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韓国旅客船沈没事故から企業経営が拾うべき「他山の石」

「韓国旅客船沈没事故に関して、大関さんはご専門のお立場からどういうご意見をされますか」というご質問をいただきましたので、これに関して少し触れておきます。

私の領域から申し上げると、今回の件は我が国の企業における組織運営の観点からも、示唆に富んだ大きな警鐘として受け取るとこができるのではないかと思っています。これまでに判明している部分だけからも、多くの「他山の石」を見て取ることが可能です。

まず第一に、初動における情報確定の緩さと不確定情報を流すことによる組織防衛リスクの増大があげられます。今回ように明確な被害者が存在する事件、事故においてその被害者の被害状況に影響が及ぶような情報の取り扱いは特に慎重に対処し、迅速性以上に正確性の確保に努めなくてはなりません。本件では、事故発生直後に乗客のほとんどが救出されたと言う大誤報から始まったことで、事件に対する韓国政府の心証は著しく悪くなったと言っていいと思います。なぜ、あのような不確定情報を事故の全容が分かっていない段階で流すことになったのか、近代国家の情報リスク管理の観点から申し上げて韓国政府の対応は全く理解不能です。

企業不祥事の発生においても全く同様です。真相究明を求める集中砲火の中で、被害者、利用者、当局、メディアからの一時的な非難回避を狙って、自社にとって有利になるような不確定情報を流しその場しのぎをするよな広報対応が見られることがあります。この場合、後から事実が判明した際に「あの時は事態が混乱しており、情報が錯綜していた」という理由で弁明をするようなことになるわけですが、企業にとっては正確な情報が分かる都度それを小出しにしていく緩い対応に比べても、極端に悪い印象を与えることになります。不祥事に絡む企業イメージのダウンは、後々ボディブロー的に業績にも影響を及ぼします。従ってこのような対応は情報リスク管理の観点から、絶対にやってはならない対応であると言えるのです。

次に、日本からの救出支援申し出拒絶の問題です。韓国政府は事故発生からかなり早い段階で、日本政府からの海上自衛隊による支援申し出を即座に断ったと言います。聞けば、我が国の海難事故における救出活動の技術はかなり高度なものがあり、韓国のそれとは技術水準的に大きな開きがあるそうです。レバタラの話にはなりますが、政府が日韓関係を気にせずに日本の申し出を即座に受け入れて救出活動に取り組んだなら、より多くの命が救われたのではないかと論じる韓国メディアのもあるようで、この点もまた、メディア、国民から政府が強い非難に晒されてる大きな一因にもなっています。

企業活動に置き換えると、苦境に陥った企業が他の企業から救済の手を差し伸べられることも間々あります。そんな時に力関係を考えて、「ここで力を借りたら将来的に買収されるのではないか」とか、「自社よりも業界地位の低い会社の世話になるのは、プライドが許さない」等々の意見により支援申し出を排除し、結局倒産の憂き目に会ったり、業績回復に必要以上に手間取ることで有能な人材の流出につながったり、はよくある話であります。企業の損得勘定やプライドも分からないではありませんが、緊急時には自社に従事する従業員の生活のことを考えれば、まずはいかにして経営継続性の確保をはかるかを最優先で判断をする必要があるのです。経営者の勝手なわがままで、従業員を不幸に陥れることがあってはならないということは、今回の韓国政府の国家的プライドがさせたであろう愚行から学ぶべきことであると思います。

最後に今回の事故で最も重要な問題、船の積載量オーバーが事故発生の根本原因なのではないかという点です。当初は規定積載量の倍程度と言われていた事故船に積まれていた荷物は、ここに来て既定の3倍オーバーであったということが判明したといいます。驚くべきルール違反です。なぜ積載制限があるのか、プロが考えれば誰でも容易に分かる話であり、このルールを破ることがすなわち安全性に及ぼす影響も十分分かっていたはずのことなのです。この報道が事実であるなら、船が旋回時にバランスを失い沈没に至ったというこの事故に関するフェリー運航会社の責任はあまりに重いと言っていいでしょう。

企業において社会ルールを守ることは戦略や管理以前の大前提の問題であります。企業活動には、今回の荷物積載量のような業界特有のルールもあれば、雇用における労働者の就労環境に関する労基法のような共通ルールもあります。いずれの場合にも、今回のように意図的にルールを破るのは論外としても、結果的にルール破りをせざるを得ないような組織運営をすることもまた、「未必の故意」的ルール違反であるのです。労基法関連では、就労者の病続出や最悪のケースでの自殺者の発生などではほとんどの場合、「未必の故意」的組織運営がなされています。自社の運営が意図的なルール違反だけでなく、「未必の故意」的ルール違反を誘発するような環境をつくりあげていないか、チェックをすることもまた経営者の務めであるということは忘れてはならないポイントでしょう。

韓国船の沈没事故に絡んでこのようにツラツラと書いてきたことは、どれもみなあたり前のことばかりなのですが、半面ややもすると企業の利益追求面ばかりが強くなりすぎた場合に、日常の繰り返しの中で疎かになりかねないことばかりであるとも言えそうです。そのようなリスクが顕在化していないか、企業経営に携わる皆様にはこの機会に自社の組織運営を点検されることをおすすめいたします。

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