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質問力は大事だと思う

昨日、日経ビジネスオンラインの「なでしこ報道」への違和感についての記事に非常に同感したのでツイートしたら、すごい勢いでRTされ、私史上最大のtrending topicになってしまって驚愕した。



なでしこ報道で露呈した“ニッポン”の未熟な女性観:日経ビジネスオンライン


単なるツイートではなく、日経ビジネスオンライン画面のツイート・ボタンから吐き出したので、同サイトのRTまとめ経由で読まれたのだろう。面白い現象だった。まぁなにしろ、プロフェッショナルの女性に対するこういう目(男性から、だけではなく、多くの女性も同様の価値観を持っている)についての感想は記事を読んでいただければ、私は全く同感である。(ちなみに私自身は、すでにこの歳に至ったので、くだらんことを聞いてくる輩もなく、超然とできているのでありがたい。年をとるというのはいいこともある。「Tech Mom」を自称しているのも、無意識のうちにこの手の質問にバリアを張っているのかもしれない。)ここでは、ちょっと違う視点の話をしたい。



ちょうど「なでしこ騒ぎ」の時期に日本にいたが、これ以外でも、日本のスポーツ選手や芸能人へのメディアの質問(カリフォルニアの我が家でも、最近はTV Japanを契約しているので少しは見られるし、ネット・ニュースに出ている記事でもみられる)にはイタいものが多い。上記の記事にもあるように、男子サッカーの選手に「結婚は?」とか「彼女は?」とか聞かないというのは確かだけれど、相手が男子選手であっても、質問が下手だなぁと思うことが多い。


私が特に嫌いなのは、「今のお気持ちは?」という質問。何の下調べも準備もなく、どんな場面でも使える、聞くほうにしてみれば超ラクな質問で、一方答えるほうは非常に答えづらく、せいぜい「最高です」とか「うれしいです」とか、そんな答えしかできない。勝ったばかりの選手が嬉しいに決まっているので、そんなこと聞かないでもわかっている。



相手が興に乗って、思いがけないエピソードや面白い視点を提供してくれるようにするには、それなりの「質問術」が必要だ。かねてよりこのブログで、「ネットで素人がいくら書けるようになっても、プロの書き手はどうしても必要」といっているが、つまりそれは、正しい質問術を展開するには、当該分野についてのある程度の知識が必要で、そのためには下調べも分野知識も必要だし、過去に同じ分野の人に何度もインタビューしたことがあってそれと比較できるとか、そういった「普段からの蓄積」が必要だ。これは、私自身が「ナンチャッテ・プレス」として時々取材をする体験から痛感している。自分が経験のある通信・ITの分野の人だから、それをある程度転用して質問することはできるが、インタビューの前にはどうしても下調べが必要で、それは私の本業の中で自然にできることではなく、けっこう大変。もちろん、そのベースには、「相手に対するリスペクト」とか、「質問分野に関する好奇心」といったものも必要だが、プロとしてやっている人は、その上にさらに、こうした「知識」レイヤーが存在する。普段からこれを仕事でやっている人はえらいなぁ、といつも思うのだ。



例えば、ハリウッドで映画ジャーナリストをやっているはせがわいずみさんという友人がいる。ハリウッド俳優や監督へのインタビューが本業で、たくさん話を聞いた中からエッセンスだけが記事になっているが、彼女の大元のインタビューやりとりを見ていると(翻訳を手伝ったりしているので、省略なしの生インタビューを見たことがある)、彼女がこういった「質問術」を駆使して、ひじょうに面白い話を聞き出していることがわかる。もちろん、いくつか「定型」の質問というのはあるのだが、それを切り口として「次」に展開するのが上手だし、それができるためには、当然相手の過去の履歴や評判、比較対象にする他の監督や俳優や作品の「引き出し」がたくさんなければいけない。「ギョーカイ用語」もうまく散りばめないといけない。さすが専門家、普段からの蓄積だなぁ、と感心する。



メディア人でない、普通の日本人も一般的には「質問力」をあまり鍛えられていない。私が日本で講演会をやると、ほとんど質問が出ない。学校教育の中で、初対面の人に質問するための「質問術」をあまり問われることなく、奨励もされない中で育っているのだから、ある程度仕方ないとは思うが、これはもったいない。初対面の人に質問する力というのは、会合などで知らない人と会話をするための力にもなるし、知識という意味でも、人間関係という意味でも、いろいろな扉を開いてくれるものだと思う。



それは確かにそうだが、少なくともメディアのプロには、普通の日本人以上の「質問力」を持ってもらいたいものだとせつに思う。上記「なでしこ」に関する私のツイートへの反応として、「共感」というものに加え、「テレビを見ている層のレベルが低いのだからそれに合わせているので仕方ない」といったものも多かった。それは一面の真実を突いているのかもしれないが、この記事への反応を見ても、「そうではない」人たちも一定数いるわけで、テレビ局も数多くあるのだから、どいつもこいつも同じことをやるのではなく、一つぐらいは、まともなスポーツ専門の質問ができるインタビュアーがいてもいいように思う。

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