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これぞ究極のコンテンツマーケティング? シティガイドから始まったECサイト「Thrillist」

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ECサイトがリピーターを獲得するためにコンテンツマーケティングがいかに大切かということを、僕はこのブログで繰り返し唱えてきた。

サイトやブログが頻繁に更新され、魅力的な情報が追加されていくのなら、特に何かを買う予定がなくても立ち寄るファンが増え、やがてはブランドを買い支えてくれるようになるからだ。

では、ECサイトそのものがWEBマガジンだったとしたらどうだろう? それこそ究極のコンテンツマーケティングだと言えはしないだろうか。

今日はそんなキュレーション型ECサイト「Thrillist」を紹介しよう。元々は若者向けシティガイドを発行するメールマガジンだったが、JackThreadsという男性ファッション系ECサイトを買収したことで、サイトから直接物品を購入できるようになった。

最初はニューヨーク限定のシティガイドだったが、今や25都市にエリアを拡大し、250人の従業員を擁するメディアグループに成長した。メルマガの読者は25万人にもなり、2013年の収益は、8000万~1億ドル(約80~100億円)に達する見込みだという。

若い男性向けに特化したシティガイドが、それまでなかった

Thrillistがロンチされたのは2005年のこと。ともにペンシルバニア大学を卒業してニューヨークで暮らしていたBen Lerer(写真右。以下、レーラー)氏とAdam Rich(以下、リッチ)氏の2人が、ちまたのシティガイドのつまらなさを嘆きあったことがサービスをはじめるきっかけとなった。

雑誌はふつう、独身男性向け、既婚女性向け、アニメファン向けなど、対象読者を絞り込んで創刊される。そのため誌面には対象層にとって関心の強い情報が詰め合わされ、読者は飽きずに読み進むことができる。ところがシティガイドの場合、事情は異なる。

「シティガイドに載っている情報は、読者となる男性ではなく、そのおばあちゃんの役に立つような情報がかなり多い。そのせいで、てんで使い物にならなかったんだ」とレーラー氏は語る。

より若い男性向けに特化したシティガイドがほしいのに、いくら探しても見つからない。ならば自分たちで作ってしまおうと、メールマガジンの創刊を思いつく。

ふたりは気に入った男性誌を徹底的に読み込んで、その魅力の源泉が「俺たちの言葉」で書かれていることにあるのだと思い至る。若い男性が興味を抱く事象について彼らの感性そのままの文体で記事が展開されていることが、心に響くのだ。

レーラー氏とリッチ氏は夜や週末を利用してニューヨークの街に繰り出し、徹底的に自分たちの視点と文体にこだわった記事をメールマガジンにまとめ、友人たちに送りはじめる。

反応は上々だった。創刊から2カ月ほどでレーラー氏はホテル会社の仕事を辞め、Thrillistの仕事と経営大学院を目指す勉強に専念できるようになった。さらに数カ月後には数万ドルの投資が舞い込み、リッチ氏もこの事業に専念し、さらに従業員も雇えるようになったのだ。

やがて自然と、ふたりの役割分担も出来上がっていく。レーラー氏が広告を足で稼ぎ、リッチ氏は記事の編集を取りしきった。

創刊翌年の2006年にはロサンゼルスに、2007年にはサンフランシスコ、シカゴ、ラスベガスへと対象都市を拡大し、現地ライターも増やしていったのである。

くだらないものお断り(no-bullshit)のハードボイルドな記事スタイル

Thrillistのシティガイドとしての魅力はなんと言っても、若い男性にとって宝石箱のようにきらびやかな街の歓楽が、トレーラー氏のいう「俺たちの言葉」できびきびと綴られていることにある。

トップページや都市別ページ、そしてFOOD&DRINK、TRAVEL、SHOPなどのジャンルページを開くと、その下には飲食店、観光スポット、イベントなどについての記事が表紙画像つきで並んでいる。表紙画像をクリックすると、次のように記事が展開する。

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どの記事も冒頭にはぐっと目を惹く写真があしらわれ、移動中にスマートフォンでさくさく読める程度の文章量にまとめられている。しかし何より特徴的なのは、その文体だ。

