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領土の拡大は国の負担を増やす

先日、ウクライナ東部の町、ドネツクやハリコフで、ロシアへの編入を求めるか否かの住民投票を求めるデモがありました。先月、同国南部のクリミア自治共和国とセヴァストポリ市で住民投票が行われ、有権者の多くがロシア連邦への加入に賛成、ロシアが両地域との間で編入の取り決めを行った時点で、想定された事態といえます。

 国連総会は編入を認めないとする決議案を採択し、欧米ではロシアの領土拡大への野心に対する非難と警戒の声が高まっています。しかし、これははたして当のロシア政府が望んでいることなのでしょうか?

 クリミアはウクライナにおいて経済的に発展したエリアではありません。ウクライナ政府から財政上の補助を受けており、ロシアへ編入されれば、ロシア政府による支援の対象となるでしょう。軍事面ではどうか。すでにロシアの黒海艦隊は駐留しているのであるから、むしろこれからは対ウクライナ最前線として軍事強化せざるをえず、ロシアの負担は増える。ドネツクやハリコフは比較的発展した地域ですが、ソ連時代から続く重厚長大産業の技術革新にはこれまたコストがかかります。

 さらにはロシアにおける民族問題にも火をつける可能性も出てきます。クリミアの編入は、ロシアから独立する権利を正当化することになるからです。

 以前、ドイツの商工会議所に勤めるロシア経済の専門家がこんなことを言っていました。

 「私たちはドイツ統一がいかにお金のかかる事業かを知りました。たとえば現在、ロシア人が住んでいるカリーニングラード(第2次大戦まではドイツ領「ケーニヒスベルク」と呼ばれていた)を再びドイツ領にするとしましょう。そのために行うインフラの整備、行政組織の改編、少数民族となる現地ロシア人へのドイツ語教育などにどれだけのコストがかかるか? 通信や移動の手段がこれだけ発達した現在、領土という概念は国民の精神的、心理的な部分では大切かもしれませんが、経済的には重要性を失いつつあると思います」

 21世紀の現在、領土を拡大することは、内に抱える問題も増やすことになる。そこで資源の存在が確認されたとしても、一国の力で発掘から輸送、販売までを成り立たせるのは容易ではなりません。

 石橋湛山は戦時中、「日本は朝鮮、台湾、満州を捨てる、中国から手を引く、樺太もシベリアもいらない」との論陣を張りました。そして敗戦後の日本においてはこう主張します。「日本は4つの島でやっていける、植民地費用がいらなくなるから、世界の経済国家となれるのだ」と。

 クリミア問題は従来の国家観が変わる契機になるのではないか。そんな気がしています。

(芳地隆之)

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