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自民党の偉い先生も勘違いしている「恥の文化」

 自民党の深谷隆司氏が、「恥の文化は失われたか」と題して、ブログに記事を書かれています。

 批判の対象になっているのは、みんなの党の前代表の渡辺喜美議員です。

 深谷氏は言います。「党代表辞任で終わる話ではないと思う。なによりも政治家として恥を知れと言いたいところである」

 深谷氏は、さらに今世間の注目を浴びている理研に対しても批判を浴びせます。「理化学研究所は、最初の発表の時、彼女をことさら過度に持ち上げて宣伝材料としたのではなかったか」、「マスコミの報道も相変わらずであった。センセーショナルに煽り立て、ちょっと怪しくとなると手のひらを返したように叩く。褒め、貶し、往復で稼ぐ何時ものパタ-ンだ」、「なんだか日本の良さ、「恥の文化」が失われつつあるようで悲しい」

 さあ、貴方はこの深谷氏の発言を聞いて何か感じなかったでしょうか?

 いろいろな反応があるかと思います。

 自分も政治家であるのに、その政治家が政治資金に関して偉そうなことを言えるのか、と。

 それ以外に何か感じたことはないでしょうか?

 はっきりと言って、「恥の文化」という意味の理解の仕方が違うのです。

 とはいっても、だからといって深谷氏が間違っているとは言いません。というよりも、深谷氏のような理解の仕方をしている人が圧倒的に多いと思います。私も学生時代には、深谷氏のように「恥の文化」を理解していました。

 つまり、世間に顔向けできないことをしたら、恥をしれ、と。日本人は、かつては倫理観が高く、だからこそ何か間違いをしでかしたときには、切腹だって厭わなかったのだ、と。

 私が学生の頃、必読書であったルース・ベネディクトの著した「菊と刀」という本がありました。 それは、日本人の恥の文化について鋭い考察をしている、と。

 勝手な想像ですが、この本は、知名度は高いけれども、果たしてどれだけの日本人によって読まれているのかと疑問に思うのです。買って読み始めた人は多いかもしれないが、共感した人は少ない筈だ、と。

 私、この本を読み始めたとき、日本の武士は非常に志が高く、そして、倫理観も高かったために、恥というものを重んじていたということが書かれていると思っていたのです。しかし、実際に読み始めると、著者は武士たちを全然褒めないのです。そして、私は、「恥の文化」に込められた意味合いを知ったのです。

 ルース・ベネディクトの言いたかったことは何か?

 西洋の社会は罪の文化である。つまり、人間は、自分たちの行為は常に神が見ていると思い、倫理的に正しい行いをしようと務める、と。だから、誰かに悪行が知られることがなくても、人間は罪悪感を感じる、と。一方、日本人は、誰かに自分の悪行が知られたら、非常に恥ずかしさを感じ、その結果、死さえ厭わない。しかし、仮に他人に自分がやっていることがばれなければ、自分のやったことを悪いとは感じない。これがルース・ベネディクトの言う「恥の文化」なのです。

 他人に悪行が知れ渡り、その余りの恥ずかしさのために死さえ厭わない、と。

 いいでしょうか、これが学問的な意味での日本の「恥の文化」が意味するものであるのです。

 しか~し‥先ほども言ったように、「菊と刀」が必読書扱いされていた割には内容が理解されていないのです。だから、深谷氏のように「恥の文化」という言葉を常識的な意味で使う人が多いのです。

 深谷氏やかつての私が考えた「恥の文化」は、人は、自分が行った行為が他人に分かろうと分かるまいと、責任を持たなければいけないというものなのです。つまり、より高い倫理観を求めたもの。

 それに対して、ルース・ベネディクトのいう「恥の文化」は、少なくても自分のした悪行が他人にばれたら恥ずかしく感じる日本人の傾向を指したものなのです。

 果たして、日本人は、私などがかつて考えていたように、より高い倫理観を意味する「恥の文化を」を有していたと言えるのか?

 もし、そうであると確信を持って言えるならば‥、否、そうであると確信を持って言える場合にのみ、日本の恥の文化はどこに行ったのだ、と言えるのです。

 今回の渡辺氏の行動は、ルース・ベネディクトがいう「恥の文化」の要件さえ満たしていないのかもしれません。何故ならば、代表を辞めただけで責任は取ったように振る舞っているからです。

 数十年前、「菊と刀」に出てくる日本人の「恥の文化」の説明に納得のいかなかなかった私ですが、最近の風潮を観ていると、ルース・ベネディクトの考察はあながち間違いだと言えないような気がしているのです。

 何と寂しいことなのか。

【関連記事】
恥の文化は失われたか(深谷隆司)

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