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ネットカフェで2年半暮らす母親姉妹にチャンスと詰寄るNHKスペシャル女性たちの貧困のパラドクス

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 昨夜放送されたNHKスペシャル「調査報告 女性たちの貧困~"新たな連鎖"の衝撃~」。深刻な実態を告発したということでは意味があったと思います。

 最も深刻だったのは、2年半もの間、ネットカフェで暮らしている母親姉妹のケース。19歳の姉は高校を中退してアルバイトをしていて、14歳の妹は半年以上、中学校にも通えていません。食事は1枚のパンを分け合って食べるなど1日1食。ネットカフェのフリードリンクで空腹を紛らしているのです。14歳の少女の願いは「明日の食事の心配をせず暮らしたい」――こうした深刻な「女性たちの貧困」の実態が告発されたわけですが、これに対する宮本太郎中央大学教授のコメントは、「ピンチをチャンスに」「資格を取るなど努力している女性に未来を感じる」「女性を活用しよう」などというような抽象的な指摘に終始し、結局、番組の結論は自己責任論よりのものだったと思います。

 こうしたNHKスペシャルのあり方に対して、徳武聡子さん(司法書士、生活保護問題対策全国会議事務局次長)は「NHKはなぜ生活保護のことを伝えないのか~NHKスペシャル「女性たちの貧困」を視て」とブログで批判し、尾藤廣喜さん(弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事)はツイッターで批判しています。私も同感です。

 まずもって生活保護で生存権を保障することが必要なのにそのことを一切指摘しなかった番組内容に怒りを覚えますし、その上で、すでにこのブログでも何度も指摘してきましたが、「女性たちの貧困」の根本的な原因には以下のような日本社会の構造上の問題があり、これらの問題を改善する必要があると思います。







 上のグラフにあるように、「子どもを持つ女性の賃金差別が世界最悪の日本-男性賃金のわずか39%、OECD30カ国平均の半分」という世界最悪の女性に対する賃金差別が「女性たちの貧困」の根本的な原因のひとつです。















 そして、上のグラフ・表にあるように、「日本のひとり親世帯の貧困は世界最悪、生活保護受給は世界最小、子どもの貧困を生み出す日本政府」だから、「女性たちの貧困」は深刻な状況になってしまうし、異常に少ない家族関係支出世界最低の教育支出、住宅に対する社会支出はイギリスの8分の1しかないなど異常に低い貧困対策関連支出などによって、「女性たちの貧困」も「子どもの貧困連鎖」も「男性たちの貧困」も容易に起きてしまうのです。

 その上、生活保護改悪によって、福祉のパラドクスで「本当に困っている人」さえ救えずブラック企業を増大させているのです。

 先日、私は、唐鎌直義立命館大学教授にインタビューしました。3時間以上に渡るインタビューでしたので、生活保護に関するところだけでも結構長いのですが、宮本太郎氏などを批判している部分もあるので以下紹介しておきます。

 生活保護受給者が少ないことが大きな問題
 貧困世帯の9割が生活保護を受けられず
 暮らす異常な日本社会

 ――今とりわけ生活保護バッシングが激しく、経済大国日本において餓死や孤立死が頻発するような状況です。

 一番大きな問題は、生活保護を受給するためのハードルが高いということです。簡単にいうと、丸裸状態にならないと生活保護を受けるのが難しいという仕組みになっているのです。簡単に人は丸裸状態にはなれません。とりわけ今の日本社会の構造からいうと、どんなに貧しい高齢者でもある程度貯金は持っているし、それを大事にしています。すると、そのために生活保護を受けられないということになってしまう。他にもいくつか理由はあるのですが、実際に生活保護をもらうべき人がもらえないというのが日本の生活保護制度の最大の問題です。

 これは研究者の推計によって変わりますが、私の推計では要保護世帯の約1割しか生活保護をもらえていません。貧困世帯の9割が生活保護をもらわないで生活しているというのが今の日本社会の状況なのです。そうすると、一方では30万円の貯金があるために生活保護を受けられない、または福祉事務所に行っても断られた人がいて、一方では生活保護をもらって生活している人がいる。前者からすれば腹立たしいわけです。同じような生活を送りながら、もらえない人が9割もいるわけですから。そうするとやはり生活保護受給者に対する攻撃が強まってきますよね。

