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脳波トレーニングの効果がようやく出てきたみたい

またしばらくご無沙汰していたが、我が家の次男T(10歳)の「EEGセラピー」の効果がようやく出てきたようなので、レポートしてみる。とある友人からご自身のお子さんに関して相談を受けており、彼女の参考になるようにかなり詳しく書くので、長くなるがご容赦願いたい。

これまでの経緯は下記を参照してほしい。

「sensory processing disorder」(感覚処理障害?)のお話 - Tech Mom from Silicon Valley
ADDを「瞑想」で治すトレーニング、というワケか! - Tech Mom from Silicon Valley
聴覚セラピー開始、「マイアヒ」で果たして学習障害が治るか!? - Tech Mom from Silicon Valley
オーディオ・セラピー AIT終了後の経過 - Tech Mom from Silicon Valley
聴覚問題その後の経過と「書く」ことの苦しさ - Tech Mom from Silicon Valley

Tは、ADDとアスペルガーと聴覚処理障害が少しずつ混じっているような感じで、一応病院では「広汎性発達障害(PDD-NOS)」と診断を受けているが、「なんだかよくわかんないけど、一応自閉症スペクトラムの傾向は見られるね」というぐらいで、療育も今まで学校でやっているのを続ければいいと言われただけという、ボーダーラインのケースである。

ちょっと見たところだたの落ち着きのない子供で、一対一で勉強を見てやればできるのだが、学校の教室のように他の子供がいるところでは全く機能できない。先生の指示が理解できず、ぼーっとしているだけでタスクに全くとりかかれない。以前のように、机の下に隠れたり床にごろごろ転がったりする異常行動はもうないけれど、授業についていけないので、引き続き、授業時間の半分ほどの間、特別教室のお世話になっている。家でも、自分が好きなゲームやレゴなら何時間でも集中できるが、そうでない日常の行動、例えば歯を磨くとか着替えるとか、もちろん宿題も、特に好きでないがやらねばならないことを自分から進んでやることができず、いちいち私が言わないとできない。時間の感覚がなく、「何時になったら何をしろ」という指示がまったく守れない。文句を言えば「ちゃんとやった」とウソをつく。でも確認するとやっぱりできていない。できるまで何度でもガミガミ言わないとダメ。疲れる。はぁー・・明らかにADDというわけでもないし、明らかに自閉症というわけでもないし、明らかにディスレクシアというわけでもないし、なんだかわからないが、明らかに他の子と違うし、担任の先生は扱いに苦労する。友達づきあいでも、突然KYな行動をとって嫌われることがある。そんな子である。

EEGについては上記過去エントリーを参照。大雑把に言えば、「瞑想」のように、脳の働きを意識的に安定させる訓練で、「脳波トレーニング」とでもいうようなものだ。
我が家が通っているクリニックは下記のとおり。

Attention & Achievement Center : ADD/ADHD Diagnosis & Drug Free Treatment : ADD Medicine : Treatment of ADD : Treatment for ADD ADHD

週三回クリニックに通うのは、車で送り迎えする親にとっては大変だが、本人は1時間、アニメ映画を見ていればいいだけなので、本人はけっこう楽しんで通っていた。だいたい1年ぐらいやるのかな、と思っていたのだが、やり始めても何も普段の態度に変化がなく、親は「本当に意味あるのかなぁ?高いお金払っているのに騙されてるんじゃ?」などと疑心暗鬼になってしまった時期もあった。

特に夏休みの初め頃、テニスのキャンプに参加させたところ、インストラクターの指示をあまりに聞かないために「もう来ないでください」と言われたときは本当にショックだった。これまで、指示に従えないときは、部屋の隅でぼーっと座っていたりなど「黙ってふさぎこむ」感じだったのに、今回は先生に対して攻撃的に言い返したのだ。その直前に、夏休みの間に勉強を少しでも追いついておこうと、上の子が通う塾に行かせようとして相談したら、レベルを見るためのテストを受けた段階で「指示に従えずタスクにとりかかれないので、ウチでは見られません」と断られてしまった後のダブルパンチだった。それで、セラピーの医師にも相談したりしたが、脳波のテストをすると進歩が見られるので、もうちょっと頑張れと言われるばかり。

悩みつつ、「言い返す」というのはもしかしたら、脳の働きが変化している過渡期なのかも、とも思った。それまで、彼との対話はほとんど、私が質問したら彼がポツンと答えるのみで終わり、たまに彼のほうから出る話は、彼の頭の中にあるファンタジーの世界(スターウォーズやゲームのことなど)が脈絡なく出てくるばかりで、リアルの世界に関する言葉のキャッチボールがほとんどできなかった。なので、「言い返す」というのは、ちょっとずれているけど対話がかみあってきたという意味かもしれないし、そういえば私との対話も少し変わったような気がする。何がどう、ときちんと説明できないが、長年のつきあいのある母親には感じられる微妙な変化だった。それで、夏休みの間は淡々とそれまでどおりセラピーを続けていた。(聴覚セラピーについてはかなり前にすでに終了済み。)

