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調査捕鯨縮小へ 日本は鯨食文化をあきらめるべきなのか

 日本の伝統文化である「捕鯨」が揺れています。国際司法裁判所が南極海での日本の調査捕鯨を停止するよう命令。政府は判決を受け入れ、北大西洋での捕鯨のみ規模を縮小して続ける方針を示しました。伝統的な食文化をどう守っていくか。日本は難題を突き付けられています。

 日本人が捕鯨を始めたのは12世紀。それと前後してノルウェーやフランス、アメリカなど欧米でも相次ぎ捕鯨が始まりました。日本では肉だけでなく油やヒゲ、骨など鯨のすべての部位を有効活用しましたが、アメリカなど燃料となる油を搾り取るためだけに鯨を捕る国もありました。

 船の燃料となる油を求めて各国が競って鯨を捕った結果、生息数は減少。日本も加盟する国際捕鯨委員会(IWC)は1982年に商業目的の捕鯨の一時停止を決定しました。それを受けて日本は商業捕鯨から撤退し、IWCの管理下での調査捕鯨に軸足を移しました。商業捕鯨の再開に向け、生息数の推移などクジラの生態を調べているのです。

 現在、日本は南極海と北大西洋で調査目的での頭数を絞った捕鯨を行っているほか、IWCの認める範囲内で沿岸小型捕鯨を行っています。キャロライン・ケネディ駐日米大使が反対コメントをして話題となった太地町のイルカ漁はこの沿岸小型捕鯨の一環。イルカも小型の鯨です。

 3月31日に国際司法裁判所が判決を下した今回の裁判は、反捕鯨国の急先鋒であるオーストラリアが「日本の南極海での調査捕鯨は、実態的には商業目的の捕鯨である」と訴えたことから始まりました。調査のために捕獲した鯨肉を市場で販売していることなどを問題視したのです。

 実際には条例で調査のために捕獲した鯨は無駄なく使用するよう求められています。つまりせっかく捕った鯨は捨てるのではなく、食品などとして有効利用するよう求められているのです。

 しかし、今回の判決では調査の方法や捕獲頭数などが問題視され、日本政府が予想していなかった「完敗」となりました。今回の停止命令の対象は南極海だけですが、政府は18日、残る北大西洋での調査捕鯨について、今年度は規模を縮小して実施すると発表しました。

 「捕鯨は経済成長が著しかった日本を攻撃する材料に利用された」と指摘するのは近畿大学の有路昌彦准教授(下記参照)です。1980年代は日本企業が台頭し、欧米企業を脅かしていた時期でした。反捕鯨のムードを作り出した欧米系のNGOは「日本はあのかわいいクジラを殺す野蛮な国」というイメージを国際世論に植えつけ、反日感情を醸成する狙いがあったというのです。

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0401Y_U4A400C1000000/

 歌手で作家のさだまさし氏は「食文化への差別は人種差別だ」と今回の判決を厳しく批判しています(17日付中日新聞)。確かに牛や豚、鶏は殺して良くて、クジラはかわいそうだというのもおかしな話です。もちろん資源の激減や絶滅は防がなければなりませんが、鯨資源の永続的な利用に向けて冷静な議論をする必要があります。

 日本にも落ち度があります。食文化を守るための取り組みをおろそかにしてきた結果、鯨肉の需要は急速に落ち込んできたからです。日本人の多くも「悪意ある」国際世論のムードに流され、鯨食文化を自ら萎ませてしまいました。今では鯨肉になじみのない若者が大勢います。

 仮に国際取り決めを無視して商業捕鯨を再開しても、現状では需要が少ないため採算が合いません。「鯨なんか捕らなくても、おいしい肉があるんだからいいじゃないか」という意見も増えています。国内世論が後押ししなければ、国際社会を説得するなどもってのほかです。

 一度失いかけた文化を取り戻すのは大変な作業です。給食に盛り込んで子どものうちから鯨肉のおいしさをしってもらうなど、地道な取り組みから始めなければなりません。自民党の推進議員らは「政府が補助金をつけるべきだ」と言っていますが、それでは一時的なもので終わってしまいます。結局は急がば回れ、なのです。

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