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どうする、どうなる日本のマンション――『マンション総合調査』から見えてきた課題 - 岡本正

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全国にどれくらいマンション戸数があるかご存じでしょうか。

2012年末現在で、何と約590万戸のストックがあります。わが国の1世帯当たりの平均人数は2.46人なので、居住人口にして約1450万人がマンションの住人になる計算です(国土交通省)。

国土交通省は5年に一度「マンション総合調査」を実施、公表しています。2014年4月23日には、5年ぶりに「平成25年度マンション総合調査」の結果が公表されるに至りました。本稿では、約350頁に及ぶ膨大な調査データから、昨今とくに課題とされているマンションの建替え・耐震・防災・見守り・専門家活用などをキーワードに、弁護士、そしてマンション管理士の視点から調査結果を概観します。

目次

Q1.そもそもマンション総合調査って何?
Q2.どんな人がマンションに住んでいるの?
Q3.首都直下や南海トラフ地震に備えた「耐震化」は大丈夫?
Q4.老朽化するマンション、建替え? 売却?
Q5.防災活動、災害対策、要援護者名簿はどうしているの?
Q6.専門家の活用は有効なのか?

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超高層マンションが林立する東京湾岸地域(撮影=岡本正)

Q1.そもそもマンション総合調査って何?

「マンション総合調査」は、マンションについて国土交通省が行う総合的な調査です。管理組合向けと、分譲マンション所有者(区分所有者)向けのアンケートを実施します。マンションに関して権利を持つ当事者の声が集積される貴重な資料であり、今後の国の政策の検討に当たっての基礎資料として活用されます。また、自治体、不動産業界、マスコミ等にも活用されています。

概ね、5年に一度実施され、前回は2008年(平成20年)に実施され、翌年に公表されました。今後の5年間のマンション政策の基礎となる大変重要な資料です。

調査事項は、マンション居住の状況、マンション管理と管理事務委託の状況、建物・設備の維持管理の状況、管理組合運営等の状況等であり、ハード・ソフト両側面のデータが集積されます。

Q2.どんな人がマンションに住んでいるの?

世帯主の年齢構成(図1)をみると、上位は、「60歳代」が31.1%、「50歳代」が22.8%、「40歳代」が18.9%、「70歳以上」が18.9%となっています。60歳以上のトータルは、全体の50.1%に及びます。5年前の調査では、60歳以上のトータルは、全体の39.4%でした。この5年で10.7ポイントも上昇しています。60歳以上の居住者が急増しているのは、当然ながらわが国の人口動態そのもの、少子高齢化問題が反映されているものと思われ、マンション居住者としても例外ではないということです。

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図1 世帯主の年齢

永住意識に対するアンケート結果(図2)をみると、「永住するつもりである」が52.4%、「いずれは住み替えるつもりである」が17.6%となりました。平成5年の調査までは「住み替え派」が多かったのですが、平成11年の調査で逆転し、その後は「永住派」が増加傾向にあります。

『終の棲家』としてのマンションの在り方が検討課題になっています。ある方は、「『いずれは一戸建て』というのは、なんとなく頭にあったが、就職して退職するまで、長い間マンションやアパートでの生活をしてきたので、いざ一戸建となると、日常生活はかえって不便、定年退職後もマンション居住を選択するだろう」とお話しされていたことがあります。

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図2 永住意識

とくに分譲のマンションの高齢化は新たな課題を生み出しました。分譲マンションでは、法律上当然に管理組合がつくられます。所有者である組合員から役員を選出することが一般的です。しかし、高齢化が進んだマンションでは、マンション管理組合の運営を行う役員の成り手がいない、という事態も起きています。管理組合は、後述のように「耐震化」「老朽化するマンション」、「防災活動」など、マンション管理にかかわる様々な問題ついて、今後の管理方針を決める重要な役割を担っています。そのため、成り手がいないということはそれだけ大きな問題をはらんでいるということなのです。

これに対しては、マンション管理業者側でトータルサポートを実施したり、専門的知識を有する「マンション管理士」などが、管理組合の理事長などに就任し管理組合運営を行ったりするケースも出始めています。

現状では、マンションの「管理者」(マンション管理組合で選任されるマンションの管理を実施する者、通常は管理組合の理事長)は、区分所有者の理事長が全体の88.2%と圧倒的に主流です。しかし、区分所有者以外の第三者が管理者に選任されているマンションも6.0%あります。マンション管理業者やマンション管理士などがその任に就いています。

Q3.首都直下や南海トラフ地震に備えた「耐震化」は大丈夫?

1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は、新耐震基準によるものです。それ以前のものは、「旧耐震」基準による建物となり、区別されています。

阪神・淡路大震災では、建物倒壊被害は「旧耐震」に集中しました。旧耐震基準のマンションについては、改めての耐震診断を実施し、その結果次第では耐震化を図ることが急務となっています。マンション総合調査では、マンションのうち新耐震基準が63.3%、旧耐震基準が16.7%という結果になりました。

ところが、この旧耐震基準のマンションのうち、耐震診断を実際に行っているマンション管理組合は、33.2%にとどまるという結果になりました。そもそも耐震性があるのかないのかもわからないマンションが7割弱あるということになります。また、旧耐震基準のうち、「耐震性がないと判断された」マンションは、32.6%もありました。これらは当然に耐震化を図る必要があるマンションです。しかしながら、実際に耐震改修を実施したマンションは、そのうちの33.3%にすぎませんでした(図3)。

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図3

マンション所有者からすれば、53.0%が耐震性について「不安」とし、「大規模な地震の場合は被害を受けると思うので不安だ」(18.4%)、「耐震性が確保されているのかわからないので不安だ」(13.4%)という声があります。

しかし、なぜ耐震診断と耐震改修は低迷しているのでしょうか。

耐震診断をそもそも行っていない理由としては、「不安はあるが耐震改修工事を行う予算がないため耐震診断を行っていない」が44.4%と最も多く、「管理組合として耐震診断を行うことをこれまで考えたことがなかった」という声すら24.0%と、多くありました。

このような実態を踏まえ、国の制度も動いていますのでひとつ紹介をします。

「建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正耐震改修促進法)が成立し、2013年11月に施行となりました。耐震改修計画の認定基準が緩和され、容積率や建ぺい率の緩和措置も盛り込まれています。また、区分所有建築物については、耐震改修の必要性の認定を受けた建築物について、大規模な耐震改修を行おうとする場合の管理組合の決議要件を緩和(4分の3以上から過半数に緩和)するというものです。耐震化を行おうとする管理組合の意思決定を容易にするものとして制度の活用が期待されます。

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