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「日本の株式は今後あまり上昇しない」… ある著名経済論客の講演を聞いてきた

先日、小泉内閣で竹中平蔵氏の経済ブレーンをされていた先生の講演を聞かせて頂いた。

参加者限定の特別な会合だったので、その先生は『聴講した後にブログなどで私の名前は書かないで!』と仰せになられていたので敢えてお名前は伏せておきたい。

テレビなどにも多数出演されている、元経済官僚出身で現在有名私大の教授をなされている、日本でも指折りの経済における論客であることは誰もが認める優秀な方である。

「日本の株式は今後あまり上昇しない」という題目の講演であった。

もちろん、いつも私が話すように、たとえ東京大学やハーバード大学の経済学部の教授でも、あるいは国内系・外資系を問わず大手金融機関の有名なエコノミストでも、さらには優秀な官僚でも、政治家でも将来のことは誰にもわからないので・・・ 今から書くことを信じる必要はないし、変な失望をする必要もない。

政府(安倍総理)に物申せる立場の優秀な経済学者、経済実務家がこのように考えていますよ、ということをクライアントの皆さんにご報告したいだけである。

なんで日本株式が上昇しないのか? 結論から言うと現状の支持率の高い安倍総理をもってしても「痛みの伴う構造改革・規制緩和ができないから」というものであった。

今回のアベノミクス(安倍総理が訴える経済政策)における【3本の矢】

①日本銀行による異次元の金融緩和(日本銀行が金融機関の保有する国債等を大量に買い入れて世にお金をばらまく政策)

②大胆な財政出動(産業政策といわれる補助金のばらまきと公共事業など)

③構造改革による成長戦略

この中の①と②はすでに実施されており、それなりの効果も出ている。

一昨年以降株価は上昇し(日経平均は昨年50%以上上昇)、為替も円安(一昨年以降1ドル=80円台から一気に1ドル=100円台に)に振れた。ところが、①は一部の日銀マンの抵抗、②は一部の財務省官僚の抵抗があっただけで、ほとんど全くといってよいほど

【痛みを伴わない政策】である。

すなわち目先的には誰にも痛みが無い政策である。

今年6月に政府から成長戦略が発表されるのでそれを待ちたいが、講演をされた先生はおそらく【法人税減税】は打ち出されるだろうが、それ以外の規制緩和、構造改革は大きな抵抗勢力に阻まれ、すべて頓挫すると話されていた。

現状、国会議員の95%以上、ほぼ全員が族議員化(各業界を代表する議員)しており、あらゆる【改革】に抵抗しているらしい。

特に雇用規制の緩和(日本は正社員に非常に優しい。それを改正、修正しないと雇用が流動化しないといわれている。すなわち、ある程度(一定の制約はあるだろうが)正社員であったとしても【解雇しやすくできる】ように法律を改正すべきと訴えている)は労働組合など多くの団体が反対しており、政策議論が進まない。

今後「グローバル化(安い労働者が手に入る)」と「デジタル化(人手は必要なくなる)」で多くの労働者の賃金は上昇しないと予想されている。

だから若者中心に能力を磨かせるような政策や社会保障制度の改革(現状の社会保障制度/年金・医療・介護は年配者には優しいが、今後の若者は厳しくなることが予想されているからこそ大胆な改革が必要)を急がないといけないにもかかわらず、政治家の先生方は必ず選挙に行く年配者の目(票)/すなわち世論が気になり政策議論が進まない。

今回の講演中でも大学教授でもあるその先生は、日本の大学生は「問題発見能力」と「問題解決能力」は極めて低いと話されていた。多くの日本人は「何をすれば良いか」ばかりを考えるだけで、「なぜそれをするのか」ということを考えていないと指摘されていた。

ご自身の子供は日本の大学に進学させることはまずない、と言い切ってもおられたことも印象深かった。自分の子供には好きなことをやらせて、人から評価される経験をたくさんさせたいと発言されていた(常に人の目にさらされ、そこから評価されるということは非常に大切であるということであろう)。

それができるのならば大学など進学する必要はない、とのことであった。特に日本の大学ではそれを学ぶことはできないということなんだろう。

特に雇用の流動化(正社員を解雇しやすくすること)の話の中で面白かったのは、労働者の流動化も重要な政策の一つであるが、それ以上に【経営者の流動化】がそれ以上に重要であると話されていたことである。

要はパフォーマンスの悪い(売り上げや利益を挙げることのできない経営者、また雇用を守れないような経営者はクビということ)経営者は解雇されなければならないということである。

コーポレートガバナンス(企業の統治)の強化のために、独立した取締役会の設置を義務化して、無能な経営者は解雇できるようにすべきだ、と話されていた。

過去20年、グローバル化などで大きく変わる世界経済に日本の多くの経営者がついていけていない。新興国(パソコン一つとっても中国のレノボ、台湾のエイサー、液晶ならば韓国のサムスン、自動車ならばインドのタタなどなど)で台頭する企業に後塵を拝してしまっている。

一昔前、ソニーのウォークマンが世界を震撼させたような度肝を抜くようなイノベーションが非常に少なくなったのは、時代についていけない経営者の責任が非常に大きいということだろう。

ここ昨今、復活したように見える企業の多くも円安と合理化で一時的に復活しているだけ。

特に講演の中ではJALやエルピーダメモリーの話をされていたが、どんな会社でもそれまでの莫大な負債(借金)を棒引きにして(銀行の支援)、莫大な公的資金をつぎ込んで(政府の支援)、合理化策をとれば(賃金カットとリストラ、早期退職者を募る)、ある程度の利益は出てくる。悲しいことであるが『日本企業の復活』とは言い難い、と厳しい評価をされていた。

バブル崩壊以降、多くの金融業界の専門家たちが日本株を安定(上昇)させるための最大の株価対策は『死なねばならない企業が死なず、日本はゾンビ企業だらけ。その責任の多くは経営者にある』『日本の上場企業の経営者を刷新することだ!』とよく耳にした。まさにそのことを今回の講演でも聞いた。

今回の講演で面白い話をたくさんお聞きしたが、その先生は「安倍総理は非常に良く頑張っている。今の政府は良くやっているが、政治家(業界団体を守ろうとする方々)、労働組合(労働者を守ろうとする方々)、経団連(企業経営者を守ろうとする団体)、各種業界団体などなどの抵抗勢力が、多くの構造改革あるいは規制緩和に対し異議を唱えており、悲しいことだが安倍さんが唱える第三の矢は不発に終わる」と話されていた。

当然、そうした理由から日本の株式は一時的な金融緩和や財政出動で持ち直したもののほぼすべての政策が痛みを伴わず、長期的成長戦略に貢献しないものばかりであるために持続的に上昇することはないだろうと予想されていた。

内閣のブレーンまで歴任し、優秀な経済学者が唱えていることが私のようなものにも見えている。にもかかわらず変えられないのは、日本の過去(夢のようによかった永らく続いた戦後の高度成長期)に日本人全員がしがみついているから。それこそが硬い岩盤(抵抗勢力)になっている。日本人のほとんどが持っているその考え方、価値観、倫理観そのものが岩盤なのである。

一体、誰がその岩盤(過去の常識や価値観、倫理観)をぶち壊すのだろうか?

できれば私は 創造的破壊者の一人としてこの岩盤を打ち破る一助になりたい、と切望している。

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