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ぎりぎりを突いてきた「中国裁判所による商船三井船舶差押え」、韓国大法院徴用工判決が遅れている背景は日本側の毅然たる拒否、譲るな!

 やるならこのタイミングかなあ、というタイミングで、中国上海市高級人民法院による2010年8月6日の判決(最高人民法院に再審申し立てしたが、11年2月却下)について、上海海事法院と、和解解決にむけて、原告側に示談交渉を働きかけてきた商船三井に対して、突然、中国が差し押さえという、強行手段を取ってきました。

 この3月に、徴用工などについて、中国国内で再審が受け付けられ始めるなど、反日ムードを煽るうえで何らかの動きがあるのでは、と懸念されており、その中で、この案件は、中国側にとって最もやりやすいもの、とまさかの場合の想定はされていなくはなかったのです。

 商船三井の前身の一つであるナビックスラインのそのまた前身、「大同海運」が1936年6月、10月に中国の中威輪船公司から順豊号、新太平号を定期傭船する契約を締結したが、傭船期間が未了のまま日本政府がこれらを徴用。両船とも徴用中に沈没、行方不明となった、というのが事実関係です。

 1064年から、この公司の相続人が日本政府を相手に東京簡易裁判所に調整を申し立て、1967年に不調。1970年には原告は東京地裁に損害賠償請求を提訴しましたが、74年に地裁が消滅時効の成立を理由に棄却し、原告は高裁に控訴したものの、76年に取り下げ、確定していました。まあ、諦めたということでしょう。

 ところが、80年代半ばから中国が金融法務制度を急速に整備しはじめ、この頃大蔵省証券局係長だった私と、その上司だった後の財務官玉木さんで、2日がかりで「証券取引所の作り方」を、中国の官僚たちに講義した記憶もあります。
 その後上海に株式市場が出来て、急成長し始めました。
 当然のことながら破産法制や時効制度などもやつぎばやに導入し、1987年に、中国の民法による時効制度ができました。
 そこで88年末が損害賠償の提訴に期限になったため、中威輪船公司の相続人が、日本政府ではなく、大同海運の後継会社、当時はナビックスライン、を被告として上海海事法院に定期傭船契約上の債務不履行等による損害賠償請求を定期したのです。その後ナビックスラインは、商船三井に合体し、被告は商船三井となりました。

 ここでポイントなのは、この訴訟の実態と、建前の二面性です。
 戦時に軍事的に徴用された資産が戦争関連で破壊されたことの賠償ですから、実態を見れば「1972年の日中共同宣言における、中国による賠償請求放棄の範囲にはいる」ともいえなくはないのですが、形式的には、民間対民間の債務不履行として構成することもできます。
 そして、上海の法廷は訴えを認め、商船三井側も不本意ながら、確かに借りたものを返さなかった、というか返しようがなかったのですから、何らかの和解を、といって話し合いの余地はみせていたわけです。
 困難な案件ですから月日が過ぎて、突然、オバマ大統領来日の直前に、中国せっ江省に停泊中の、商船三井が運航する鉄鉱石運搬船「BAOSTEEL EMOTION」号が、中国当局に差し押さえられたのが、4月19日でした。

 韓国においては、朝鮮半島の日本統治時代に戦時徴用された韓国人の個人補償訴訟で、「1965年の日韓基本条約の請求権協定で、完全かつ最終的に解決された」はずのものが蒸し返され、ソウル高裁が昨年7月賠償認める判決を出してしまいました。

 その際、私は「新日鉄など被告企業が、絶対に賠償金を払っては駄目だ、」と強く主張し、官邸も政府も、国際司法裁判所への提訴もほのめかしながら、従来の日本よりも厳しく対応してきました。

 結果、年明け早々とも予測された、韓国大法院の判決は延び延びになっていて、国内に戦時賠償用の基金を韓国政府が作る、などの妥協策が出てきています。

 一時はちょっと危なかったけれど、今日になって総理も、官房長官も、外務大臣も、本件について、不快感の表明、抗議的姿勢で足並みがそろってきました。

 毅然とした態度でいくしかないでしょう。
 中国の経済は減速しており、日本の対中投資は減って他のアジアにシフトしています。
 合理的にビジネスが出来ない国、というレッテルを貼られたくない中国にも限界があるのです。
 中国報道官も、初めから、これは戦時賠償問題ではなく、日中共同宣言とは関係ない、と逃げの煙幕を張っています。

 兎に角、わかりにくい不透明な妥協はしないこと。
 明日から日米同盟の強化をはっきり打ち出しましょう。

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