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フランスの2倍超える世界一長時間労働の日本男性-家事労働ハラスメントで世界一短い睡眠の日本女性

 明日、5月1日はメーデーです。世界各国で取り組まれるメーデーは、日本でも全国各地で取り組まれ、国公一般の仲間は、東京・代々木公園で開催される第85回中央メーデーに参加します。

 メーデーは、8時間労働を求めてスタートしました。1886年5月1日、アメリカのシカゴで8時間労働制を求め大ストライキが行われたのがメーデーの起源で、当時1日十数時間働かされていた労働者35万人がそれに呼応し全米でストライキに立ち上がったのです。

 いま安倍政権は、第1次政権当時に頓挫した「ホワイトカラー・エグゼンプション」を焼き直し、ホワイトカラーで高収入の労働者だけでなく、職種にかかわりなく一般の労働者に対しても「残業代ゼロ・過労死促進」となる法制度導入を狙っています。

 現在でも非正規労働者の増大などによって、正規労働者が削減され、一人あたりの業務量は増え、ブラック企業の増殖をもたらし長時間労働が蔓延しています。健康悪化が懸念される週60時間以上働く人は、30歳代で約18%にものぼり、1日に2人以上が過労死しているという今でも異常な働き過ぎ日本社会で、労働時間規制をなくす「残業代ゼロ・過労死促進」法が導入されれば、さらに過労死・過労自殺が激発することは必至です。

 「過労死」という日本語が国際語になっているように、長時間労働で命を落としてしまうという異常な日本社会の実態を示すデータが先月、OECDから発表されました。3月8日は「国際女性デー」だったのですが、それにあわせて前日の7日、各国15~64歳の労働時間と家事労働時間をOECDが公表し、そのデータの中で、私が最も驚いたものを分かりやすくグラフにしてみたのが以下です。


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 上のグラフにあるように、日本の男性の休日も含んでの1日当たりの平均労働時間は375分で、OECD26カ国の中で最長です。26カ国平均の259分より116分と2時間近くも長く日本の男性労働者は働いているのです。一番少ないフランスの173分と比べると日本の375分は2倍以上もの長時間労働となっています。フランスとの差は202分ですから、日本の男性は1日当たり3時間22分も長く働いていて、1年間にすると202分×365日=7万3,730分。時間にすると1228時間50分。ワタミ創業者の渡辺美樹自民党参院議員の言う通り「24時間死ぬまで働く」とすると1年間で51日も日本の男性はフランスの男性よりも多く働いていることになるのです。ちなみに男性・女性トータルの平均労働時間の数字でも日本は373分(26カ国平均268分)と26カ国中、最長の労働時間になっています。

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 そして上のグラフは、各国の15~64歳女性の家事労働(Unpaid work)の1日当たり平均時間が男性の何倍になっているかを私がグラフにしたものです。韓国が5.04倍と最悪ですが次いで日本が4.82倍と、OECD26カ国の中で突出していることが分かります。日本の男性の1日当たりの家事労働は62分で、26カ国平均139分の半分以下、ノルウェーの男性の家事労働184分の3分の1程度しかありません。(ちなみに日本の男性の家事労働は26カ国の中で3番目に短くなっています)

 竹信三恵子和光大学教授は『家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの』(岩波新書)の中で次のように指摘しています。
 私たちの社会には、家事労働を見えなくし、なかったものとして排除する装置が、いたるところに張りめぐらされている。(中略)家事・育児・介護が世の中には存在しないかのように設計された極端に長い労働時間の職場。そんな働き方によって、健康を損ね、ときには死にまで追いやられた人たちがどれだけ多いかは、過労死について書かれた多くの資料をひとつでものぞいてみれば、すぐにわかる。一方で、家事や育児や介護を担うべきものとされた人たちは、職場でハラスメントを受け、低賃金と不安定な労働に追いやられていく。

