平成18年(つまり8年前)にすでに「研究活動の不正行為に関する特別委員会」が設置され、その報告書として『研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて』(PDF)が出されています。こちらについて、昨年に見直し・運用改善のための協力者会議が設置されて、4回の会合、パブリック・コメントを経て、平成26年度(つまり今年度)から新しい運用が開始されたのです。
審議のまとめ・概要(PDF)
新たに盛り込まれるべき事項として以下が挙げられています。
(I)組織の管理責任の明確化
【組織としての責任体制の確立】
○各研究機関における規程・体制の整備及び公表
※責任者の役割・責任の範囲を明示した規程の整備、研究倫理教育責任者の設置も含む
○告発窓口の設置・周知 ※告発窓口の第三者への業務委託(学外の法律事務所等)もあり得る
【調査の迅速性・透明性・秘密保持の担保】
○各研究機関における調査期間の目安又は上限の設定
○調査等への第三者的視点の導入
※告発窓口の第三者への業務委託(学外の法律事務所等)、調査委員会に外部有識者を半数以上を入れる等
○告発者の秘密保持の徹底
【各研究機関に対する管理責任の追及】
○各研究機関に対する措置の発動(間接経費の削減)
<間接経費を削減する場合>
・ 国による調査等の結果、体制不備が認められた研究機関や、文部科学省及び同省所管の
独法の競争的資金の配分を受けている研究活動において不正行為が認定された研究機関に
対して「管理条件」を付したが、履行が認められない場合
・ 文部科学省及び同省所管の独法の競争的資金の配分を受けている研究活動において不正行為の疑いのある事案が発覚したにも関わらず、正当な理由なく調査が遅れた場合
(II)不正を事前に防止する取り組み
【研究活動における不正行為を抑止する環境整備】
○各研究機関における一定期間の研究データの保存・公開の義務付け
○研究倫理教育の着実な実施
※各研究機関において、教員、研究者(共同研究を行う海外・民間企業からの出向者等含む)、研究支援人材、学生、留学生等を対象に実施。ガイドラインで定義されている不正行為のほか、研究倫理に反する行為(二重投稿や不適切なオーサーシップ等)、利益相反や守秘義務などへの理解も促進。
【不正事案の公開】
○ 研究活動における不正行為の疑いのある事案が発覚した場合の文部
科学省への報告 ※少なくとも本調査の要否が決定した段階で報告
○ 不正事案の一覧化公開
上記でのポイントは、「不正があったら研究費の間接経費を削減しますよ」というプレッシャーをかけているということですね。(Ⅲ)国等による支援と監視
○各研究機関における調査体制への支援
※各研究機関において十分な調査を行える体制にない場合は、日本学術会議等と連携し、専門家の選定・派遣等を検討。
○研究倫理教育プログラムの開発への支援
○新たなガイドラインに基づく各研究機関の履行状況調査の実施
○各研究機関に対する措置の発動(間接経費の削減)【再掲】
今年の3月には説明会が開かれています(どこ向けの資料なのか不明。研究資金関係が詳しい)。こちらの資料によれば、不正行為認定者の科研費交付対象除外について次のように決められています。
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不正行為を行った者だけでなく、「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」に対して、最長3年の間、科研費の交付を受けることができないとされています。つまり、ちゃんと監督しなければ駄目ですよ、という措置と思いますが、今回のSTAP細胞事件のような場合、Corresponding authorsが数名いるので、仮に不正行為を行った者が現敵的だったとしても、たいへんなことになりますね。
また、このような文科省の方針を受けて、各国立大学は平成25年度の業務実績報告書において、「研究不正防止に関する取組み状況」の記載が求められています。
例えばすでに東京大学においては「競争的資金不正使用防止ウェブサイト」が立ち上がっていますが、このような対応が必要ということになるのだと思います。(そういえば、中間報告がその後、出てこないですね……)
ともあれ、今回のことをきっかけに日本における研究不正対応の仕組みは急に進むことになると予測されます。もっとも、多くの地道にコツコツ研究をしている研究者は、特段恐れることは無いのですが、報告書などは増えそうです……。