな対策を10年以上に渡り積み重ねてきた結果、一定の成果を挙げています。

図3 インターネット利用詐欺件数の推移
 では、オークション詐欺に代わって、最近ではどのような詐欺が横行しているのでしょうか。これについては適当な警察庁の統計がないため、消費者庁への相談件数の推移を確認すると、海外のネット通販サイトを通じた詐欺が増加していることがわかります。具体的には、ブランド品の模倣品を売りつけるサイトや購入後に商品を発送しないサイトなどの被害に遭った消費者からの相談件数が、平成25年に急増しています(平成25年 2,325件、前年比+1,688件)。このような状況に対処するため、消費者庁は悪質な海外ネット通販サイトを一覧にまとめて公表し、消費者に注意喚起する取り組みを始めています。

4.複眼的にサイバー犯罪の動向を掴む


 ここまで、サイバー犯罪統計のうち、検挙件数の推移を確認してきました。検挙件数とは、文字どおり、警察で検挙した事件数のことですが、この数字の中には、警察に相談が持ち込まれながらも被害届が受理されず事件として認知されなかった案件、警察が事件の発生を認知しながらも犯人を特定できずに検挙に至らなかった案件などは含まれていません。サイバー犯罪に限らず、犯罪の全体像を把握するには、検挙件数のみに注目するだけでなく、認知件数や警察への相談件数なども合わせて、総合的に捉えることが重要です。
サイバー犯罪の認知件数については、一部の犯罪の統計しか公表されていないため、今回は、「平成25年中のサイバー犯罪の検挙状況等について」にまとめられている、警察への相談件数を見てみます。
 
図4 サイバー犯罪に対する相談件数の推移

 図4で確認できるとおり、サイバー犯罪についての相談件数は、平成17年に8万件を越えて以降、おおむね8万件前後で横ばいに推移しているといえます。これは、サイバー犯罪の検挙件数が、ほぼ一貫して増加を続けてきた(図1)こととは対照的です。

 この理由を断定的に語ることはできませんが、少なくとも、サイバー犯罪に関する国民から警察へのさまざまな相談は、日々のニュースで私たちが持っているような「最近急増している」「ここ数年右肩上がりである」というイメージとはだいぶ異なるようです。他方、相談件数が横ばいでも、その中で事件化する案件(認知件数)が増え、それに伴い検挙件数も増加していると解釈すれば、「近年、サイバー犯罪の深刻度は増している」といえそうです。

このようにサイバー犯罪に関する統計は、それぞれに特徴があり、いずれの数字も解釈にあたっては、その「クセ」を押さえて理解する必要があります。サイバー犯罪についてイメージではなく数字を押さえることが大事であると同時に、一つの数字のみを見るのではなく、さまざまな数字を確認して、総合的、整合的に理解する必要があるのです。

 今回は、サイバー犯罪に関する統計のうち、全体の検挙件数と警察への相談件数、検挙事件に最も大きな割合を占めるネットワーク利用犯罪の動向について確認しました。次回は、サイバー犯罪のうち、ネットワーク利用犯罪に次いで検挙件数が多い不正アクセス行為についての統計を解説する予定です。

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