「insane(イカレた)」、「sick (ヤバい)」といった刺激的な形容詞を端々にちりばめ、どっちつかずの両義語も多用した独特なもので、皮肉っぽくてアクも強いが、だからこそ響いてくるビートがあり、どこかハードボイルドっぽさを感じさせもする。

Thrillistの独特さは、取り上げるテーマにも見てとれる。たとえばバレンタインデーの直前に載った記事に、女性のストリップショーを眺めながらステーキが食べられる店を紹介するものがあった。

いかにも独身男性向け雑誌に載っていそうなものだ。最近ではGrouponなど、ECサイトにも見た目はWEBマガジンのようなものが増えてきたが、万人向けで八方美人なGrouponには、間違ってもそんな記事が載ることはないだろう。

会員制ショッピングサイトを買収し、興味の連鎖を購買につなげる

(写真はレーラー氏)

メールマガジン形式のシティガイドとして順調に成長してきたThrillistの収益源は広告だったようだ。

サイトの説明によると、広告費をもらっているのは「Allied」というマークのついたごく一部の記事だけで、他で紹介しているお店からはいっさい受け取っていないという。メルマガは無料だが、米American Expressなどの広告主がついているのでやっていけるのかもしれない。実際、利益も出ていたようだ。

しかし、レーラー氏はどこか物足りなさを感じていたという。

「記事で紹介した服や鞄に興味を持ってくれる読者は多いけど、結局買うのはよそでなんだ。それじゃまだオレには物足りない。」(レーラー氏)

そこで2010年に、男性向けの会員制ファッションECサイト「JackThreads」を買収し、傘下に組み入れる。それでひとつの流れが出来上がった。たとえばある記事を読んでそこに旅したいと思った読者は、鞄が欲しくなるかもしれないし、ホテルを予約したいと考えるかもしれない。

そんな時、コラム中にある画像をクリックすることで、商品ページに飛ぶことができるのだ。そして商品解説のページの「SHOP THE SALE」のボタンから、実際に購入することができる。

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これで、記事を読んだ読者が商品を買うことまでがサイト上で一貫してできるようになった。円環の欠けていた部分が埋まったのだ。

JackThreadsの年間収益はそれまで500万ドル(約5億円)ほどだったが、Thrillistに組み入れられたことで、その額は4000万ドル(約40億円)にまで伸びた。

その結果、Thrillistの収益の半分をJackThreadsが占めるようになったという。コンテンツとeコマースが結びつくことの効果がいかに大きいかをその数字が如実に物語っている。ちなみに、2010年時点での広告収益は1000万ドル(約10億円)ほどだったそうだ。

商品が先か? コンテンツが先か?

「商品が先か? コンテンツが先か?」
この問いに対して、迷わず「それは商品が先に決まっているじゃないか!」と思ったなら、それは大問題だ。ECサイトにおいて、コンテンツが果たす役割を甘く見すぎている

今回のThrillistもそうだし、先日紹介したDominoもそうだが、一部の先鋭的なECサイトでは商品の販売よりもコンテンツを発信することに力を入れ始めている。これは実に良い流れだ。

先ほどの質問は、実はこのようにも置き換えられる。
「売上をあげるのが先か? 顧客と仲良くなるのがが先か?」
これなら、おいそれとどちらが先とはいえないだろう。

コンテンツとは、顧客と仲良くなるためのツールだ。仲良くなる前に売ろうとするなら、それこそ値引きするしかなかろう。値引きしたくないなら、顧客と仲良くなるしかない。

そして、顧客と仲良くなり、ファンになってもらうことがブランディングだ。
良質なコンテンツを発信することが、ブランディングの第一歩だ。

ちなみに、さっきの質問を業界風に、クール(?)に言うのであれば
「コンバージョンが先か? エンゲージが先か?」
となるだろう。

蛇足だが、僕はこういうクールな言葉をできるだけ使わないように心がけている。
言葉を使うことが仕事になってしまい、商売の本質を見失うからだ。

是非、コンテンツを活用して顧客と「エンゲージ」して欲しい。

いや、間違えた。

是非、コンテンツを活用して顧客と「仲良くなって」欲しい。笑。

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