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小保方氏問題と手続的正義と弁護士会広報について

小保方氏は、アウトだと私は思う。

理研の調査では「悪意」「ねつ造」の有無が問題となっているようだが、本質ではない。悪意の有無にかかわらず、彼女は、プロとして決して許されないことをしたのであり、その職を剥奪されてもやむをえない。真犯人だから、あるいは冤罪だからといって、検事や弁護士が証拠を偽造するのと同じことであり、悪意がなかったでは済まされない。30歳は未熟だからとか、女性だからとかいって、その責を減免されるはずもない。STAP細胞が実在してもしなくても、その罪に変わりはない。問題は研究の手続的正義であり、結果的正義ではないからだ。

だが、彼女は許されない、ということと、彼女に弁護士が必要だ、ということとは、全く別問題だ。彼女の弁解が、どれほど非常識で、身勝手極まりないものだとしても、それを彼女のために主張する職業人の存在は、少なくとも適切な処罰と、彼女の納得のため必要だし、組織的病巣や、もっと悪いヤツがいた、という新事実が明らかになるかもしれないし、万が一だが、アウトという私の考えを根本から覆してくれるかもしれない。そして、現在の彼女に自ら弁解する能力のないことは明らかだ。逆説的に言うなら、弁解しようのない人ほど、優秀な弁護士が必要なのである。

彼女の代理人に、もと大阪弁護士会長以下そうそうたる弁護士がついたことを、盗人たけだけしいと批判する世論もあるけれど、残念なことだと思う。小保方氏の正当性を主張することが許されないなら、確定死刑囚の代理人として冤罪を主張することは、もっと許されない。彼女は罰せられるべきだ、という結果的正義の問題と、彼女に最高の弁護人がつくべきだ、という手続的正義の問題は、違う。「被害者や無辜の代理人の意見ならよい、加害者や犯罪者の代理人の意見はダメ」というのは、結果的正義に囚われて、手続的正義を知らない者の意見である。

ヴォルテールの言葉とされる、「君の意見に反対だが、君が意見を言う権利は命に代えて守る」は、表現の自由を守る趣旨と理解されているが正確ではない。反対意見の存在は、手続的正義の要諦であり、結果の正統性(正当性ではない)を担保するからこそ、命に代えて守るに値するのだ。

わが国では、近代司法の歴史が浅いせいか、手続的正義の重要性や、逆説的な弁護士の役割は、あまり理解されていない。そうだとすれば、その役割を弁護士会が広報することは、弁護士会の責務である。

先日、大阪弁護士会ホームページのブログに、小保方氏の代理人を務める弁護士の投稿が掲載された。「弁護士会が、嘘つき女の肩を持つとはなにごとか」といった批判がネットに溢れているようだが、弁護士会は、小保方氏を支持しているわけではない。

「中立たるべき弁護士会が、一方当事者の代理人の意見を掲載するのは間違っている」との意見もある。中立たるべきなのはその通りだが、だから沈黙すべきだというなら誤りだ。いいかえるなら、個別事件の結果的正義がどちらにあるかについて、弁護士会は中立を保つべきだが、手続的正義の正当性を訴えることについては、雄弁でなければならない。そうであるなら、著明事件で当事者代理人の意見を一定の配慮のもとに広報することは、極めて有効だし、必要不可欠といってよい。また、一方当事者の代理人の意見を掲載していけないというなら、犯罪やDVの被害者代理人、冤罪を訴える被告人や受刑者の代理人の活動や発言も掲載できなくなるだろう。弁護士の仕事の本質が弁護である以上、一方当事者代理人の活動を広報せずして、弁護士会広報はなり立たないといってよい。

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