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iBeaconの本当の実力は?「アプリが勝手に立ち上がる」時代【湯川鶴章】

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AppleのBluetooth Low Energyを使ったサービス「iBeacon」に期待が高まっている。米国発の記事を読んでいると、iBeaconってなんでもできる魔法の技術のように書いてあることが多いのだが、本当なのだろうか。iBeaconの実力を知るために、日本のiBeaconの第一人者、合同会社わふうの上原昭宏さんにお話を聞いてみた。上原さんのお話や、自分で調べたことなどを総合して、iBeaconの本当のすごさについて、自分なりの考えをまとめてみた。

なぜAppleは、業界標準技術の固有名詞であるBluetooth Low Energy(BLE)という表現を使わずにiBeaconという自社固有の表現を使うのか。それはiBeaconが、BLEという無線技術に追加機能を持たせているからだ。

BLEは、キーボードなどの一部周辺機器を除いて、基本的にはアプリを前もって起動しておくことが必要なのだが、iOSの最新バージョンのiOS7.1からは、アプリを起動させていなくてもiPhoneのロック画面を表示させた瞬間にビーコンを検出することが可能になっている。上原さんは、この追加機能が「めちゃくちゃ強力」と絶賛する。iOS側がビーコンをIDを監視していているので、「アプリが落ちていても強制再起動をかけてくれるし、電源を落としてiPhoneを再起動した状態でもビーコンを発見すればアプリを再起動してくれる」という。ビーコン側からiPhoneに「ちょっかいを出せる」わけだ。確かにこれはすごいことだと思う。

もちろん事前にbluetoothをオンにし、ロック画面への表示に同意しておく必要があるわけが、このiBeaconの追加機能のおかげで、ユーザーがいちいち複数画面の中からアプリのアイコンを探し出してタップしなくても、ビーコンからのお知らせをロック画面に表示させることができる。航空券をPassbookに入れておけば、空港の登場口に設置されたビーコンがiPhoneのロック画面にメッセージを表示させ、そのメッセージをスワイプすることで航空券のQRコードを表示させることができるようになるわけだ。

つまり、その場所にあったアプリ、アプリの中のページに簡単にアクセスできる。これがiBeaconの最もすごいところだと、個人的に思う。

例えば、冷蔵庫の前に立てばオンラインスーパーのアプリが自動的に立ち上がり、必要な食材を選ぶだけで買い物リストを作成できたりするようになるかもしれない。自動車の方向に歩き出せば、自動車アプリが自動的に立ち上がり、スマホからドアロックを外せるようになるだろう。量販店のレジの前に立てば、クレジットカードやポイントカードがあらかじめ登録されたアプリが立ち上がり「支払い」ボタンにタップするだけ支払いが完了する、などといったことも可能になる。

ビーコンをありとあるゆるモノに取り付けておくことで、そのモノの前に立てば必要なアプリが立ち上がる。Appleはそんな時代を作ろうとしているのだろう。またAppleが作り出すそうした利便性がユーザーに受け入れられるのであれば、GoogleもAndroidに同様の機能を搭載してくることは間違いないだろう。

アプリを探しだして立ち上げるという手間を省き、必要な場面ごとに必要なアプリを簡単に立ち上げることができる。iBeaconの最大のメリットはそこにあるのだと思う。

★おサイフケータイ(NFC)の代わりになるのか

米国からの報道では、iBeaconがおサイフケータイ(NFC)の代わりになる、というものがあった。上原さんに話を聞くと「可能だが、難しい」という答えが返ってきた。

上原さんによると、三角測量の原理を利用して複数のビーコンの電波からiPhoneの位置を1センチ単位で検出することは理論的には可能。ただしそのためにはレジ近くに複数のビーコンをうまく設置しなけらばならない。電波はいろいろなモノの影響を受けるため、技術者がビーコン設置場所の微調整を繰り返すことで初めておサイフケータイ的な利用方法が可能になる。実際にそうした利用方法を実現しようとしている事業者もいるようだが、技術者を現場に派遣しなけらばならないので、あまり普及しそうにないという。やはりビーコンは、近くの消費者にクーポンを表示したりという単純な使い方がいいようだ。

★PassbookはiBeaconで開花する

「Appleが手を付けることが必ず成功するわけじゃない。Passbookだって鳴かず飛ばずじゃないか」という意見を耳にすることがある。確かにAppleの手がけることが必ず成功するわけじゃない。しかし最近のAppleを見ていると、事業プランを段階的に用意周到に展開していることが分かる。

BLEが最初にiPhoneに搭載されたのが2011年。その際にAppleはサードパーティがiPhoneとBLEでつながる周辺機器を自由に作ることを認めた。それまでiPhoneの周辺機器を正式に作るには、Appleの審査を受けMade for iPhoneというお墨付きをもらわなければならなかった。ところがBLEを使った周辺機器に関しては自由に作ることができるようになったわけだ。上原さんは「この決断も革命的」と高く評価する。

その結果、翌年2012年の夏ごろからクラウドソーシングサイトKickstarterなどに、BLEを使ったiPhone周辺機器のユニークなアイデアが山のように提出されるようになった。

まずは周辺機器メーカーのベンチャー企業を多く育てておいてから、2年後のiOS7.1でiBeaconを完成形にまで近づけてサービスを開始する、という戦略だ。iBeaconは周辺機器が豊富に存在してこそ、真価を発揮する。その周辺機器を創出するために、段階的に技術やサービスを進化させているわけだ。

Passbookも同様。最初にPassbookというアプリを作っておき、大手を中心にPassbookへの対応を検討させておいた上で、iBeaconを完成形に近づけた。各種チケットやクーポンを一箇所に集めるだけのアプリであれば、Passbookはそれほど使い勝手がいいわけじゃない。実際、特に日本ではPassbookを使っている企業はまだほとんどない。ところが空港の搭乗ゲートに近づけば航空券のQRコードが自動的に表示されたり、家電量販店のレジの前に立てばその店のポイントカードのQRコードが自動的に表示されるようになれば、使い勝手は格段に向上する。つまりPassbookが真価を発揮するのはビーコンが普及してから、ということになる。それを分かった上で、早い時点からAppleはPassbookをiOSに搭載してきているわけだ。

O2O(オフライン・ツー・オンライン)というバスワードがIT業界、広告業界の注目を集めて久しいが、本当のO2O時代の幕開けはiBeaconが十分に普及してからになるのかもしれない。

上原さんのブログ
Reinforce-Lab.'s Blog
http://reinforce-lab.github.io/

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