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日本とインドの労働事情(その1)

3月27日のエコノミック・タイムズ紙に、日系企業が直面するインドの労働問題についての解説記事が出ていました。

12億人の人口と大量の若年人口を有し、経済成長を続けるインドは、新興国の中でも巨大なマーケットとして注目を浴びており、外資系製造業も多数進出していますが、大量の労働者を雇用する製造拠点を持つ企業が直面する問題の一つに労働問題があり、様々な工夫がなされています。

今回の記事は、日系企業にフォーカスしていますが、もちろん労働争議が起こっているのは日系企業だけではなく、他の外資系企業の製造現場でも起こっています。労働や組織についての文化の違い、経済的背景、組合活動の成熟度、労使交渉のプロセスの違い、制度的側面など様々な問題が複雑にからみあっている問題です。

かつて、日本も高度成長期に労使紛争も頻発した時期がありましたが、それを乗り越え、労使協調路線の下で、高い生産性と品質、安定した雇用を実現してきましたが、これから製造業の割合が増えるインドの労働事情がどうなっていくのか目が離せません。

以下、ざっと翻訳したもので、少し読みにくいかもしれませんが、記事の内容です。

日本式に問題があるのか?

日本の自動車会社ホンダとマルチスズキのあと、最近トヨタがインドで労働争議に直面した。日本式の考え方-労働者への圧力、自由の利かない作業過程、その土地との微妙な差異に対する視野の狭さ-に問題があるのだろうか。それとも、インド人管理職や労働者に理解する能力が無いのだろうか

①スズキ・モーター・コーポレーション(SMC)の会長である鈴木修は、「経費削減と改善は絶え間なく続く過程である」と常日頃強調し、インド人管理職を指導してきた。これこそが日本が世界で低コスト自動車製造業として頭角を現してきた理由である。ある時、彼は、現マルチ・スズキ・インディア会長であるバルガバに対して「日本では、乾燥したタオルから本当に水滴を搾り取ろうとしているのに対して、インドのタオルからは水滴が滴り落ちている。」と言ったという。

②インドの製造業を水滴が滴っているタオルに例えたのは、恐らく適切であろう。我々は、コスト面でも、作業現場の実務でも、勤勉さと完璧さに対する理解や、規律正しさ、合意による意思決定プロセスなどという日本特有の物事のやり方においても、日本水準には全く追いついてもいない。「日本人は、全ての行動が最高レベルに達するように常に要求し続けるだろう。」と、日印間ビジネスを強化するために作られた業界団体である在プネインド日本商工会(IJBC)の会長であるY.H.ガルプレは言う。

③もしこの著名な「日本式」が本当に理想ならば、なぜホンダやスズキ、そして現在トヨタなどの多くの日本企業で労働争議が頻発しているのだろうか。なぜ彼らは頻繁に議論の渦に巻き込まれるのだろうか。実例を挙げるならば、「マルチ・スズキが単なる販売会社になる」と投資家が恐れるグジャラート州での新たな製造子会社設立にスズキがこだわる理由をどうすれば説明できるのだろうか。

④これは、日本式思考の特異性が関係しているのか、それとも我々の彼らに対する理解力の無さが関係しているのだろうか。同じくIJBC副会長でありインド人と日本人の社会文化的溝の橋渡しをする目的で多くの日本企業の世話をしてきたソフトウェア兼研修会社のソフトブリッジ・ソリューションズ社代表取締役社長でもあるラヴィ・カマットによると、「両方」だという。

⑤日本人の傾向を考えると、毎年ある程度経営目標を改良しようと彼らが望むのは当然のことである。それは絶え間無き改善という枠組みにきちんと当てはまるのだ。そしてもし途中ある時点で、その目標を達成するために管理体制の根本的見直しが必要であれば、そうするのである。

⑥「スズキは期待する利益を得るために資金を投資してきたのだ。」とカマットは言う。「そしてもし市場がその利益を上げられると彼らが知れば、彼らは、相手が『行き過ぎだ。これ以上は駄目だ。』と言うまで、容赦なく推し進めるだろう。チャンスの見方、行動の仕方は、とても違うのだ。」と彼は言う。

⑦この「絶え間ない改善」パラダイムは、長年にわたりインドで実を結んだ。50%の市場シェアを奪還したマルチ・スズキでは、このパラダイムのおかげで、一時的中断を除いて長年に渡り、同社の自動車に対する圧倒的な顧客需要を満たすだけではなく、軽くて燃費の良い自動車の大量生産ができた。どうやってできたのか?とりわけ、労を惜しまずに車の部品の重量を1年に数グラムずつ、毎年毎年減らし続けることによってである。

⑧これは、歯止めのきかない特許権使用料や特許保有会社の増加する利益といった知的財産権を向上させる方法を絶え間なく推し進めるものの考え方と同じである。「彼らは静的な状態を忌み嫌う。」と日本の精神を理解している数少ないインド人であるカマットは言う。

⑨インドの日系企業の工場における労働紛争は、このストーリーにどのように適合するのだろうか。絶え間なくコストのタオルを絞ることに原因があると考えられるだろうか。あるいは、日本における労働環境のストレスとトラウマをインドや他の場所へ日本が輸出している可能性はないだろうか。

(その2へつづく)

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