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2014.05.11

■5月某日 イマイチ成果が見えなかった安倍総理の連休利用したヨーロッパ訪問。帰国すると、さっそく集団的自衛権確立に向けて与党内での政策協議を進めるよう指示を出した。連立与党の公明党が慎重な構えを崩していないことから、早急な閣議決定を見送り、9月の臨時国会をメドにという方針に転じたようだ。とはいっても安倍総理としては何が何でも集団的自衛権の解釈改憲はやり遂げたいというのが本音であることに変わりはない。そのため、有事と平時の間のグレイゾーン事態に対処するための法整備を先行させる案を持ち出した。具体的には尖閣が占拠された場合に、どこまで踏み込んだ対応が出来るかどうかを策定するために法整備を急ごうというわけだ。憲法9条改正に向けた国民投票法案も衆議院で可決された。たいした論議もないままに、施行から4年後に選挙権を20歳から18歳に引き下げることなどを盛り込んだものの、社民党と共産党は反対。それ以外の政党は賛成した。この法案もグレイゾーンへの対処法も公明党を議論に引き込むことで、集団的自衛権の論議へのステップにしようという安倍政権の魂胆が透けて見える。国民の合意も得られていない政策に関して、閣議決定し、一強多弱の国会で強行採決しようというのが、安倍総理の基本戦略だ。

 そんな中、5月10日付読売新聞が、一面トップで「辺野古 秋に着工」「普天間移設 知事選前に前倒し」とのスクープ記事を掲載した。辺野古に関しては6月頃にはボーリング調査が開始されると見られていたが、今年11月に予定される県知事選の結果を待つことなく、今年の秋には本体工事に着手するというわけだ。驚きである。記事では「政府方針」とあることから、防衛官僚や官邸筋のリークがあったのだろう。讀賣新聞の渡辺恒雄代表取締役会長兼主筆と安倍総理は昵懇の間柄。その関係もあって、消費税増税やオバマ大統領の訪日で話題となったTPPの日米合意もスクープしている。今回のスクープも安倍政権の本音を代弁したものと解すべきだろう。翌日には沖縄の地元紙である琉球新報や沖縄タイムスも同じ内容を一面トップで報じた。これで、官邸の世論操作を狙った観測気球との見方も消えたということだろう。このやり方も安倍政権の得意の手法だ。

安倍総理の本性がどんどん露わになり始めたという事だろう。沖縄の民意に対する配慮なんて安倍総理の頭の中には存在すらしていないのかもしれない。米国との同盟を強化し、一緒に戦争の出来る国を目指して一心不乱なのだろう。そのためにはTPP交渉においても米国に大幅譲歩して、日本の農業が衰退しても仕方がないと思っているのではないか。むろん、食糧自給率も確実に下がるだろう。TPP交渉において、甘利明担当大臣や官僚たちが米国と対等な交渉が出来ると思っている国民はほとんどいなかったのではないか。結果は、自民党の公約すら無視して牛肉や豚肉の関税の引き下げの方向で動き始めている。

 国際情勢も流動的だ。親ロシア派によるウクライナ東部の住民投票が実施されようとしている。タイでもインラック首相が辞任に追いこまれたことで政変が発生し、国内世論は二分している。南シナ界ではベトナムやフィリッピンと中国との海洋権益をめぐる緊張状態が続いている。日本が外交的に出る幕はないのが現実だ。

 作家の渡辺淳一氏が前立腺癌で80歳の人生に幕を引いた。渡辺氏は「鈍感力」(集英社)の中で,「ガンに強くなるために」というエッセイを書いている。鈍感力がガンに勝つ秘訣というわけだが、さすがの渡辺氏も癌には勝てなかった。いろいろとお世話になったウワシンからも哀悼の意を表しておきたい。

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