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視野を大きく広げてくれた本/『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』

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■ハイカルチャーとも繋がり出す

さらに、初音ミクは、ポップスやサブカルチャーの分野だけではなく、アートやクラシックのフィールドにまで進出するようになる。柴氏は、もはやボーカロイドは『アマチュアの遊び道具』などではなく、プロの音楽家、キャリアのあるクリエイターが本気で挑む対象としてとらえられるようになったと語る。確かに、これまで初音ミクと接点のなかったハイカルチャーとも様々なコラボレーションが行われるようになって来ている
東京オペラシティコンサートにて初演された冨田勲の『イーハトーヴ交響曲』

YCAM(山口情報芸術センター)で初演された世界初のボーカロイドオペラ『THE END』

六本木・森美術館で開催された『LOVE展:アートにみる愛のかたち シャガールから草間彌生、初音ミクまで』
なかでも、『THE END』は、2013年11月にパリへの上陸を果たし、由緒正しい劇場に集まるオペラファンの前で、歌手もオーケストラも一切登場しない世界初のボーカロイド・オペラは上演され、『21世紀の新しい芸術の形』として高評価を受けたという。

■大きな文化現象の始まり

柴氏も振り返る通り、2007年当時、音楽CDの売上げは激減し、インターネットの普及が音楽業界を疲弊させ、音楽業界だけではなく、コンテンツ業界全体を衰退させてしまうに違いないと皆信じていた。確かに、レコード業界等既存の音楽業界は大きなダメージを受けたが、今となってみれば、音楽文化が衰退したというのは公平な評価とはいえない。それどころか、日本では海外にはまったく存在しない独自の音楽文化が花開き(海外のアーティストからも高く評価されるようになる)、そのきっかけとなったのが、初音ミクに代表される技術(ボーカロイド)であり、ボーカロイドやインターネットを最大限に生かすことを知る新しい世代のクリエーターだったことがわかる。そして、それは音楽のジャンルを超えて、非常に大きな文化現象の始まりだったとの評価を受けつつあるのだ。

■自分の反省

正直なところ、私自身は、多くのボーカロイド曲のあのアップテンポに、自分の音楽心があまり揺さぶられることなかったことが、この巨大な現象に気づかず、正しい時代認識ができていなかったことの主要な原因だったことを感じ、大変反省している。もっとも、人の世界認識というのは、案外こんなものなのかもしれない。単なる自分の好みや好き嫌いが、世界の理解をあやまらせ、世界認識をゆがめてしまうことの恐ろしさを思い知った。

ちなみに、あらためて、冨田勲氏の『イーハトーヴ交響曲』をじっくり聞いてみた。今度は非常に心揺さぶられた。本書は、自分の世界観も、音楽観も大きく広げてくれたといえる。あらためて感謝の意を表したい。

*1VOCALOID - Wikipedia

*2初音ミク - Wikipedia

*3

画像を見るアーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか

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