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「自然環境」のみが環境ではない――いまなぜ「都市の環境倫理」を問うのか ‐ 吉永明弘

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2014年1月に『都市の環境倫理――持続可能性、都市における自然、アメニティ』(勁草書房)を上梓した。「環境倫理」とは、環境や環境問題に関する人間社会の行動規範といった意味で、1970年代からアメリカで用いられるようになった言葉である。

環境倫理を探求する学問分野が「環境倫理学」で、当初は「自然を守る理由は何か、自然にはいかなる価値があるのか」とか「自然物にも権利があるのではないか、人間は自然物の権利を尊重すべきではないか」といった議論がさかんになされた。つまり、そこでの環境はもっぱら「自然環境」を指していた。それに対して、この本では「都市」という環境を問題にしたところに特色がある。

「都市の環境倫理」がテーマ化されたのは、アメリカでも2000年代に入ってからである。日本では、今道友信『エコエティカ』(講談社学術文庫)と御子柴善之「都市生活者の環境倫理」を除いては、現在でも都市環境は議論の射程に入っていない。それはひとえに「環境」が一方では「自然環境」(原生自然であれ里山であれ)として、他方では「人間の資源環境」(石油、金属、食料など)としてテーマ化されてきたからである。

逆に言えば、従来の環境倫理学者からは、なぜ、あえて都市の環境倫理を問うのか、という疑問がわくだろう。また、一般的に環境問題といった場合に、都市の問題はあまりイメージされないようにも思われる。

復興支援は環境倫理のテーマである

例えば、私は大学の「環境と倫理」の授業で3.11以降の被災地の「復興支援」のあり方について議論している。それを公開授業として行うことになったとき、広報の方から「環境倫理」と「復興支援」とのつながりが分からないから説明してほしいと言われた。一般的に「環境」の分野は、公害問題や地球温暖化問題、あるいはリサイクルなどの「エコ」な活動、それからいわゆる自然保護運動などを扱っていると見られている節があるので、そのような「環境」に関する倫理と「復興支援」とがストレートに結びつかなかったのだと思う。

しかし、そもそも環境とは、主体(=人間。人間以外も主体になるが、私たちは人間なので「人間」を主体とする)をめぐり囲むものすべてを表す言葉であり、そこには自然環境も文化的環境も含まれる。そこから環境倫理とは、そのような「環境」に関する人間社会の活動がどうあるべきかを問うものである。したがって、人間の環境としての被災地の復興支援はどうあるべきかについても、環境倫理のテーマとなるはずである。

また被災地支援だけでなく、普段の「まちづくり」や「都市計画」のあり方も当然、環境倫理のなかで扱われるテーマである。「都市の環境倫理」がこれまでほとんどテーマ化されてこなかったのは、環境倫理学者の「環境」概念に偏りがあったことを示すものといえる。

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これまでの環境倫理学と都市研究をふまえながら、都市の持続可能性、都市における自然、都市の快適な居住環境(アメニティ)の維持という三つのテーマを軸に規範的な論点をわかりやすく提示

都市環境が圧倒的に優れているという主張ではない

環境倫理学が対象とすべき環境の範囲には、奥山、里山だけでなく、都市も含まれなければならない、というのが私のおもな主張である。なかでも特に、都市に注目すべき理由は、(1)環境倫理を自分のものとして具体的に考えるためには、身近な環境についての議論を始めようということ、(2)現代では多くの人にとって身近な環境は都市であること、(3)それにもかかわらず、これまで都市という環境が環境倫理学であまりにも見過ごされてきたこと、これらによる。

したがって、「都市が圧倒的に優れた環境で、田舎や里山は価値が低い」と言うつもりは全くない。例えば私は都市地域を拡張することを求めてはいない。『都市の環境倫理』では、都市の拡張(スプロール化)は有害であることを指摘し、むしろコンパクトな都市に密集しつつそこで快適に暮らすことを提案している。このことを前提として、都市に焦点を当てることに対して投げかけられるであろう疑問の声に答えてみたい。

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