それが、夏の終わりから秋の学年の初めにかけ、少々変化があらわれた。
カリフォルニア州では、学年の終わり近くにあたる5月に、州統一の標準テストがあり、その結果は新学年開始直前ぐらいに自宅に郵送されてくる。そのテストの結果が、驚くほど「よかった」のだ。前年は、通常と同じテストを受けたところ、英語(=国語)も算数も、5段階の最低レベルでほとんど何もできていない状態だったので、それに私がショックを受けてスクランブルし、EEGセラピーを始めたという経緯があった。今年はそういうわけで学校と相談し、「簡易版」のテストを受けさせてもらった。「簡易版(modified)」とは、テストの内容は通常どおりだが、分量をかなり減らしてあるバージョンだそうだ。で、今回の結果は両方の科目とも「最高」レベルだった。項目ごとの内訳を見ても、引き続き「書く」ことは苦手なのだが、他はどれも上々の位置につけていた。

これには本人も親も驚いた。信じられなかったので、本当に内容は学年標準どおりなのか、と再度先生にも確認したが「そうだ」と言われた。要するに、前年はあまりに分量が多くて「あー、もうダメだ、できない」と思ってシャットダウンしてしまったのが、「できそうだ」と思えばスイッチがはいるということらしい。そう、スイッチがはいるか、はいらないか、が彼の場合ポイントなのだ。脳波トレーニングの主眼は、「アイドリング状態の脳波レベルを高める」ということだった。(脳波を計測する部位を特に働きの弱い脳の部分に設置し、ピンポイントで訓練する。)普通、人の脳は、何もやっていないときでも、ある程度の「アイドリング状態」で動いており、何かをするために集中するときはそれが高まるわけだが、彼の場合はその「アイドリング」の回転数が異常に低いため、タスクを行うための回転数まで上げる(=スイッチがはいる)ために、普通の人よりも何倍もエネルギーがいる。自分の好きなことならすぐにそれができるが、好きでないことにとりかかることができないのはこのためだそうだ。*1

上述の「簡易版テスト」の場合は、「タスクに要する回転数のレベルを下げてくれた」ということになる。だからうまくスイッチがはいったわけだ。
その直後に、クリニックで脳波の計測をしたところ、アイドリングが「通常レベル」まで上がったとの結果が出た。医師からは、もうEEGを続ける必要はなく、今度は集中力を高めるための「PACE」(Processing And Cognitive Enhancement)というトレーニングに移行するように、と言われた。

Starting a Tutoring Business

詳しい内容は上記を見て欲しいのだが、リストされている矢印の方向や数字などを読んだり、リストの中から特定の文字に◯をつけたり、カードを使ったゲームなど、だんだんにレベルアップしながら集中を持続させる訓練だ。以前やった、長男のビジョンセラピーにも似たようなものが多く含まれており、これはなんとなく感じがわかったし、効果もほぼ予想でき、現在やり始めているところだ。

学校の授業中は、相変わらず関係ない本を引っ張り出して読んだりする問題があるようだが、家での行動については少々変化が見られる。いつもではないが、自分から宿題にとりかかったり、歯磨きなどをできる頻度が増えた。宿題も、今まではやり始めても5分おきに声をかけないと続けられなかったが、声かけの頻度がだいぶ下がった。特に難度の高い、「自分で文章を考えて書く」というのが、(上の子もそうだったが)手書きでなくパソコンで書けば、短いものなら、苦労しながらも自分で書き始めて書き終われるようになった。中身はもちろんメチャクチャなので、ついついダメ出しをしたくなってしまうのだが、私としては、まずはこうしてタスクを自分で遂行できるということを奨励したいので、規定の段落数さえ書けていればOKで、ゲームやっていいことにしている。

先週は、「秋祭りで出すブース・ゲームの提案書」というのを書いていた。義務ではなく、やりたい人だけやればいいのだが、友達と二人で週末家に集まり、アイディアを出しあいながら書いていた。木曜日には、先生が赤を入れてくれたものを書きなおしていた。すべて、私がやれと言わなくても、自分で楽しそうにやっていた。書き直しは、寝る直前になって翌日が締め切りだと自分で思い出し、頑張ってパソコンに向かってやり、今年度からウチの小学校で使い出した「ウェブ・ロッカー」(個人別クラウド・ストレージ)にアップしていた。その甲斐あって、提案書は採用になったらしい。

こうした一連の自発的な行動は、これまでの状況から見ると劇的な変化だ。もちろん、これはゲームという「好きなこと」をやっているのであり、友達と一緒だし、面白いから楽なのだが、それにしても最後までちゃんと続いて提出できていることが私には驚きである。

会話もだんだん噛みあうようになってきた。「speaking of which(そういえば)」というのが彼の最近のマイブームで、それまでの会話の流れに関係のある話題を出して来られるようになり、別の人同士が話している会話の流れに割り込むときも、ちゃんと関係のある話題ではいってこられる。今日学校であったこと、来週の予定などといった、リアルの話が自発的にできる。友達と電話で延々会話ができる。

果たしてこれが、セラピーの成果なのか、標準テストでよい成績をとって自信ができたためか、単に時間がたって成長しただけなのか、それはわからない。おそらくは、すべて少しずつ関係あるような気がするが。

まだまだ、忘れている宿題や課題もどこかに隠れていそうだし、おそらくはこの先もずっと集団行動は苦手なヤツになるだろうし、相変わらず大きな音はダメで映画館に行くときは耳栓持参だが、なんだか少し光明が見えてきた気がしている。とにかく、最低限のタスクをこなせて授業になんとかついていきさえすれば、少々成績が悪くても、人づきあいが苦手でも、行動がちょっとヘンでも、ここシリコンバレーは「アスペルガーの帝国」なので、何かしら仕事は見つかるだろうし、なんとかなると思っている。

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