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オムニチャネル戦略でBlue Nileと真っ向勝負するダイヤモンドのECサイト「Ritani」

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1999年にシアトルに誕生したBlue Nileが「ダイヤモンドをインターネットで買おうとする客なんていない」という定説を覆してから15年になる。その間、Blue Nileに追随し、オンラインでジュエリーを販売するECサイトも現れた。

しかし町の宝飾店のほとんどはeコマースに進出することなく、以前と変わらぬ形態で今も営業をつづけている。

「これから成長して、将来、婚約指輪を購入する世代は、幼い頃からスマートフォンやタブレットに当たり前に親しんでいる。オンラインで高価な買物することにも、上の世代よりもさらに抵抗感がないだろう。そう考えると、たとえ現在は十分な利益をあげている宝飾店であっても、将来も安泰とは言えない......」

そんな危機感がずっと囁かれていながらも、eコマースに対応する積極的な動きがほとんど見られなかったのは、これまで商売が成り立っていることに加え、もともと保守的な体質をもつ業界だったため、ITやeコマースに詳しい人材が少なく、展開のきっかけがつかめないまま、ここまで来てしまったという面もあるようだ。

しかしその風潮に変化の兆しが見られる。2012年10月、ジュエリーのデザイナーブランドの1つがBlue Nileに真っ向から挑戦状を突きつけたのだ。

その名は「Ritani」。もともとはBlue Nileの誕生と同じ1999年にニューヨークで創設され、ダイヤモンドの指輪をデザインして、米国とカナダにある約400の宝飾店に卸すことを本業としてきた企業である。

そのRitaniがわざわざIT部門をBlue Nileのあるシアトルに設立して、20人のエンジニアとウェブデザイナーのチームを編成した上でeコマースに参戦してきたのだ。しかもCEOにBlue Nileの元幹部を迎え、1500万ドル(約15億円)の投資も確保した

それでは、RitaniがBlue Nileに対抗するために練り上げた戦略を見てみよう。

ECサイトと実店舗のそれぞれの長所と短所

Ritaniが想定している主なターゲット顧客は、恋人のためにダイヤモンドの婚約指輪を購入する25~35歳の男性である。

町の宝飾店とECサイトを比較した場合、指輪を選ぶ段階では、気後れを感じることなく、自分の都合のよい時間に納得のいくまでリサーチをして商品を吟味できるという点でECサイトに軍配があがる。

Blue Nileと同じように、RitaniのECサイトでも、顧客がダイヤモンドについての知識がないことを前提にして、「EDUCATION & GUIDANCE(教育とガイダンス)」のコーナーを設け、ダイヤモンド選びの参考になる情報をたっぷりと提供している。

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さらに、Ritaniでは「Virtual Gemologist(バーチャル宝石鑑定人)」という独自のサービスも用意した。

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これは顧客がRitaniのサイトで、購入の候補として最大4つまでのダイヤを選んだ後、どれを選ぶのが最も賢明かをRitaniが契約したプロの宝石鑑定人に無料で相談できるサービスである。ECサイトで予約した日時に電話とインターネットを通じて、鑑定人から各ダイヤモンドの品質の違いについて詳しい説明を受けられる。

ダイヤモンドが決まったら、次はそのダイヤモンドを載せるリングのデザインを選び、材質とサイズを選択する段階に進む。

この段階でも、ECサイトの方が実店舗よりも優位である。店舗よりECサイトでカスタマイズするほうが吟味しやすいからだ。

RitaniのECサイトでは、豊富に用意されているダイヤモンドと台座の選択肢から組合せを自由に選び、どんな仕上がりになるかを画面上で、360度すべての角度から確認しながら、好きなだけ試すことができる。

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しかしこれだけの強みがあっても、年間600億ドル(約6兆円)の規模を誇る米国の婚約指輪市場で、オンラインで婚約指輪選びをはじめた男性が、実際にオンラインで指輪を購入する割合は10%程度に留まっているとRitaniでは見ている。

婚約指輪を選び終えて、後は注文するだけという段階になると、「一生に一度の重大な買物なのに、実物を見ずに決めていいのか?」という不安に駆られる男性がまだまだ多いというのだ。特にダイヤモンドの場合、画面では、輝きが把握しづらい。この点では、実物を手に取って、確認することのできる実店舗にECサイトはどうしても敵わない。

家電製品の分野では、実店舗で商品の現物を確かめてから、同じ商品をECサイトで購入する顧客の行動(ショールーミング)がずいぶん前から小売店の悩みの種になっているが、婚約指輪はショールーミングができない商品のひとつだ。逆にオンラインで入念なリサーチをして、商品知識を蓄えてから、実店舗で購入するという顧客もいる。

ECサイトはリサーチと選択に、実店舗は実物チェックに

そこで、Ritaniでは、オンラインとオフラインの短所を互いに補完しあって、それぞれの長所を活かすことで、顧客により満足のいく買物体験を提供するためのシステムを考案した。

RitaniのECサイトから婚約指輪を購入する場合の基本的な流れは次のようになっている。

1. 顧客が指輪をオンラインで選び、注文する。

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2. Ritaniがニューヨークの工房でその指輪を製作する。

3. 顧客が注文時に「free in-store preview(店舗での無料プレビュー)」を指定していた場合、Ritaniは出来上がった指輪を、顧客の住所ではなく、その地域にある提携した宝飾店に送る。顧客はその店を訪れ、実物を確かめた上で、納得した場合に限り、購入する。

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もし納得できなければ、購入を拒否できる。その場合、費用は一切かからない。

このような対応が可能なのは、Ritaniはもともと指輪の製造が本業であるため、返品されても、一般の小売店よりも損失が少なくてすむからである。顧客から拒否された指輪については、ニューヨークの工房に送り返し、ダイヤモンドは在庫として保管し、台座は溶かして再利用するのだ。

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