記事
- 2014年04月10日 23:59
<4月10日>(木)
○さてさて、これからワシントンでは春のIMF世銀総会が行われ、併せてG20とG7が行われる。で、G20ではウクライナ支援が、G7では対ロシア追加制裁が討議されるという。やれやれ、わが国の立場はビミョーである。
○日本の立場は、G7の中ではドイツに次いでロシア寄りといったところであろう。逆にアメリカ、カナダ、イギリスは強硬姿勢である。ただし日本としては、「武力を背景に国境が変わる」という事態を容認すれば、同じことを中国が南西諸島でやろうとしたときに困ることになる。「北方領土交渉があるから、プーチンを追い詰めたくない」というのも変な話で、日本にとって北方領土は「藪の中の2羽」であって、尖閣諸島は「手中の1羽」である。後者を優先するのが当然であろう。さらに言えば、万が一、プーチンが北方領土を返してくれたとして、その後で現地で住民投票が行われて、「やっぱり住民はロシアを望んでいる!」と言われた日には、目も当てられないではないですか。
○かといって、G7で日本政府が目立つ必要もない。せいぜい「シベリアから安いガスが買えたらもうけもの」くらいの下心を持ちつつ、「まあまあ、皆さん、落ち着きましょう」などと言ってりゃいいんじゃないかと思う。ちなみにわが国は、1990年代にG7にロシアを入れてG8にすることに反対した立場である。だから言ったでしょ、と言いたくなるところである。
○そもそも対ロシア制裁なんて、何もしなくても既に投資資金の引き上げは起きているし、ルーブルは売られているし、金利も上がっている。今週、IMFがワールド・エコノミック・アウトルックを改訂しましたけど、2014年のロシア経済成長見通しは+1.9%から+1.3%に引き下げられている。これで原油価格が下がろうものなら、マイナス成長もやむなしでありましょう。でもきっと、彼らは経済よりも政治的なメンツを優先するんだろうな。
○次に、G20におけるウクライナ支援の議論がまたまたビミョーである。ウクライナがデフォルトすると、債権をいっぱい持っている欧州の銀行とロシアの両方が困る。だからIMFが140~180億ドルの融資枠を設定することになっている。日本政府は、先のハーグにおけるG7において、「最大15億ドル」の支援を表明して高い評価を得た。ただしウクライナは派手に中国に武器輸出をしている国でもあるから、あんまり助けると気持ちが悪いという面がある。なにしろ旧ソ連時代には、軍需産業の3分の1がウクライナに集中していたそうなので。もっとも、「困っている国には中国がやってくる」の法則から行くと、ウクライナがあんまり困らないようにしておく方が無難だという見方もできる。
○ところで日本が支援する15億ドル(1500億円)の中身であるが、外務省のHPをチェックしてみたら、案の定、こんな程度であった。すなわち、1200億円が円借款、300億円が貿易保険、無償供与はわずかに3.5億円である。つまり、ウクライナにあげちゃうお金はスズメの涙ということになる。まして今では、円借款は「新たに出るお金よりも戻ってくるお金の方が多い」という状態(つまり、中国がせっせと返してくれている!)なので、日本政府として新たに税金を投入するような話ではない。
○さらに少しググってみますと、円借款で1100億円の予算をつけるボルトニッチ下水道処理場改修事業とは、かなり前からのJICAの事業なんですが、受注先は清水建設みたいです。それから最大300億円となっている貿易保険は、ほとんどの場合、日本企業が受け取り手になりますので、これまた国内に還流することになります。でも、日本とウクライナ間の貿易額は輸出入合わせても年間12億ドル程度でありますから、300億円はなかなか使えないでしょうなあ・・・・ということで、この15億ドルの支援は結構えげつない中身です。安心しましたか?
