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教育情報化政策の新展開

 学校現場の情報化はどのように進められているでしょう。


 まず授業でどうICTが使われるかを考えてみましょう。黒板とチョークに代わる手段、先生が生徒に一斉に教材を見せる方法としては、コンピュータとインターネット、そしてネット等から入手した教材、さらにはそれらをみんなに拡大して見せる機器としてのプロジェクタや大型ディスプレイ、電子黒板が必要になります。拡大して見せるディスプレイは、カメラなどと組み合わせれば、紙の資料や生徒の作品なども表示できます。これら一連の装置が欲しい。

 生徒が個人で、あるいはグループで調べ物をしたり、作品を作ったり、学習の成果を発表するためには、個人の情報端末、パソコンが必要。今のところ複数の生徒で1台のコンピュータを共用するのが普通。もちろん、デジタル教科書を搭載して勉強したり、先生と生徒全員がネットでつながって教え合ったりするには一人一台の環境が求められます。

 IT戦略本部は2006年から2010年までの5年間で、教育の情報化を強力に推進するという計画を立てました。授業をより充実したものにするとともに、教員の校務負担を軽減することを期待してのことです。

 具体的な目標を掲げている。2010年度末つまり2011年3月までに、コンピュータ1台当たりの生徒数を3.6人にする。光ファイバーの超高速インターネットを100%整備。校内LANも100%。

 しかし、これがなかなか難しい。そう簡単に予算が回るわけではありません。このままのペースでは、2011年3月時点での目標達成は不可能。コンピュータ1台当たりの生徒数は2010年3月時点で6.4人。3.6人に減らすにはかなり隔たりがあります。政府は2020年にこれを1.0人に、つまり一人一台にしようとし、デジタル教科書教材協議会はさらにそれを5年前倒ししたいと考えているのですが、ハードルは高い。地域格差も深刻。1位の山梨県が4.2人であるのに対し、愛知県は8.1人と倍近い開きがあります。

 超高速インターネット100%も難しい。2010年3月では65.5%。超のつかないADSLなどの高速ネットなら96.7%まで来ているのですが。また、校内LAN100%もそうです。2010年3月で81.2%。この地域格差も大きく、富山県が99.7%とほぼ達成しているのに対し、青森県は43.1%となっています。

 教育の情報化を考える際には、どうしても情報端末やデジタル教科書など、目に見えるハードやソフトに関心が向かいますが、実はインターネットや校内LANなどネットワークの整備が非常に重要なポイント。政府が超高速インターネットや校内LANの目標を100%に据えているのも、その重要性を認識しているからです。

 校内LANを整備すれば、パソコン教室だけでなく、普通の教室や理科室、体育館など、学校のどこからでもネットが使えるようになります。無線LANにしておけば、校庭や廊下などを異動しながらでも作業ができます。授業のありようが変わります。

 同時に、みんながつながることに対する備えも万全にしておかなければなりません。学校は個人情報の宝庫。不正アクセスやミスによる情報漏洩などのリスクを減らし、セキュリティ対策を講じる必要があります。これもネットワークを設計する上での基本事項です。

 これを後押しする施策の一つに「地域イントラネット」があります。学校や役所、公民館、図書館などを光ファイバーで結び、教育、行政、福祉、医療、防災などのサービスを受けられるようにする。これも2010年度までにブロードバンド・ゼロ地域を解消し、情報の地域格差をなくすという政府目標のもとに進められています。

 こうしたハードウェアで使われるツールとしてのソフトウェアをどう確保するかも大切。ワープロ、表計算、プレゼン、あるいはネットを利用するためのソフトウェアなど基本的に備えておくべきアプリケーションもあります。最近は無料で入手、利用できるツールも増えてきましたが、どのようなツールが便利で安心して使えるかの見極めと情報共有が必要です。

 教科書や教材などのコンテンツも同様。パッケージやネットで市販されているものも数多いが、さまざまな無料コンテンツを紹介するサイトもあります。どのように利用していけばよいかのガイドラインが求められます。
 
 2009年、政権が交代しました。教育情報化政策も大きな展開を見せました。これまでの政府の取り組みをより強力に、より総合的に推進すべく舵を切り始めました。

 その第一弾が文部科学省「学校教育の情報化に関する懇談会」の開催。2010年4月、慶應義塾大学の安西祐一郎教授を座長とし、ぼくも参加してスタート。初等中等教育の授業におけるICT活用や校務支援、教員へのサポートなど総合的な推進方策を論議しています。

 鈴木寛文部科学副大臣は「21世紀は情報の活用やコミュニケーションが中心となる歴史的転換期。ICTを最大限活用した新しい学びが必要だ。」と述べ、この分野の先頭に立って施策を推進する考えを示しています。

 これを補完する形で情報化を進めているのが総務省。2020年までにフューチャースクールを全国展開するという目標のもと、推進事業を発足させました。全児童・全教員に一人一台のパソコン、全教室にインタラクティブ・ホワイトボードを配備し、無線LANを構築。学校と家庭との連携も図るというものです。2011年には両省が連携を深め、学校教育の情報化を推進する方針です。

 クラウド・コンピューティング技術を活用し、各学校のウェブサイトやメーリングシステム、校務支援システム、デジタル教科書・教材などの管理を行うとともに、操作支援などのサポートも組む。各学校は自前のシステムを持たないで安価に使えるよう工夫する計画。

 2010年には北海道から九州まで10の公立小学校が選定され、東日本はNTTコミュニケーションズ、西日本は富士通総研が事業を請け負って実証実験が進められています。

 官も民も、大きく動き始めました。

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