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Toy Story 3も恐怖映画だった

東京おもちゃショーの翌日、「Toy Story 3」3D版を観てきました。1、2作の監督ジョン・ラセターは今回は総指揮に回り、今回は前回の共同監督リー・アンクリッチが監督に。第一作が95年、第二作が99年だから、11年のインターバル。この間、子どもだったアンディは大学入学を迎える歳となっていました。本作は、アンディとおもちゃたちの成長物語が大団円を迎えるものでした。

“「トイ・ストーリー」は、映画誕生101年目の奇跡だった。カメラからコンピュータへのシステム変更だ。しかも表現はハリウッド的な感性でみれば完璧。わざと残したCGっぽさの具合もほどよい。これは、産業のシステムや技術だけでなく、表現技法も、映像文法も、ストーリー展開も、アメリカが次世紀の審判となるぞというソフトな宣言なのだ。恐怖映画である。”95年の第一作に際しぼくが雑誌に書いた文章の断片です。それから15年。CGはすっかり進化・定着し、今回は3D。昨年から今年にかけ、クリスマスキャロル、アバター、アリスとファンタジーの3D-CGが腕を競っています。それらに比べ本作は3D臭さがありません。ぼくの目が慣れたというだけでなく、本作品が3Dを自然に吸収しようとしていた点もあるでしょう。おもちゃ目線で全てを描いているため、左右の分離の距離を短くした効果もあったかもしれません。アンクリッチ監督も「3D技術は大好きなんですが、今回重要視したことは、物語ということもあり、3D技術をこれみよがしに使ったような、例えば画面から何かが飛び出す仕掛けのようなことはしないということでした」と述べています。だからこそ恐ろしいですね、もう吸収し、手なずけてしまったか。昨秋から日本でも3Dブームですが、日本がテレビやゲームで展開する前に、基礎技術を映画ですっかり固められ、余裕の口笛。

ではストーリーはどうか。今回も判で押したようにBUTつなぎで押しまくりました。アンディは大学に行く、が、バズたちは分けられる悲哀。楽園と見えたサニーサイド保育園、だが、内実は地獄。独裁者もいれば、暖かい家庭で幸せに暮らすオモチャもいる、が、いずれも不幸な過去を負う。友情に支えられ生き延びる、が、替わりに地に堕ちる者も。望みがかないそうになる、が、最後にはつらい別れが待つ。いつもどおり、これでもか、のストーリー展開。が、嫌味は感じません。芸として根付いたこともありますが、演出が抑えめだったことと、リズムがよかったことが勝因。技術、ストーリーはよし。スペクタクルは、格闘も逃走も安定感に満ちる。でも今回、それらに増して強く惹かれたのは、ギャグです。ギャグがキレてました。バズ・ライトイヤーがラテン系に変身するところやミスター・ポテトヘッドが胴体を変化させたシーンなどは、かなり長い期間ねりあげられたアイディアだと拝察します。ディズニー映画で膝を打って笑ったのは正直初めてです。

さて。実は。ぼくがこの映画を観たいと思ったのは、そのようなアニメ視点とは全く別でしてね。技術とかストーリーとか声優が誰とか、そういうのはあまり関心がなく。登場人物のクリエイティビティに興味があったのです。やっぱり、第一作のシドがすごかったからですよ。シドが。アンディの隣に住む悪ガキ、シドは、ひどいことをするんです。人形の頭と胴体をバラバラにして、別のオモチャと合体する。残虐。バズ・ライトイヤーはロケット弾をしばりつけられていましたね。そうだよ。そうだよ。子どもはそうじゃなくちゃ。それこそがガキのコミュニケーションであり、創造力であり、表現だろう。MITメディアラボのレズニック教授も言ってました。「アンディよりシドの創造力がスゴくないか?あの創造力に注目し、それを伸ばす教育法とテクノロジーをわれわれは考えるべきではないか?」本作品では、サニーサイド保育園の幼児たちがシドの役割でした。アンディたちおもちゃの敵。力任せに引っ張り、叩き、投げつけ、ブン回す幼児たち。やってくれましたね。おもちゃたちが悲鳴を上げるほどの創造性を発揮してくれています。

ちょうどいい長さで迎えたエンドロール。Special Thanks To Steve Jobs, Hayao Miyazaki, Toshio Suzuki,とありました。ディズニーの子会社となったPIXARを立ち上げたジョブスはわかりやすいとして、このジブリへのオマージュは熱いですね。作品中もトトロのぬいぐるみが出演していました。セリフはなかったけど。確固たるキャラの地位を築いているのですね。日本が映像の世界に貢献できることが、今後もあるでしょうか。それは、構想力か、ストーリー性か、キャラクターのかわいさか、技術か。いや、そうではなくて、この作品は、日本の過去に敬意を表してさようならを告げようとしているのでしょうか。

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