■大雑把なデータがあれば
最近はどのシンポジウムやフォーラムに出席しても、各パネラーは、詳細なデータをパワーポイントにくっつけて発表している。
僕はそうしたデータそのものがあまり好きではなく、大雑把な傾向さえつかめればいいと思っているので、パネラーたちがデータを説明しているときはだいたい別のことを考えていたりする。
大雑把な傾向とは、たとえば「ニートはここ10年減少していない」といったものだ(たとえばこんな記事→「ニート」数推移をグラフ化してみる(2013年)(最新))。
たとえば、フリーター数に関するこんな調査(第2節 若年無業者,フリーター,ひきこもり)。
若者自立塾や地域若者サポートステーションといった若者自立支援事業が展開されて10年近くたつというのに、一向にニートの数は
減っていない。また同時に、フリーター(非正規雇用の代表的存在)の数も、劇的には減少していない。
僕にとってみれば、「必要なデータ」はこの程度のもので十分で、こうしたデータにしても微妙な問題はあるのだろうが(対象数・調査法等)、まさに「今の傾向」がわかるものであれば十分だ。
ポイントは、そうした大雑把なデータから何を読み取るかという点にある。
■非正規の供給母体?
若者支援におけるポイントは、「ここ10年多額の税金を費やして若者支援してきたが、ニートは一向に減少せずフリーター数も目立った変化はない」ということだ。フリーターに関しては、25才以上で年齢ごとに区切った人口割合はむしろ増加しているという。
このような「大雑把な」データから何を読み取るかというと、
1.「若者の自立支援は、一人ひとりの若者と出会っていくと相当な意味があるのだが、全体としては劇的効果があるのだろうか」
という第一点があげられる。そして次に、
2.「それでもある程度意味があるとして、そうした若者自立支援は、結局非正規雇用数の供給母体になっているのではないか」
という、身も蓋もない疑惑があげられる。
1.については、昨年末あたりに「サポステ不要論」も出たようだから、そこそこ共有されているようだ。僕自身もこんなYahoo!ニュース記事を書いてきた(サポステがあぶない?~その認知度をあげるために~)。
結局今年度も予算は減額されたとはいえ、総額40億円程度で継続している事業だから、まだ「不要論」の結論は出ていないと思う。
問題は、2だと僕は思っている。
結局、各自立支援施設(サポステや各地のNPO)ががんばってニート支援をしたとしても、その「自立」のほとんどは「非正規雇用」にとどまるのであれば、それは単に、我が国に固定した「格差社会」の補強になっているだけなのでは? という根本的疑問だ。
■サポステは企業に迫れ
現在日本の非正規雇用の割合が全労働者の1/3を超えてしまっているのは(非正規雇用の現状はどうなっているの?)、各調査の報道どおりだ。
この傾向は今後も劇的変化はすることはなく、むしろゆっくりと非正規の割合は増加すると僕は予想している。
それがどの程度でとどまるかはわからないものの、グローバリゼーションが本格展開していくと、非正規雇用層で雇用調整していくのは素人でもわかる。
国内経済を最低限維持(というかグローバル化における活性化?)するために必要な層が非正規雇用層で、変な言い方だけれども、雇用者は常に非正規雇用層を一定度欲していると僕は思う。
だから、非正規雇用層を創出してくれる可能性のある「若者自立支援」施設あるいはシステムは必要だ。
僕などは、ニート支援にかかる経費総額が、そうした非正規雇用層創出によって産み出される雇用側(あるいは日本経済全体)の利益とどうバランスをとっているのか、気になったりする。
いまはたぶん、支援にかかるコストの高さのほうが問題になっているのかもしれない。だからといって放置しておくと生活保護費激増等の社会的コストの問題もある。だから、そのあたりの間をとって、「若者支援は必要」となっているのだろう。
問題は、サポステを中心とした各自立支援施設が、「平均的ゴールは非正規雇用にある」という事実を明記していいことだろう。
つまりは、若者支援施設は格差社会を補強している。このことを共有した上で、各支援施設は、たとえば「企業側に若者への柔軟な社会保険適用を迫る」等の、若者への個別支援を超えた、社会システム全般に影響を与える動きをしてほしい。★
※Yahoo!ニュースからの転載