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知的財産権の専門家の実態とオープンソース時代での働き方

特許や商標や著作権といった知的財産権の活用のみならず、ノウハウのように権利化していない知的財産の運用は、国の成長戦略の一つとして話題です。政府には知的財産戦略本部も立ち上げられ、職務発明や営業秘密や中小企業支援について検討が進められています。

このように知的財産権は国家規模の課題だ!と会議室で議論されているものの、実際に事件が起きている現場で活躍すべき知的財産権の専門家については冷やかな評価のようです。世の中の構造が変わろうとしているときに、最新の技術や情報を扱う知的財産権の専門家はどうあるべきか?その答えはまだ明確ではないものの、少なくとも古きよき時代が終わったことを自覚しないといけないはずです。

そこで知的財産権の専門家の実態とオープンソース時代の働き方についての考えをまとめました。

知的財産権の専門家はキーマンになってない

知的財産権の専門家といえば、主に弁理士や弁護士です。その他監査法人やコンサルティング会社でも知的財産権に関する業務を提供しています。しかしそれらの人たちが時代に即して機能しているかというと、そうとは言えない冷やかな意見もあります。

・・・スタンドアローン(単独)で出てきたアイデアや成果を、人の力を素敵に借りて発展させるための仕組みやプラットフォームが今後、ますます拡充していくだろう。

それに伴う収益の配分、各種の権利の取り扱いなども重要になる。それらを法務的に取り扱う人々はエージェントとして、マッチングを促進する役割も併せ持つ。企業法務、弁理士、監査法人、コンサルタントなどはそれにいちばん近い場所に立っている。それぞれの資源(有体物、無対物を問わず)を正確に査定でき、効率よく接合を助けられるからだ。しかし皮肉なことに、そうした専門家たちの多くは、これまでのテンプレート型社会の、まさにテンプレートそのものを保守・維持するためにトレーニングされてきたのだ。(p96)

<引用:小林弘人 「ウェブとはすなわち現実世界の未来図である」> 

ただしオープン&クローズ戦略は、技術開発や製品開発はもとより、ビジネス構造を俯瞰し、競争ルールの変化を俯瞰しなければならない。これを主導するのが軍師型人材であるが、日本企業の幹部は、上記で定義する軍師型人材としての訓練を受けてこなかった。ビジネススクールにも軍師型人材を育成する機能がない。・・・

まず日本企業が持つチームワークの力を活かしたい。事業企画や知的財産と契約を担うチームだけではなく、商品企画、商品開発、マーケティング、国際標準化と認証を含む組織横断型のタスクフォースを作り、複数の人々が協業して軍師の機能を持つための人材育成法が有効だ。場合によっては、販売チャネルや生産管理システムも仲間に入れるとよい。

<引用:小川紘一 「オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件」>

「テンプレートそのものを保守・維持」、「軍師型人材を育成する機能がない」、これには同意です。というか、著者らが指摘する人材の不足が、諸外国に劣っている原因であるとも読み取れてしまいます。それについて反論することは全くできません。従来のやり方のことを「テンプレート」と表現しているのならば、それは「アイデア出たらとりあえず特許出しましょう」という考え方と推測しています。

どこが競合他社と違い特許が取れそうか?それを特許化することでどういう権利を主張できるか?それで他社の追随をどうかわせるか?ということを議論し、それらを組織として整理することが、知的財産権の活用のあるべき姿と考えています。特許をとるという結論が着地点だとしても、開発や製造やマーケティングや財務について検討して特許をとるのがプラスの選択と判断することが大切です。

暗黙知を形式知化してオープンする

このようなあるべき姿は大企業も中小企業も共通しているはずです。しかし大企業のようにマンパワーがあるところと中小企業のようにマンパワー不足で社長が知的財産権のことを兼務しているようなところでは、取り組み方が異なるはずです。「軍師型人材」は大企業にも中小企業にも必要でしょうが、中小企業の活躍が日本の産業のキーポイントであるならば、マンパワー不足を補える「軍師型人材」が必要でしょう。

しかし「軍師型人材」の教育法やこれができれば「軍師型人材」になれる、というものは体系化されていないどころか、まだ誰もなろうともしていないかもしれません。でもオープンソースの時代で仕事も働き方も変わったため、そこに目をつぶっていても仕方ないし、逆に「軍師型人材」になりやすくなったのかなとも思っています。

そういう意味でブログメディアでの発信はオープンソース化の一つと考えています。オープンソースというのはなにもキャラやアプリやプロダクトを共有するだけじゃなく、暗黙知の情報を形式知化して発信することのも含まれると思います。しかしこの業界には暗黙知は暗黙知だから形式知化できない、とか、既得権を過剰に主張する方々が、まだ多いと感じています。

知的財産権のことは、法律を見ればわかる、解説本を見ればわかる、専門家に聞けばわかる、たしかにそれはそうです。でも実務で使える情報、つまり本業のスピードを加速してあげられるような「使える情報」ってほとんど見かけません。アップルの訴訟関連のニュースだって、へーとは思うけど、だから?と思っている方々が大半ではないでしょうか。

でもそんな風にメディアで取り上げられることで、世の中の関心が高まってきているとも考えられるので、それ自体は喜ばしいことです。だからこそ、もう一歩オープンソースの時代に踏み込むステップに来ているのかなと思っています。 

知的財産権の専門家も現場思考が必要

それに知的財産は目に見えないから机上の議論で終わりがちですが、その際は現場思考を取り入れるべきです。デザイン的にどうか?開発コストや原価は?そもそも製造できるか?といったモノづくりの現場思考。たとえ中小企業であっても、他社が登録している知的財産権を研究し、それに抵触しないモノづくりと権利化がものをいう時代になると見ています。

特許がとれれば高い値段で売れるわけではありません。デザインやマーケテイングを工夫してこそ、高値でもユーザーに興味を持ってもらえるわけです。では知的財産権の役割って何?というと、継続してモノづくりを安全に行う上ではなくてはならない存在です。つまり競合他社に対する”くさび”として機能しているということです。

デザインやマーケティングをがんばればがんばるほど、この”くさび”の効果が高まります。逆に、この”くさび”がないと、サバンナの真ん中に肉を放り込むようなものです。美味しいエサをみすみせ敵に渡すように。このように知的財産権の専門家を活用する最大のポイントは、商品の企画段階から他社の知的財産権を研究するです。また活用の仕方によっては会社の企画力・営業力・ブランド力の強化につながります。

モノができあがってから研究・検討しても遅い。その時に抵触する権利が見つかったらまたはじめからやり直しです(強引に突っ込んでいもいいですが、ハイリスクです。少なくともハイリターンが見込めていない限りはすべきではないでしょう。)。

≪まとめ≫

巷では知的財産が大事だ、国家戦略だ、と謳われています。それに対して知的財産権の専門家の方々はそれぞれのやり方で取り組まれています。ただ知的財産権の専門家はもっと身近な存在としてこの時代に求められている(まだ求められていなくても、なくてはならない存在)と、ぼくは感じています。その具体策を体系化できるよう、活動し続け、それをわかりやすく伝えていくことが今後のミッションと考えています。

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2014年4月28日

著者 ゆうすけ

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