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描かれた「法曹有資格者」像の魅力度

  「就職難」と、かつてのような一定の経済的安定を確保することが容易でなくなってきているという、弁護士が直面している現実。このことが、志望者にとっての、弁護士という「資格」の魅力を減退させ、法曹界から彼らを遠ざけつつある、一つの要因になっていることは、「改革」推進派も、もはやはっきりと認識していることのはずです。

 これを本来、素直に見れば、無理な増員政策の結果ということになり、当然、需要のヨミ違え、さらにいえば、それを生み出すことになった「改革」の発想までが、反省を伴った検証対象になってもいいように思います。ただ、残念ながら「改革」の現実は、もはやストレートに、そうした方向にはいかないものをはらんでいるようにしかみえません。

 それは、有り体にいえば、非常に無理をしている、言い換えれば「改革」がそれを維持しようとするがゆえに、苦しい姿を見せているとしかとれない、ということです。

  「複雑化・グローバル化した現代社会が持つ法曹へのニーズに照らすならば、次のような多様な法曹像が浮かび上がってくる。すなわち、『専門的な事件への対応が可能な法曹』、『法務分野に限らずビジネスで広く活躍する法曹』、『グローバル化に対応した国際的な法曹』、『行政(官庁・自治体)で活躍する法曹』などである」
  「法曹が社会の多様なニーズに応え、企業の内外でその活動を支えることは、個々の国民の法的ニーズに応えるだけでなく、日本の社会経済活動の発展や、産業の競争力強化にも資するものである。そして、法曹自身も、そのニーズに応えるべく、互いに切磋琢磨して競争力をつけ、法的サービスの向上を図っていくことが重要である」
  「法曹の競争力が高まることで、国民生活の安定や発展、あるいは産業の国内外における競争力強化にもつながる」

 3月25日に開かれた政府の「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会」第3回会議の事務局提出資料に、「企業における法曹有資格者の活動領域の拡大に関する分科会」での意見として、こんな内容が紹介されています。今後の議論の参考に供するというのですから、提示している側は無視できない意見、尊重すべき見方ととらえていると考えていいと思います。

 やや見飽きてしまったような切り口ではありますが、改めて目を離して見ると、奇妙な気持ちになってきます。それは端的に言って、冒頭のような目線を法曹界に向けている志望者にとって、これが今、そんなに魅力的な内容だろうかということです。ことによると、この意見発言者も資料作成者も、ここに描かれているような展望が、一定の説得力をもって志望者に訴えるものになり、あるいは現在の状況で再びこの世界を目指すようになると、本気で考えているだろうか、と。

 大手企業法務部や大手企業系法律事務所に勤務する弁護士を「エリート」とする見方はあるかもしれないし、その仲間入りをしたいと思ってこの世界を目指す人はいると思います。ただ、企業・自治体の、いわゆる組織内弁護士が「安定している」という風にとらえられるのは、あくまで現下の弁護士の状況でのこと。「サラリーマン」になるために弁護士資格をとることに本来の魅力を感じるとは限りません。しかも、その「サラリーマン」弁護士の実態が、力関係からいって、どういうものになっていくのかは未知数です。もちろん、あくまで企業の論理での「使い勝手」ですから、いわば「買いたたかれる」ことだって考えられる。それを全く想定しないなんてことは考えられません(「福岡の家電弁護士のブログ」 「Schulze BLOG」)。

 まして「法曹の競争力が高まることで、国民生活の安定や発展、あるいは産業の国内外における競争力強化にもつながる」といわれても、どこまでそこにリアリティを持てるのか、という気がして、虚しい感じすらしてきます。

 お気づきかとも思いますが、そもそも前記懇談会・分科会は「法曹有資格者の活動領域」と掲げていながら、その紹介されている意見では「法曹」や「法曹像」という言葉で括られているのは、どう解釈すべきなのでしょうか。この会議も、また日弁連も、冒頭書いたような、弁護士の「就職難」という、志望者にとっての決定的な現実に対し、「弁護士じゃなくても」⇒「法曹有資格者」、「法律事務所じゃなくても」⇒「企業、自治体」ということで、なんとか問題を打開しようとしているように見えてなりません。
 
 志望者は戻って来ないばかりか、「法曹」と社会の関係も大きく変質させてしまいかねないのに、なぜ、そんなことをやっているのか――。それが掲げせれてきた「理念」の正しさを信じてのことですらなく、もはや止めるに止めれない、壊すに壊せない「改革」の現実のように見えて、なおさら虚しい気持ちにさせるのです。

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