 日本において捕捉率が低いということ、生活保護をもらえている人が極少数だということが、バッシングにつながる大きな要因だと思います。政府などはそれでも生活保護受給者が増えていると騒いでいますが、日本の今の状況からすれば、とんでもなく生活保護受給者が少ないことが大きな問題なのだということを見る必要があります。

 生活保護バッシング起きやすい日本と起きない欧州

 ――ヨーロッパの捕捉率と比較するとどうでしょうか?

 たとえばイギリスの場合は捕捉率がとても高いのです。イギリスは行政の責任として福祉の制度ごとに捕捉率を発表する義務があるのです。日本の捕捉率はあくまでも良心的な研究者が自分で貧困率を測定してつくっているのですが、イギリスの場合は政府の責任として発表されています。日本とは全く逆で、政府がきちんと福祉施策に責任を持って実行し、貧困をなくしているのかを監視する意味もあって捕捉率が発表されています。イギリスでは貧困者のうち85%くらいが生活保護で救済されているという状況になっています。しかも実数として生活保護を受けている国民が多いので、地域で悪口も言えないのです。なぜなら隣の人が生活保護をもらっていたり、親戚縁者の中にも必ずもらっている人がいたりするから、簡単に生活保護バッシングなんてできないのですね。つまりイギリスでは、社会保障が国民のものになっているのです。ところが日本では貧困者の1割しか生活保護を受けられない状況になってしまっているので、イギリスとは逆の形として生活保護バッシングが起きやすいということですね。

 ですから、ヨーロッパの場合は、貧困の状態にあれば生活保護が受けられる仕組みが出来上がっているので、構造的に生活保護バッシングが起きない。ヨーロッパでは、国民の誰しもがいつかは自分も生活保護をもらう可能性があるので、生活保護バッシングをすることはないのですね。

 子どもに親を扶養する義務がない欧州と
 オレオレ詐欺、振り込め詐欺まねく日本

 ――生活保護バッシングのきっかけになった芸能人の問題がありましたが、親を扶養する義務もヨーロッパにはないということでしょうか?

 ヨーロッパ諸国には、子どもが親を扶養する義務はありませんし、18歳を過ぎた子どもに対する親の扶養義務もありません。親が18歳未満の子どもを扶養する義務はありますが、子どもが親を扶養する義務などないのです。

 18歳を過ぎた子どもに対する親の扶養義務があるのは日本だけですね。高等教育費の親負担があったり、いつまでも子どもの面倒を親がみたりという、日本の場合は親と子が経済的に強くつながっている。両者は精神的な愛情で結びついているのではなくて、経済的な関係でつながっているのです。

 だから、オレオレ詐欺、振り込め詐欺は日本でしか通用しません。経済的なつながりが強い親子関係(親の甲斐性)を利用されているわけです。オレオレ詐欺、振り込め詐欺は日本以外の国にも「輸出」されるだろうと思っていましたが、そうはならないようです。

 EUの国々では親子に経済的なつながりがありませんので、親が18歳を過ぎた子どものためにお金を貯めてスタンバイしていることなんてありえない。子どもが生活に困ったら国に公的扶助申請すればいいということになるわけです。けれども日本の親は、子どもに何かあった時のためにお金を用意してスタンバイしているのですね。大学生のときの教育費、30代になったら住宅ローンの頭金、孫ができたら経済援助、子どもが何か不祥事を起こしたら等々、とにかく何か子どもに問題が生じたら、親である自分ががんばろう、それが親の甲斐性だと思っている。あの富裕すぎる鳩山家でもそのようですね。しかしそれは本来、社会保障で引き取るべきことなのです。教育費も住宅費もそうです。そうすれば詐欺事件も起きないのですが、オレオレ詐欺、振り込め詐欺が成功してしまう理由は、やはり日本の社会保障の構造が大きな原因ですね。

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