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「在宅育児手当」ってなに?

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PRESIDENT (プレジデント) 2014年 5/5号 [雑誌]

政府が検討を進めている「配偶者控除の見直し」について、雑誌『PRESIDENT』にコメントが掲載されました。
専業主婦世帯への増税になる配偶者控除を廃止するのであれば、「在宅育児手当」の導入を検討してもよいのではと提案しました。紙面には大枠しか書かれていないので、こちらに詳細を記しておきます。

1.在宅育児手当に関する定義と海外事例などをご教示ください。

税金があてられている保育園に子どもを預けていない家庭に対して、その税金分の一部を手当として給付する制度です。保育園に預けるか、家庭て育児をするかは、各家庭が自分たちで選択し、両者に対してなるべく公平に補助を行うという考え方に基づいています。フィンランドやノルウェー、デンマークなど、女性の社会進出が進み、かつ高い出生率を維持している北欧で実施されており、最近ではドイツや韓国などでも同様の制度が導入されています。

たとえばフィンランドの場合、国から収入の約70%が保障される育休期間(263日間)終了後、低額で保育園に預けることもできるし、保育園を利用せずに家で育児を継続すると、子どもが3歳になるまでは、国から月額約300ユーロ(約4万2000円)の「在宅育児手当」が支給されます。(府中市のこちらの資料が参考になります。)

2.配偶者控除見直しにつきまして、在宅育児手当や児童手当の増額を挙げていらっしゃいますが、そのメリットをお知らせください。経済効果、財政面、女性の働き方という側面など様々あると思いますので、どのような観点からでも構いません。お考えをお聞かせください。

配偶者控除を廃止した場合、主に子どもがいる専業主婦世帯やパート就業世帯に対して増税になり、子育てへの負担感が増し、少子化を加速させてしまう可能性が懸念されます。一般的には配偶者控除を受けるような専業主婦世帯は高所得層が多いというイメージがありますが、実は低所得から中間所得層が大半を占め、配偶者控除廃止による増税はそういった層に大きな負担になります。

一方、在宅育児手当を導入すれば、そういった世帯のうち特に働くのがより難しい状況にある乳幼児を育てている世帯に対して直接給付されるので、家庭の経済的負担が軽減され、少子化を抑制する機能を果たすことが期待されます。

配偶者控除では子どものいない世帯や子育てが終わっている世帯も対象になっているという批判がありますが、在宅育児手当は対象が乳幼児のいる世帯に限定され、子育て支援という目的がより明確になります。

また、大企業の正社員ではない、非正規雇用や中小企業勤務、自営業の方々、障害児を持つ家庭やシングルマザーなど、現状では多くの方が育児休業を取得できず、育休給付金を得られないため、格差が生じていると言えます。現在、出産を機に退職しているのは6割近くにのぼります。在宅育児手当はそういった育休給付金を得られない層にも恩恵が届き、格差を是正する機能が期待されます。

さらに、財政面からみても、メリットがあります。保育園の補助には多くの税金がかけられており、東京では0歳児一人当たり月約40万円、1歳児で約18万円、2歳児でも約16万円の補助費用がかかっています(板橋区の例)。在宅育児手当で仮にフィンランド並の月4-5万円給付し、その期間徴収しないことになる所得税や住民税の分を差し引いたとしても、保育園で預かるより在宅育児を支援した方が財政的にはプラスに働きます。

さらに、小さい子どもを保育園に預けたいというニーズはやや抑制されることになるので、特に割合の多い0~2歳児の待機児童数は減少するでしょう。結果的に、保育園を利用し、早く職場復帰したい方には保育園がより利用しやすくなり、現在の過度な保活競争は緩和されることが期待されます。家庭で育てたい方にも、保育園に預けて仕事をしたい方にも両方が安心して子育てができ、公平に補助が行われる仕組みだと言えるでしょう。

もう一つの利点は、家庭での育児にも手当を出すことで、子どもを育てることが「立派な仕事」であるという認識が高まり、子どもを産み育てることを社会全体がサポートするという文化が醸成されることだと思います。

在宅育児手当は新規の制度になるので、反対や抵抗も予想されます。現実的には現行制度の児童手当を増額するという、対象を広く設定した制度の方が受け入れられやすいことは確かでしょう。その場合でも、配偶者控除廃止による子育て世代への負担が、手当によって軽減される効果はあると思います。

3.在宅育児手当を導入するにあたり、課題となることは何だと思われますか。政策、財源に加え、社会の反応、制度的な問題・障壁など複数考えられる中、課題として大きいと考えていらっしゃるものを挙げて下さい。

在宅育児手当は新規の制度になるので、誤解や抵抗があることは予想されます。「三歳児神話」や「女性に育児を押し付ける」古い考え方だといった反対は出てくるでしょう。そういった社会の反応が最も大きな課題だと言えるでしょう。
特に、専業主婦やパートタイム就業の層は、その声を代弁する有識者が、ワーキングマザーの層を代弁する有識者よりも、政府の関連委員会にあまり参画していない現状にあります。有識者も女性の社会進出に反対する古い考え方だという誤解やレッテルを恐れて、こういった意見を表立って表明しにくい空気があるように思います。
声なき声を政府が拾えるかも一つの課題だと言えます。女性を家庭に縛るのでもなく、就労を強制するでもなく、各家庭が自分たちで行いたい育児のあり方を選択する権利を公平な補助により保障し、かつ子育てを社会全体が全面的に支援するという考え方が浸透するかどうかが鍵だと言えるでしょう。

財源については、もし配偶者控除が廃止されるのであればその増収分と、保育園利用が抑制されることで浮く部分をあてれば可能だと思われます。

ウーマノミクスと北欧の子育て支援
配偶者控除廃止は大胆な子育て支援なしで進めるべきではない
専業主婦は金持ちの高年齢層というレッテル

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