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出版業界で食うというロックな生き方②先に「食えない」を経験した音楽業界から学べ

「できる人」という幻想―4つの強迫観念を乗り越える (NHK出版新書 433) [新書]常見 陽平NHK出版2014-04-09

先日、下北沢B&Bで行った『「できる人」という幻想』出版&生誕40周年記念独演会、ダイジェスト版第2弾。当日の内容に一部加筆・修正してお届けしよう。今回は、音楽業界から出版業界が学ぶべきこと。なお、前回はこちら。

■先に「食えない」を経験した業界から学べ

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私は、もともとロック小僧だ。

音楽業界から、学ぶこと、刺激を受けることは個人的に多いわけだが、出版業界に関係する人たちも、この業界から学ぶべきだと思う。出版業界よりも10年くらい先に、構造の変化を経験しているからだ。

10年前に何が起こったか?CD、つまりパッケージ流通の売上が落ちた。iTunes Storeなどネット配信が伸びていった。のちに頭打ちになり、やはり厳しくなったというが。

YouTubeなどで無料で映像・音源などが楽しめるようになったのもその頃だ。違法ダウンロードも問題となったが。要するに、無料で楽しめる世界になってきた。違法なものは問題だが、YouTubeなどはあえて無料で配信することによってプロモーションの手法となっていった。

ライブは、伸びた。さらにグッズなども含めて売る時代になった。ファンクラブなど、ファンならではのコミュニティもマネタイズと、顧客の囲い込みに使われるようになった。有名な事例だが、B'zはなぜ売れるのか?良い作品を作る情熱、スキルもそうだが、ファンクラブの会員がすごい人数になっているので、毎回初登場1位になるし、スタジアム・ツアーをやってもチケットの数があらかじめ読める。

アーチストが自分のバンドの音楽だけで食べていけない時代になっていった。例えば音楽学校の講師、スタジオミュージシャン、作曲の仕事、あるいはまったく別の仕事なども含めて食べるという風になった。ミュージシャンの友人が何人かいるが、特に若い人ほど、音楽で食べるということに過度に期待していない。

これ、最近の出版業界に極めて似てないか?

例えば、東浩紀さんがゲンロンカフェをオープンさせたというのも、著者の世界がライブ重視になってきているということだろう。今はどうなっているか知らないが、安藤美冬のサバイバルキットというのも、ファンクラブ商売だと言える。有料メールマガジンだってそうだ。

もちろん、それらのすべてが成功しているわけではない。そういえば、私も有料メルマガ撤退宣言をしてから1年だ。今後も試行錯誤は続くのだろう。

数年前に盛り上がった議論だけど、著者というか、コンテンツの創り手がどうマネタイズするかということは今後も問題になっていくだろう。どの手段で、どのバランスでやるかということなのだけど。物書き「だけ」で食べるということは、覚悟が必要だ。

私はマルチに活躍してそうで、雇用・労働、キャリア論、若者論といったメインテーマを様々な手段でアウトプットし、マネタイズしている。そして、結婚しているから生活できている。社畜から、家畜へ。よい転身ができたと思う。これが現実だ。

■電子書籍は、衝撃的に売れない

新しいメディアというのは、いつも期待を集める。だけど、それが本当に救世主なのかどうかは考えた方がいい。

例えば電子書籍だ。

電子書籍もよくも悪くも現実を直視するべきだろう。よっぽど売れている人以外は、別に電子書籍は著者を食べさせてくれない。売れている本の電子版が売れるという現実。そして、売れたところで、数はそんなに期待できない。

そういえば先日、「常見さんの本は、ウチの新書レーベルのKindle本で売上1位です!」と言われて、「お、これでなんとか来月も食べられるかも」と思ったが、何冊売れたのかと言えば、1ヶ月で40冊だったそうで。

これが現実だ。

佐々木俊尚氏は数年前『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を出していたが、現実は「電子書籍は衝撃的に売れない」となるのではないか。

いや、佐々木氏を責めるつもりはない。あの頃、佐々木氏だけでなく、出版業界関係者も、著者も期待していたのだから。

ただ、何がダメだったのかというのは検証するべきだと思う。『電子書籍は衝撃的に売れない』って本の企画、やらせてくれる出版社、ないかな。私、やるよ。電子書籍でも有料メルマガでも苦労したし。でも、この本も電子書籍化されて売れなかったらどうしよう。

他にも、有料メルマガ、ニコニコ、cakes、noteなどなど課金プラットフォームなどがあったのだが、それぞれ掲げていたメリットと現実は丁寧に検証するべきだと思う。

まあ、でも、こういうものに批判的な私だけど、それは逆に期待しすぎていたのかもしれない。

ちょっと普通の人よりも詳しい知識を持っている人が、会社に隠れてやるバイトとしては十分な、月数万円の収入がもらえる可能性があるということだったら、OKなのかもしれない。

いずれにせよ、新しいものに何かと期待しがちだけど、それに期待しすぎるのはよくないし、物事は丁寧に振り返らないといけない。

■その著者イベントに、汗が飛んでくるくらいの熱があるか?

ここ数年、阿佐ヶ谷ロフトやB&B、6次元、ゲンロンカフェ、10°CAFEなどのイベントスペースや、書店での著者イベントが流行っていると感じる。

これも、10年前の音楽業界と似ていて、パッケージだけではなく、ライブ重視ということなのだろう。いや、単純に著書を売る手段でもある。話題になるし。

イベントでの手売りというのはバカにできなくて。イベントをやると10数冊売れる。これは大きい。書店ではあっという間に陳列されなくなるから。

ただ、そのライブはちゃんと機能しているのかと思うことがある。ライブならではの楽しさがないというか。

これは、ソーシャルメディアの影響もあるといえば、ある。政治家のテレビ番組などでの失言が、メディアで叩かれるように、ちょっとした発言が意識高くtsudaられて、しかもちょっと誤解したかたちとか、文脈関係ないかたちで拡散して、他の著者との関係が悪化したり、妙な誤解あたえたり、炎上したり・・・。最近、気づいたのは、本当にやばい話をしたら、誰も書かないということなのだけど。

何より、著者たちが慣れ合いで、ガチじゃない。SUGIZOは、「まともに弾けない奴が、ラフに弾くとか言うな」って語っていたけど、まともに話せない著者がゆるく話すとか言うなよと言いたい。

で、仮にもわざわざ時間とお金を使って読者はやってきているわけで。YouTubeの動画でOKなんじゃないかという馴れ合いのイベントも多くないか。しまいには、店のオペレーション最悪なんていうイベントスペースもあるわけで。

この点、私はミュージシャンたちに学ぶべきだと思う。彼らは、2階席にも汗が飛んでくるかのようなライブをやっている。私は月に1、2本はライブに行っているのだけど、最近だとZIGGYの30周年記念ツアーと、UNISON SQUARE GARDENのツアーファイナルがすごかった。前者は50代の森重さん、戸城さんが大暴れだし、バックメンバーだと特にドラムの金川卓矢さんが魂かけてた。後者だとベースの田淵智也さんは徹頭徹尾動きまくり。スタッフもミスをしない。

まあ、物書きは文章書いてナンボなんだけど、イベントに出るのなら、ライブをやっているという自覚が必要だと思う。

つづく。

【関連記事】
出版業界で食うというロックな生き方①「売れてないな」と思った本がベストテンに入る時代

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