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コンプライアンス経営に活かせる公益通報制度を目指して

4月18日の福井新聞ニュースに、武生信用金庫における不正融資を巡る労使対立の現状が報じられています(福井新聞ニュースはこちらです)。10年以上にわたり、元役員が迂回融資を繰り返していた疑いがあることから、行員が社内のメールを入手し、これを証拠として監督官庁に不正を告発したそうです。一方、金庫側は、行員の内部資料の持ち出し行為について、不正アクセス禁止法違反により、刑事告訴したうえで解雇処分としています(なお、金庫側は、不正融資の有無について、第三者委員会を設置して調査中とのこと)。

この処分に反発した労組側は、このメール入手行為は、公益通報目的でアクセスしたのであるから行員の行動は正当な行為であり、不正アクセス禁止法違反の違法性は阻却されるものだと反論しています。実際に同金庫では、告発を受けて、監督官庁による大規模な検査が行われたようです。

現在進行形の事件なので、個別案件への詳細なコメントは控えますが、平成18年に施行された公益通報者保護法の存在が労働者の方々に周知されることにより、今度は、このような労使間でのむずかしい問題が増加しています。一般探索型の証拠入手(持ち出し行為)でも公益通報目的といえるのかどうか(合理的な疑いがなければ不正入手になるのではないか)、内部通報に期待ができない状況があるからこそ、外部への証拠流出行為の違法性が阻却されるのではないか(まずは内部へ通報手続きをとらなければ、もしくは内部通報への対応が期待できない合理的根拠がなければ証拠入手行為の違法性は阻却されないのではないか)等、民事法(労働者としての地位保全)と刑事法のクロスオーバーする論点が山積しており、現行公益通報者保護法の課題だと思います。

先週、消費者庁のHPよりリリースされましたが、このたび公益通報者保護法制度に関する有識者からのヒアリングが開始され、当職がアドバイザーに就任することになりました(消費者庁リリースはこちらです)。今年中に5回から6回程度、ヒアリングが実施され、その概要は消費者庁HPで公表されることになります。いろいろなご意見を伺い、消費者庁や消費者委員会における議論のたたき台になるものをご報告できれば、と思っています。とくに公益通報者保護法の制度運用が、企業の自律的行動(自浄能力の発揮)を支援できるような工夫を考えていきたいと思います。

4月13日の夜のニュースで、佐村河内氏のゴーストライターだった新垣氏が、佐村河内氏に妥協案を持ち掛けていたことを知りました。もはや世間をだまし続けることに耐えられない、このまま佐村河内さんが活動を続けることなく、フェードアウトしてほしい、との提案でした。しかし、佐村河内さんは、その提案に応じることはなく、あのような新垣氏のカミングアウトになってしまいました。つまり、佐村河内さんとしては、(妥協案による解決が良いか悪いかは別として)新垣氏の妥協案に応じていれば、このような事態にはなっていなかった可能性があります。

内部通報や内部告発に関与する者として、こういった事例はよく見受けられます。会社側が「内部通報以上のことは、どうせ何もできやしない」と高をくくっているところで痛い目に合ってしまいます。公益通報者保護法が、内部通報や内部告発を行う者の後ろ盾になれば、もう少し経営者についても、内部通報や告発に対する真摯な姿勢が期待できるのではないかと思います。雇用形態の多様化、流動化、外国人労働者の増加など、公益通報が増加する環境が高まる中、公益通報者保護法の制度改革に向けた立法事実の調査は喫緊の課題だと考えています。

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