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STAP問題で露呈した研究体制の未熟さ(1)リスク管理の甘さ

STAP問題は、日本の研究体制の未熟さをあらわにした事件だ。これは決して「未熟な研究者」だけが引き起こした問題ではない。もちろんこの問題にある個別の事情はいくらでもあろうが、根本的には研究体制そのものの未熟さに主因があるのではないか。

未熟なのは、日本社会にある階層社会の弊害をシニアージュニア間の非対等な雇用関係に持ち込んでいることを恥ともしない教授たちであり、本来的な分業を軽視している体制であり、教育機関であるのに学生を安い労働者として酷使することしか考えていない大学であり、大学・省庁の時代遅れの硬直化した研究評価システム・科学政策だ。

STAP論文には4人も論文の責任者(コレスポンディング・オーサー)がいた。それなのに発表直後に不備・不適切なデータが次々と見つかったことは、これらの論文を作成・発表する過程でリスク管理がまるでなっていなかったことを示している。だからこそこの問題はジュニア(若手)の研究者だけの問題ではない。

医学生物学の論文の中心はデータだ。論文を書くことで、われわれ研究者はデータそのものを発表し、データに基づいた仮説を発表している。それ以上でも、それ以下でもない。それなのにこの事実はまるですっかり忘れ去られているかのようだ。一方で、科学の本体が、つきつめるところ我々の科学的思考そのものの中にあることは、医学生物学とて他の学問分野と同じである。ところが、この科学的思考の本質を、レトリックに満ちた論文やグラント申請書を書く作業と取り違えているシニアの教授たちの何と多いことか!

生物現象が複雑きわまりなく多種多様であるからこそ、データの裏打ちのない仮説は無意味であり、それが生物学の大きな特徴だ。しかも21世紀というデータの世紀における医学生物学では、爆発的に増加・複雑化しているデータをどのように取得し、解析、理解するかということが大きな主題になってきている。

生物学がこのように大きく変化しているというのに、日本では実験データの取得・解析を、筆頭著者になる一人の若い研究者に集中的に担わせることが常態化している。これは若手からみると過剰な押しつけであり、非人間的な生活を送らざるを得なくなっている元凶だ。そして、この同じ問題をシニア側の問題としてみると、リスク管理の甘さになる。一人の研究者の問題で、チーム全体の研究結果が全て崩壊するなど本来あってはいけない事態で、このような体制を敷いていること自体が問題だ。しかし、日本の医学生物学研究のほとんどが、このような脆弱な体制で行われている。

だから私は、このSTAP問題は、理研に特有の問題ではなく、日本のどこで起きても不思議はない問題だったと考えている。

ではどうしたらいいのか。私は鍵になるのは、本来的な意味での分業の推進と研究室・研究プロセスの透明化を可能にするための制度的な裏付けをつくること、特に科学者の評価システム・キャリアパスを再検討する必要性がある。これらについてはまた別の稿で詳しく述べたい。

2014年4月28日 yahooニュース個人、小野昌弘の記事より一部変更、転載)

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