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ジャパン・オリジナル化するディズニーランド(TDR)


持参のダッフィーを撮影するゲスト。

テーマ性を喪失していく東京ディズニーリゾート(TDR)

東京ディズニーリゾート(TDR)が21世紀に入り大きな変容を見せている。

ディズニーランドを彩る重要なコンセプトは「テーマパーク」という考え方。これは環境を一定のテーマで統一し、われわれの暮らす生活環境とは異なる非日常空間を作り出す手法。このテーマ性は「設定」と「物語」から構成されている。たとえば東京ディズニーランドのトゥモウロウランドならば”未来”をテーマに「設定」し、アトラクション、レストランからトイレ、ゴミ箱に至るまでを統一してしまう。さらにここに未来にまつわる「物語」を配置させていく。

ところが近年TDRのテーマ性はどんどん破壊されている。テーマ性にふさわしくない施設が各ランド・シーに建設され、これらをつなぎ合わせる物語、そして物語間の関係性もどんどん希薄化しているのだ。かつて(80年代)、東京ディズニーランド(TDL)の驚異的な人気の盛り上がりに対して、としまえん(東京都練馬区)はこれに対抗すべく「史上最低の遊園地」というキャンペーンを展開したことがあった。これはテーマパークVS単なるごちゃまぜの遊園地というコントラストで自虐的に自らを売ろうとする、いかにも当時の西武・セゾン系がやりそうな戦略だったが、いまやテーマパーク権化のTDRがとしまえんと同じようなノン・テーマパーク化しつつある。

しかし、である。だったら、このわけのわからないTDR=テーマパークもどきにゲストたちが愛想を尽かしても良さそうなものだが、現実はその逆。2013年度TDRは3000万人超という過去最高の年間入場者数を達成したのである。

なぜだろう?僕はここに、もはや本家本元のアメリカとは袂を分かったジャパン・オリジナルのTDRの成熟を見る。もともとTDR(TDL)はアメリカ文化の疑似体験という裏テーマを持って83年に千葉県浦安市にオープンしたもの。だから当初は本場のコンセプトをそのまま踏襲していた。つまりディズニー=アメリカという図式。だが、もはやこの裏テーマはとっくに捨て去られ、クレオール化、つまり日本人向けに徹底的にカスタマイズしたTDRを構築しているのだ。それは「テーマなきテーマパーク」という新しい?ポストテーマパークとでも言うべき空間。今回はその側面について考えてみたい。

見事にバラバラなゲストたち

パーク内を歩いてみるとわかること。それはゲストたちが思い思いに様々な衣装?コスチューム?に身を纏っていることだ。プリンセスの衣装姿の子ども(女子)(白雪姫などの子供用コスチュームが売られている)。どっさりとダッフィを抱えてパーク内を闊歩するゲスト。レストランのテラス席のテーブルにダッフィーをずらっと並べているゲスト。体中にキャラクターのピンやアクセサリーを付けているゲスト。ミニーのコスチュームを自作している女性。和服姿だが周りにキャラクターがいっぱいの女性二人連れ。ダンサー追っかけ……とにかく、色んな身なりでパークにやってくる。

中でも、ここ数年見かけるとりわけ興味深いゲストのカテゴリーは通称「制服ディズニー」と呼ばれるスタイルだ。これは女性が高校の制服でパークにやってくるというもの。「えっ?修学旅行の生徒は制服でやってきているんだから昔からそんなのはあるんじゃないの?」と思われるかもしれないが、これ、実は「な~んちゃって女子高生」。高校はとっくに卒業した女性が、かつての制服に身を纏いパーク内を闊歩するのだ。だから、よく見ると「制服姿だけれど、どうも様子がおかしい」というゲストに遭遇する。しかも、結構な数だ(「ちょっと恥ずかしがり屋の人のためのコスプレイベント会場」みたいになっている)。

これらゲストに共通するのは、それぞれがそれぞれのスタイルで勝手にTDRにを利用しているということだ。そして、その多くがカップルや女性二人連れだ。本場ディズニーのような家族連ればっかりというのとはちょっと様子が異なっている。

また、そこから見て取れるのはディズニーに対する知識、いわばディズニー・リテラシーの高さだ。とにかく細かいところまでよく知っている。ただし、もはやディズニーの世界は膨大。その世界の中からゲストたちは自らの嗜好に応じて好きな物をチョイスし、好きなようにディズニーを意味づけていく。だから必然的にそれぞれの行動はバラバラになっていくのだ。僕の知人のアメリカ人曰く「日本人のディズニーへの熱狂は異常。ほとんど宗教に近い」。日本においてはもはやディズニー世界はアメリカ以上に定着しているのだ。

近くの「日常の延長としての非日常」

こうなった理由を推測するのは意外と簡単だ。いくつか考えられるだろう。だが、その最たる理由の一つは空間的規模の相違と僕は見ている。アメリカ人にとってディズニーは80年近くに渡る文化。日本も戦後から映画館で上映されてはいるが、本格的な定着は80年代からなので、その歴史は30年ほど。だから、時間的長さにおいては本場アメリカが圧倒する。ところが日本の場合、島国の小国ということもありディズニーランドは身近な存在なのだ。関東圏だけでその人口は5000万強。これだけの人々が「ちょっとディズニー」という感じでパークを訪れることができる。いわば「非日常という日常」という、語義的には矛盾した状態を環境として持つ。だから、この「非日常」にリピーターとして何度もやってくる。で、そうこうするうちに、パークを自分なりにカスタマイズした解釈で闊歩するようになった。一方アメリカの土地は広大。パークを訪れるのはおそらく人生において数回だろう(子供の時、そして大人になって子供を連れてくるときの二回くらいなのではないだろうか)。だから、アメリカ人はパークを任意にカスタマイズした形で解釈するなんて芸当は出来ない。

で、これにTDR側が対応すればどうなるか。当然、統一したテーマではなく、こういった多様な顧客=ゲストに対応した多様な展開、言い換えればゴチャゴチャな環境を用意する必要がある。それは必然的にパークの多様化を生み、それがテーマ性の崩壊に繋がったというわけだ。

だが、その崩壊は、こうやって個々の好みでディズニー世界をカスタマイズするディズニーオタクの日本人にとっては好都合だ。だから、これからもどんどんテーマ性は崩壊し、最後はとしまえんになっていくと僕は見ている。つまり、日本人の嗜好に合わせてTDRはジャパニーズな遊園地へと変貌していくのだ。ただし、ものすごく濃密な。

以前、このブログで僕はTDRがアキバ化、オタクランド化すると指摘しておいたが、今回、このうち前者の予想=指摘を撤回しようと思う。というのもアキバはある意味ディズニーほどには多様化していないからだ。言い換えればTDRはアキバの周りに第2のアキバ、第3のアキバ、第4のアキバが隣接し、広大なオタク的空間を構築している。そういったオタク・ワールドがさらに広がりパークは混沌としながら繁栄を続けていくのではなかろうか。

だから、かつてのようなテーマパーク(言い換えれば、設定と物語を徹底させるテーマパーク、アメリカのディズニーランド的なそれ)を期待する「オールドファン」、そして一般の入場者にとっては不気味な空間にどんどんなっていくんだろうけれど。

でも、これってとっても日本文化的な現象、あるいはアジア的な風景という感じがしないでもない。欧米のように計画された空間がキチッと踏襲されるのではなく、気がつくと環境がどんどんメタモルフォーゼしてしまい、過去を残さない。

そう、TDRは、やっぱり「ジャパン・オリジナル化」したのである。

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