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「産んでいいドットコム 」は「公開していい」のか:「出生前診断」の倫理を巡る論争

「出生前診断」にまつわる倫理的な問題は、今後議論として間違いなく盛り上がっていきます。

産んでもいい障害と産まない方がいい障害

まずは「出生前診断」についてざっくり。

出生前診断(しゅっせいぜんしんだん、またはしゅっしょうぜんしんだん)とは、胎児の異常の有無の判定を目的として、妊娠中に実施する一群の検査のこと。広義では文字通り「出産までに行う検査および診断」であり、狭義では「異常が疑われる妊娠に対し出産前に行う検査および診断」を指す。

出生前診断 - Wikipedia

妊娠中に胎児の遺伝的疾患などの有無を検査する、という生殖医療における行為です。

すでにサイトのタイトルは変更されていますが、「産んでいいドットコム」が掲げていた「産んでもいい障害と産まない方がいい障害」という表現が、問題だと指摘されていました。タイトルは変更され、現在は「産んでいいドットコム〜中には産んでもいい障害もあるので中絶を早まらないで!」という表現に切り替わっています。

重要なお知らせです。

当サイトのサブタイトルを変更しました。

(旧サブタイトル)産んでもいい障害と産まない方がいい障害

(新サブタイトル)中には産んでもいい障害もあるので中絶を早まらないで!

産んでいいドットコム ~ 出生前診断:中には産んでもいい障害もあるので中絶を早まらないで!

内容に強烈な賛否があるとは思いますが、このサイト自体は一定のスタンスにもとづいて真摯に情報を提供しているように見えます。デザインと中身的にお金目的のアフィリエイターがやっているサイトかと思ったら、特にそれっぽいリンクも見当たらないので、純粋な想いがあって公開に至ったのだと思います。中の人がなぜこのサイトを作るに至ったのかも、可能な範囲で読んでみたいところ…コンテンツから、書き手の人生の苦悩が伝わってきます。

このサイトが賛否を呼ぶのは「産まない方がいい障害」というカテゴリーを明確に区切っている点にあるのでしょう。実際、なかなか強烈な響きです。

画像を見る

「産んでいい/産まない方がいい」の判断基準については、このように書かれています。

当サイトではその障害児がどれだけ家族を苦しめるかという点を重視します。社会に対する医療費の負担や貢献の有無などは原則として問いません。家族を苦しめるわけではない障害ならば産んでもいい、家族を苦しめる障害ならば産まない方がいいと明確に位置付けます。

また、綺麗事や建前論、オブラートに包んだいい方、当たり障りのないいい方、関係者や倫理に配慮し過ぎて重点をぼかしたいい方などは避け、ストレートに説明します。

現状では障害の重さを基準に産むかどうかを判断することが多いのですが、実はそれには大きな落とし穴が潜んでいるのです。というのは、どれだけ家族を苦しめるかという最も重要な視点が抜けているからです。

障害の重さと家族の苦しみは必ずしも比例しないのです。というのは、一生病院のベッドから出られない障害よりも下手に自分で歩き回り、不完全な言葉を喋る重い知的障害の方が家族を苦しめるからです。

産んでいいドットコム ~ 出生前診断:中には産んでもいい障害もあるので中絶を早まらないで!

ぼくはこの種の障害についてあまり詳しくないので、中身については言及できません。なぜこのサイトを紹介したかといいえば、こうしたサイトが出てくること自体が、今の時代の難しさを象徴的に示していると思うからです。


「子どもに障害があるとしても、その子を産むのか?」

このサイトが投げかけるのは「産まれる前に、あなたの子どもに障害があることがわかったとき、あなたはどうするのか?」という強烈な問いです。これは、生殖医療という最新のテクノロジーが生み出した社会的に新しい問いです。

うちはそもそも検査をしませんでしたが、これから遺伝子に関する技術革新が進めば、「子どもが障害を持って産まれるかどうか」が、特別な検査をせずに診断される時代も来るでしょう。この困難な問いは、今の社会で子どもを持とうとする人が、等しく向き合う問いになってくると思います。

答えは人それぞれ、分かれてくるでしょう。子どもを育てる環境によっても、困難の度合いは変わってきます。「産んでいいドットコム」の著者が語る「どれだけ家族を苦しめるか」というのは、ケースバイケース、程度の問題なのです。大切なのは他人がどうするかではなく、あなたがどうするかです。

「子どもに障害があるとしても、その子を産むのか?」というのはとても難しい問いなんです。ぼくも考え続けてますが、今はまだ答えを出せませんし、出すつもりもありません。

以前、ご自身も遺伝的な疾患をお持ちの、ミライロの垣内社長にダイレクトに伺ってみました。彼の答えは、大変参考になるもので、ぼくもこのスタンスを採用しています。

垣内:この話は初めて人前で話しますね。以前、弟とテレビ番組をみていたんです。その番組の中では、我々と同じ「骨形成不全」の方で、子どもを産みたいという女性が登場していました。そのドキュメンタリーのなかでは、すごくさらっと、遺伝子的にコントロールをして、障害の発症を避けて出産する、という話が描かれていました。

僕はこれに衝撃を受けました。同時に、まぁ、そうなるわな、とも思いました。自分が否定された気分にもなりました。

イケダ:ありがとうございます、変な話ですが、非常に興味深いです。当事者の方のご意見を聞くことがほとんどないもので…。

垣内:これって、自分たちが親だったらどうかな、という話だと思うんです。その点で言うと、自分自身がどういった選択をするかはわかりません。

たとえば、父と母を尊敬できるのは、「この疾患が遺伝する」ということがわかっているのに、私たちを生んだという「覚悟」に、人間的な強さを感じるからでもあったりします。

色々な観点で語ることができるでしょうけれど、とどのつまり、自分自身の奥さんと子どものために考えることなんだろうな、と思っています。社会がどう、という話ではなく。結論が出るとしたら奥さんとの対話だと思います。

結論をまだ出せないからこそ、どちらの選択肢も選べる状況をつくっていくことが大切だとも思います。これは受け入れやすい結論なのではないでしょうか。

三日間昏睡。三途の川はバリアフリーじゃなかった:「ユニバーサルマナー検定」を展開するミライロ代表・垣内俊哉氏 : イケハヤ書店 by @IHayato

垣内さんが語るように、子どもが障害があったとしても、社会がそれを受け入れるだけの状況になっていれば、選択肢は大いに変わっていくわけです。選択肢に直面していないぼくがやるべきことは、「障害が障害になりにくい社会を作る」ことでしょう。

生殖医療が発達するに連れて、この種の議論は盛り上がっていくのでしょう。個々人の選択の問題だとは思いますが、テーマがテーマなので、論争めいた状況になることもあると思います。「障害が障害になりにくい社会を作る」というのは確実な方向性のひとつとして踏まえた上で、建設的な議論ができるようになるといいなぁ、と願っています。


生殖医療については、現場でサービスを提供する方の話を伺っています。おすすめ。

「代理出産」「卵子提供」「着床前診断」についてメディブリッジの玉置径夫さんに伺った


関連本はこちら。未読ですが、ドンピシャでヒントをもらえそう。Kindle版をポチっておきました。

リンク先を見る生殖医療はヒトを幸せにするのか~生命倫理から考える~ (光文社新書)[Kindle版]
posted with ヨメレバ
小林 亜津子
光文社
2014-04-18

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