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有事のコンテンツ政策

 被災地対策から復旧、そして復興、そして新しい建設へ。歩みが出てきました。
 
 4月13日、「IT復興円卓会議」を開催しました。情報通信の復興策を論議するため、国会議員、政府関係者、放送・通信・IT業界、ジャーナリスト、NPO、学界など50名を超えるかたがたに慶應三田キャンパスにお集まりいただき、さあ歩き始めましょうというキッカケの場を作ってみました。その内容は今度しっかりまとめて報告しますね。

 同じ週、政府のIT系の場も次々にエンジンに火を入れ始めました。ぼくが座長を務める総務省のコンテンツ懇談会や経産省のスマートTV研究会も議論を再開。知財本部コンテンツ調査会も新年度の活動をスタートさせます。最終会合を延期していた文科省の学校教育情報化懇談会も招集がかかりました。
 
 しかし、いずれの場にも言えるのは、もはやこれまでの延長ではないということ。
 平時から有事への政策転換が必要になった。そのコンセンサスのもとでの再出発です。
 
 コンテンツ政策は今世紀に入りようやく政策領域として認知されたものですが、その眼目は「コンテンツ産業の発展・成長」でした。それは平時における成長戦略としての位置づけ。有事においては別の目的が先頭に立ちます。
 「安全・安心の情報共有」「海外への正しい情報発信」といったことがらです。
 
 そして、であるからこそ、政策としての重要性が高まっているわけです。エンタテイメント産業の拡大を目論む政策なんてものはいわば「遊び」の産業政策。これに対し、国家危急に際しての情報戦略こそがコンテンツ政策の本丸です。そういう意味では、こうした不幸な事態に至り、やっとコンテンツ政策が本分を見極める事態となった次第。

 ただ、そんな振りかぶった話を一介の民間人がしていても行政に対しては説得力を持ちません。それは政治リーダーに大声で唱えて欲しいことなので、ぼくはウラから政治家たちにインプットし、アウトプットを促します。
 
 さらにぼくができるのは、自分の立場で言えることを主張しておくこと。
 んで、先週・今週と話していることをひとまずメモしておきます。
 
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 復興に際し、ITは決定的に重要です。被災地でも、生活物資の確保や道路交通インフラの整備などと並び、情報手段の確保は大事な課題です。しかし同時にぼくは、日本全体の復興策、新しい社会の建設策にどうITを役立たせていくのかに強い問題意識を持ちます。

 これまで進めてきた「経済活性化政策」よりも優先されることになろう「安全・安心政策」におけるITやコンテンツの役割を、過小評価せず打ち出していきたい。「ものづくり=技術力」と「コンテンツ=文化力」のドッキングで、安全で活力ある社会の再生を果たしたい。

 そこで3点。

1. ネットワークの再設計 (1兆円)

 阪神淡路では固定電話がダメだったが、普及間もないケータイは通じました。今回はケータイもダメ。ネット、特にtwitterやmixiなどソーシャルメディアが活躍しました。インターネットは核戦争を想定して設計したもの。パケット通信の威力が初めて実証されました。
 
 では今後どうする。デバイスはマルチになります。通信・放送ネットワークも融合します。全国的に安全で柔軟なネット環境を構築する必要があります。
 たとえばデジタルサイネージ業界は震災直後、節電に協力するため灯を消しました。でも、被災地であると否とを問わず、情報を共有するコンテンツ手段としてはとても有用。こういう新メディアを津々浦々に整備しなければなりません。
 
 地デジ後、融合後の新しいメディア環境を改めて設計する必要があるのです。
 日本は震災の国です。アメリカが核戦争に備えIT関連の研究開発を進めたように、日本は自然災害に立ち向かう技術を研究開発し、実装し、強い国土を建設すべきなのです。

2. 海外への情報発信 (1000億円)

 震災直後からテレビ番組をNHK、TBS、テレ朝、フジなどキー局がUst中継しました。海外のひとたちもリアルタイムで日本の状況をテレビ番組×ネット中継で眺めていたわけです。Ustreamの世界ユーザがその後2週間で5000万人から1億人に倍増したといいます。世界の人たちが日本を凝視したわけです。しかし、日本語の壁があり、その効果が十分であったとは言えないようです。
 
 今回、海外のメディアが日本を賞賛する報道も目立ちました。暴動も強奪もなく、電車を2列で待つ、冷静で毅然とした日本。こうした等身大のありようがクールジャパンの源だというものです。そうした姿を改めてコンテンツとして発信していきたい。日本の力をみせつけるチャンスでもあったわけです。
 
 しかし、その後の原発対応のグズグズグズグズグズで、日本のイメージは悪くなり、観光客も激減しています。ぼくの研究室にいる10名ばかりの留学生も母国から帰ってきません。エジプトに引っ込んだ学生にいつ戻るのか聞いたら、「エジプト政府が日本は危ないから行くなって」とのこと。内戦状態のオマエんちより危ないのかおれたちは!
 
 今こそ正確な情報をさまざまなチャンネルで発信しなければ。Yokoso Japanどころではありません。ヒマな政治家はみな海外にプレイアップしに行ってくれ!海外メディアを買うなりチャンネルを押さえたりするほか、日本語サイトの多言語翻訳も進めたいです。

3. IT利用促進 (2兆円)

 ネット上の流言飛語が問題視されています。政府はネット業界に健全化策を要請しています。でも、Twitterなどでデマが流れても自浄作用で30分ぐらいで収まっています。日本ネット社会はそう弱くはありません。心配御無用。まぁ政府が規制のポーズをとるなら、民間は「わかりましたポーズ」をとっておしまいにしましょう。
 
 政府もわかってるんです。今すべきことはそれじゃないって。逆だってことを。
 今すべきことは、もっとITを使うようにすることです。今回、被災地でソーシャルメディアが役に立ったと言っても、高齢者の普及はまだ低い。でも、使えたらもっとみんな安心して対応できたはずなんです。
 
 もっとITが場所や世代を超えて使えるよう環境を整えること。すなわち、情報格差の是正、情報リテラシー教育の充実。
 被災地では、63万冊の教科書が流されてしまったといいます。カルテが流されて必要な薬がわからなくなったりしている人も多いと聞きます。そんなのはコンテンツをデジタル化し、クラウド化しておけばよいということ。これは被災地対策ではなく、全国の情報化策として手当てしておくべき問題です。
 
 そういう利用面の対策もコンテンツ政策として強力に乗り出すべきです。

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