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そんなに国際会議場ばかり作ってどうするの?(2)

さて、非常に間が開いてしまいましたが、本投稿は以下のエントリの続きです。まだ以下を読んでない方は、リンク先をどうぞ。
そんなに国際会議場ばかり作ってどうするの?
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8296633.html
という事で前回のエントリでは、開発計画の是非をめぐって紛糾する群馬県高崎市のコンベンション施設計画を題材にしながら、我が国の全国自治体が国際会議誘致だのエキシビジョン誘致だのに一斉に走る姿をご紹介しました。また、国際競争を前提に考えれば、この分野は確実に「選択と集中」が求められており、日本政府もすでにその方向で政策の舵を切っている実態をお伝えしました。

っていうか、そもそも全国自治体の観光政策に関わっている方々に問いかけたいのは、何で「MICE振興政策」という看板を掲げながら、貴方達は国際会議と展示会しか視野に入っていないのか?ということです。もう一度、基本中の基本からおさらいをしますと、MICEとは

 Meeting:企業の会合、セミナー等
 Incentive:企業報償・研修旅行等
 Convention:国際会議、学会等
 Expo / Event:展示会/文化・スポーツイベント

の頭文字をつなげて作った業界用語です。当り前すぎてバカバカしい話なのですが、国際会議だ展示会だというのはMICE産業を構成する一部でしかなくて、その他にもナンボでもMICE振興の対象となるテーマはあるのですよ。それなのに全国自治体の観光振興政策ときたら、もはや世界的な誘致競争が行なわれていて、地方のイチ中小都市なんかでは到底その競争に勝てるわけもない国際会議だの大規模展示会だのの誘致ばかりを目指している。もはや、MICEの「M」と「I」がどこかに飛んでいって、コンベンションの「C」とエキスポの「E」のみの「CE」になってしまっている。アホちゃうかと。

これは以前も書いたことですが、ハッキリ言って大規模に参加者を集める国際会議や展示会ってのは、これから先の国際誘致競争は完全に我々カジノ業界の独壇場なんですよ。既存にすでに建っている施設が必死で生き残りを図っているのならまだしも、今更、単館開発の大規模国際会議場や展示会場なんかを新規に建てたところで、勝ち残ってゆけるわけがないんですよ。詳細は以下を参照。
日本はもはやMICE振興を諦めろ
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/7364122.html
では、これからMICE振興を考える地方都市は、MICE振興の為にどういう「手」を打つべきかといえば、大型の国際会議だとか展示会なんてのは、大都市にもはや任せておいて、それ以外の「MICE」の誘致を考えることに集中した方がどう考えても賢い選択です。

例えば、神奈川県湘南地域の海岸では海の家で音楽イベントを開催する業者がケシカランという事で大規模な排除運動なんかが起こっていますが、MICE振興の観点からみればあのような音楽イベントはMICEの内の「文化イベント(E)」に含まれるものです。本来は、国策としてそこからの観光波及を狙って振興が行なわれているものであって、近隣苦情トラブル自体は問題があるとはいえ、その存在そのものを害悪視するようなものではない。私なんぞの目から見れば、千葉県あたりの海岸と近隣居住地の間に距離のある海岸エリアは、苦情の出にくく、悪い業者が入いりにくいローカルルールでもさっさと作って、湘南からお客様をゴッソリと奪ったればエエがなとしか思いません。

かの「海の家」問題は、悪い側面ばかりが強調されている面もありますが、大手のレコード会社が支援したり、TV局やラジオ局が金出してメディア連動したりとそれほど悪くない動きもあったのですよ。2000年代の初頭あたりには観光客が激減し、ブランド失墜しまくっていた湘南海岸がこれらメディア連動した「海の家」の登場で一気に観光客を取り戻したのは紛れもない事実です。音楽イベントと、地域振興が上手にコラボした実例は、野外音楽祭「フジロック」で町おこしに成功している新潟県湯沢町なんかもあるワケで、千葉県の皆様にはこういう実例を見ながらぜひ頑張って頂きたいところです。
【参考】フジロック・フェスティバル開催地、湯沢町長インタビュー
http://fujirockers.org/12/?p=3125
その他、例えば私がMICE分野のひとつとして最近気になっているのは就職活動分野です。少子化が続くといわれる我が国ではありますが、それでもまだ大卒、専門卒、高卒、中卒まで合わせると毎年100万人強の新卒就業者が出てきます。これら100万人強の学生達が、卒業一年前の3月になるとより良い就職先を求めて、一斉に筆記試験だの、面接だのという形で全国を飛び回る。MICEの中の「企業ミーティング(M)」というと、どうしても企業の商談というイメージがありますが、これら毎年繰り返される就職面接だって実は立派なMICEの「M」です。

この分野をMICEの一貫として捉えて振興するという発想は未だ全国にも少ないのですが、例えば私の友人の日高啓太郎氏(@NPO法人 地域創成産学官民連携研究開発機構)は、自治体や地域財界などからの支援を受けながら、秋田県、北海道などでIターン就職、Uターン就職を目指す学生向けに就活支援講座を提供する活動をしています。多くの就活学生にとって就職面接のための旅行というのは「用件が終わったらすぐに帰る」ものなのでしょうが、まさに「アフターMICE」の発想で、このような面接後の現地プログラムがあれば学生達の地域への延泊を誘発できます。また、そもそもこの種のIターン、Uターン就職の促進は特に若年労働者の流出が著しい地域にとっては、中長期に見て地域への経済貢献が非常に大きいのは自明。これこそが地域行政がMICE振興に求める経済波及の一つの形といって良いでしょう。
【参考】秋田で就活支援講座-秋田大学学生との対話きっかけに企画 (秋田経済新聞)
http://akita.keizai.biz/headline/1870/
という事で、何やら全国的に同じようなMICE振興策ばかりがお目見えするこの分野の政策ですが、必ずしも今語られているような大規模展示会や国際会議だけがMICEではない。町の規模から考えて到底不釣りあいな国際会議場や展示場の建設を目指すよりも、こういう小さなMICE分野をコツコツと広げていった方が余程「身の丈に合った」意味のあるMICE振興になるといえるでしょう。

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