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トヨタ、「世界一」と「持続的成長」のジレンマ

トヨタが、2013年度の世界販売台数で、ついに1000万台を達成しました。しかし、以前も書いた通り、これはスタートに過ぎません。トヨタがぶつかるジレンマについて、書いてみたいと思います。

トヨタは、00年以降、世界中で生産能力を急速に拡大しました。ところが、結果として、08年のリーマンショックで大打撃を受けた。いわば、拡大戦略の失敗です。

09年6月に社長に就任した豊田章男さんは、拡大戦略を痛烈に反省し、「台数や収益は、本来は結果。目的にしてはいけない」と、いたずらに台数を追わない方針を表明しました。

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代わりに、章男さんが掲げたのが「持続的成長」です。
つまり、急激に成長しても、急激に落ちるのでは意味がない。「山高ければ谷深し」です。リーマンショックのときのように、業績に大きな波がついてしまえば、たくさんの人に迷惑をかける。それよりは、地道に、少しずつでも、継続して成長していこうということです。だからこそ、13年度以降、「3年間は新工場を建設しない」方針を打ち出しました。

しかし、トヨタは、今回の1000万台達成だけではなく、12年、13年と、暦年の世界販売台数において、すでに2年連続で「世界一」の称号を手に入れました。ライバルの独VW(フォルクス・ワーゲン)は、その称号を得ようと、トヨタの追撃に躍起です。先だって北京モーターショーで、VW会長のマルティン・ヴィンターコルン氏は、14年の暦年の世界販売台数で1000万台達成を目標にすると発表しました。

世界の自動車大手にとって、「世界一」の称号は、何物にも代えがたいもののはずです。トヨタは、一度、その称号を得てしまったからには、フォルクス・ワーゲンの猛烈な追撃を、手をこまぬいて見ているわけにはいかないでしょう。実際、すでに、トヨタは「3年間工場凍結」期間を解禁して、新しい工場を建設するかもしれないという情報も流れています。

では、トヨタは、再び規模の拡大に走るのか?
それは、危険すぎるでしょう。リーマンショックの際の大打撃では、規模の拡大に、グローバル人材の育成が追い付いていないという課題が浮き彫りになりました。その課題が、5年経った現在、完全に解決されたとは思えません。

トヨタは、できることなら、地道な成長を積み重ねていきたいことでしょう。

しかし、悠長なことをいっていると、ようやく手に入れた「世界一」の称号を、ライバルに奪われてしまう。

それでもいいんじゃないかという人もいます。
「数」を追わないといった以上、そうかもしれませんが、しかし、だからといって、果敢に攻めてくるVWを前に、ズルズルと後退したら、どうなるでしょうか。トヨタの成長のイメージ、勢いなど、色あせかねません。

いま、トヨタは、ジレンマに陥っているのです。
世界一の自動車メーカーとして、いかなるビジョンを描くのか。1000万台をこえての前人未到の世界の闘いは、これからが本番。トヨタはいま、試されているのです。

しかし、これは、見方によっては、じつに贅沢な悩みです。と同時に、これまでのように危機感をテコに突破することもできないでしょう。私は、「いいクルマ」を世に出し、それが結果として世界一売れる、というのが、理想だと思います。

それが実現するかどうかのポイントは、トヨタがいま、総力をあげて取り組んでいる、車づくりの構造改革ともいうべき“モジュール戦略”すなわち、 「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」ではないかと思っています。

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