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イコールソーシャル政策

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1970年の大阪万博のチケット2枚が手元にあります。ぼくが小学校4年生の時に母に連れて行ってもらったときのものです。「人類の進歩と調和」とあります。人類は進歩する夢を描いていました。希望がありました。ぼくは科学が明るい未来を作ってくれると思っていて、早く未来が来ることを望んでいました。

その夢はバブル崩壊とともに消えました。95年のオウム事件ではユートピアやハルマゲドンの幻想が雲散していたことに気づきました。2001年9月11日には、摩天楼という建築技術と旅客ジェット機という航空技術が激突しました。民族や宗教の軋轢が近代技術を弄んで人殺しをするという手法で表現されました。

2011年3月11日には、制圧すべき自然(地震・津波)と制圧すべき科学(原発)の2つの宿題が提示されました。千年前に生じた自然災害の教訓を活かせず、ここ半世紀の科学進歩もコントロールできないでいることを皆が認識しました。巨大な堤防という技術に頼った地域が津波で被害に遭ったのに、各自の知恵とコミュニケーションでバラバラに逃げた地域で多くの人が助かったのは、今後の対応に多くの示唆を与えています。

万博(70年)=TV、オウム(95年)=ネット、9/11=ブロードバンド、3/11=ソーシャル。各々の時期を代表するメディアは、そのつど存在感を示しました。TVは高度に成長する経済社会の基底をなす意識を醸成し、ネットは最新情報を刻々と流しました。ブロードバンドは世界的な映像情報の共有を可能としました。

そしてソーシャルメディア。地震に当たっては団結を促し、原発を巡っては混乱と政治への反発を増幅させています。安定にも動乱にも作用するブースターです。

こうした状況で、宮台真司さんが6/27付け朝日新聞のインタビューで、社会スタイルを切り換えるべきと説いています。17世紀以来の「統制や依存」から「自治と参加」へ、つまり「集権」から「共同体」へ移行せよというのです。とすればソーシャルメディアがその核をなすほど浸透するどうかが一つのポイントとなり得ます。

これは高度成長型の全国一丸となった復興ではなく、より多元的で分散した、そして自律的で柔らかな再生をイメージさせます。しかし、宮台さんが「終わりなき日常」で説く「まったりと生きていく」姿よりも、皆がアクティブに人や社会と関わっていくことが求められましょう。

同じ記事は、東京でも福島でも、疎開の可否を分けたのはソーシャルキャピタル=人間関係資本の有無だと指摘しています。友人や親類とのつながりが多く深いひと、つまりソーシャル度の高いひとほど人生の選択肢や可能性が増えるということですね。

だとすると、ソーシャル度の違いは深刻な格差となってきます。もちろん人と人との関わりなので、当人の生きざまに依存するわけですが、少なくともそれを支える基本ツールはみなが使えるよう環境を整えておくことが必要となります。

テレビ時代には難視聴の格差が重要問題でした。90年代はじめ、政府の情報通信部門で初の公共事業はテレビ難視聴対策でした。ネット時代になり、イコールアクセスが政策課題となりました。物理的な接続をユニバーサルサービスとして確保しようという動き。

そしてこれからはソーシャル格差が問題となってきます。ソーシャルサービスを皆が使えるようになるには? ネットにはもう物理的につながるのですから、格差解消には情報リテラシー教育が決め手。年齢も、住んでいる場所も関係なく使えるように準備すること。新しい政策テーマですね。

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