 現実に存在する家事労働をないものとしたり、「家事はお金では測れないほど大事な価値」であって労働ではない(だから待遇や労働条件のことなどあれこれ言わずに奉仕しろ)、というやさしい言葉を繰り出したりして、その働きを低コストに抑え込もうとする動きの下で、私たちは、自分たちの生活にとって重要なこの労働を、安心して行う権利を妨げられてきたとさえ言えるのではないだろうか。
 以上が竹信教授の指摘ですが、上記グラフで紹介したようにOECDの最新データを見ても、日本は女性差別、家事労働ハラスメントが極端に激しい国だということが分かります。そして、世界最悪の長時間労働によって重要な家事労働を安心して行う権利を妨げられてきた日本の男性の分までも家事労働を担わされている日本の女性は、以下のグラフにあるように、世界一短い睡眠時間を強いられているのです。日本の女性は家事労働を一方的に強いられた上に、子どもを持つと世界一賃金を差別されるなど、何重もの苦難が日本の女性を襲っています。このような世界最悪の賃金差別と家事労働ハラスメントによって、女性たちの貧困が最も深刻な様相を呈していると言えるでしょう。

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 唐鎌直義立命館大学教授に私がインタビューしたとき、唐鎌教授が最後にバートランド・ラッセルの『怠惰への讃歌』の一節を紹介してくれました。その部分を最後に転載しておきます。

 「幸福と繁栄に至る道は、組織的に仕事を減らすこと」

 今日は、バートランド・ラッセルの本からの抜き書きを持ってきました。ラッセルは、アインシュタインと一緒に脱原発の共同宣言を出した人です。ノーベル文学賞を受賞している哲学者なのですが、彼はこう言っています。

 「人は稼いだものを消費しているのであり、消費して他人に職を与えている」と。当たり前ですね、お金を使えばそのお金が他人の所得になりますからね。

「収入を消費している限り、人々の口から奪い取るのと同量のパンを再び人々の口に投げ込んでいるのである。本当の悪人は貯蓄する人である。貯蓄した人の経済的習慣の本当の結果は、国家の武力を増すことである。カネを使った方が、たとえ酒を飲んだり、博打をしたりしても、マシであろう」と言うんです。そして「仕事そのものは立派なものだという信念が、多くの害悪をこの世にもたらしている。幸福と繁栄に至る道は、組織的に仕事を減らしていくことにある」と言っています。

 勤労の道徳は奴隷の道徳

 そして「勤労の道徳は奴隷の道徳である。近代の技術をもってすれば、文明を傷つけることなしに、暇を公平に分配することができそうなものである。相当な暇な時間がないと、人生の最も素晴らしいものと縁がなくなることが多い」と言うんです。これ本当ですね。

 さらに「暇の効用は、今までよりもっと人に親切になり、人を苦しめることが少なくなり、他人を疑いの目で見る傾向も減り、戦争をしたがる気持ちもなくなってしまう」と。暇の効用です。「私達は機械ができる以前と同じように、根限り働いている。この点で、私達は愚かであったが、永久に愚かである道理はない」と言っています。

 生産性が上がれば労働時間は減る

 「生産性が2倍に上がれば、労働時間は半分に減らせる」というのがラッセルの主張です。でも私達はパソコンでオフィスのオートメーション化が進んでも、相変わらずパソコンの前にずっと居ますよね。本当は午後3時くらいに帰っていいはずなのに。私達は企業に相当な利益をもたらしているということでしょう。どんどん生産性を上げて富を多く生んでいるのに、幸せになれない。反面、1%の人がどんどん儲けて、それで変な投資をしたりして腐朽性を高めていく。

 これは『怠惰への讃歌』(平凡社)という本です。1930年頃に出て、翻訳が出たのが2009年です。この人の主張はなかなか面白いです。でもこれを言うと馬鹿にされるのです。みんな働くことが立派だと思っているから。でもラッセルは働かないことが立派だと言っている。どうやったら働かなくてすむのかを考えて文明は発展してきたのに、と言っている。本当ですよね。労働苦をいかに軽減していくかを考えて機械ができたのです。でも、その機械に縛られてさらに働いている。日本に至っては、働き過ぎで過労死や過労自殺まで頻発している。「この状況は一体何なんですか?」という根源的な問いかけが今、必要になっていると思うのです。

(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

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