○この手の経済援助の話は、「外国にお金をあげるくらいなら、国内で使え!」と言って怒り出す人が少なくない。でも、実態はこんな感じなのであります。日本政府も、そんなにナイーブではないのでありますよ。
○日本の立場は、G7の中ではドイツに次いでロシア寄りといったところであろう。逆にアメリカ、カナダ、イギリスは強硬姿勢である。ただし日本としては、「武力を背景に国境が変わる」という事態を容認すれば、同じことを中国が南西諸島でやろうとしたときに困ることになる。「北方領土交渉があるから、プーチンを追い詰めたくない」というのも変な話で、日本にとって北方領土は「藪の中の2羽」であって、尖閣諸島は「手中の1羽」である。後者を優先するのが当然であろう。さらに言えば、万が一、プーチンが北方領土を返してくれたとして、その後で現地で住民投票が行われて、「やっぱり住民はロシアを望んでいる!」と言われた日には、目も当てられないではないですか。
○かといって、G7で日本政府が目立つ必要もない。せいぜい「シベリアから安いガスが買えたらもうけもの」くらいの下心を持ちつつ、「まあまあ、皆さん、落ち着きましょう」などと言ってりゃいいんじゃないかと思う。ちなみにわが国は、1990年代にG7にロシアを入れてG8にすることに反対した立場である。だから言ったでしょ、と言いたくなるところである。
○そもそも対ロシア制裁なんて、何もしなくても既に投資資金の引き上げは起きているし、ルーブルは売られているし、金利も上がっている。今週、IMFがワールド・エコノミック・アウトルックを改訂しましたけど、2014年のロシア経済成長見通しは+1.9%から+1.3%に引き下げられている。これで原油価格が下がろうものなら、マイナス成長もやむなしでありましょう。でもきっと、彼らは経済よりも政治的なメンツを優先するんだろうな。
○次に、G20におけるウクライナ支援の議論がまたまたビミョーである。ウクライナがデフォルトすると、債権をいっぱい持っている欧州の銀行とロシアの両方が困る。だからIMFが140~180億ドルの融資枠を設定することになっている。日本政府は、先のハーグにおけるG7において、「最大15億ドル」の支援を表明して高い評価を得た。ただしウクライナは派手に中国に武器輸出をしている国でもあるから、あんまり助けると気持ちが悪いという面がある。なにしろ旧ソ連時代には、軍需産業の3分の1がウクライナに集中していたそうなので。もっとも、「困っている国には中国がやってくる」の法則から行くと、ウクライナがあんまり困らないようにしておく方が無難だという見方もできる。
○ところで日本が支援する15億ドル(1500億円)の中身であるが、外務省のHPをチェックしてみたら、案の定、こんな程度であった。すなわち、1200億円が円借款、300億円が貿易保険、無償供与はわずかに3.5億円である。つまり、ウクライナにあげちゃうお金はスズメの涙ということになる。まして今では、円借款は「新たに出るお金よりも戻ってくるお金の方が多い」という状態(つまり、中国がせっせと返してくれている!)なので、日本政府として新たに税金を投入するような話ではない。
○さらに少しググってみますと、円借款で1100億円の予算をつけるボルトニッチ下水道処理場改修事業とは、かなり前からのJICAの事業なんですが、受注先は清水建設みたいです。それから最大300億円となっている貿易保険は、ほとんどの場合、日本企業が受け取り手になりますので、これまた国内に還流することになります。でも、日本とウクライナ間の貿易額は輸出入合わせても年間12億ドル程度でありますから、300億円はなかなか使えないでしょうなあ・・・・ということで、この15億ドルの支援は結構えげつない中身です。安心しましたか?
○この手の経済援助の話は、「外国にお金をあげるくらいなら、国内で使え!」と言って怒り出す人が少なくない。でも、実態はこんな感じなのであります。日本政府も、そんなにナイーブではないのでありますよ。
- 吉崎達彦(かんべえ)
- 双日総合研究所取締役副所長・同主任エコノミスト。



