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◇オンラインゲーム業界の成長と潜むリスク◇

2月の初めにご紹介しましたこのセクター。2月末にかけて関連銘柄の株価は絶好調でしたが、3月に入り若干調整。そして先週26日から27日にかけ<急落を演じました。原因としましては、今まで騰がりすぎたことの反動というテクニカル面や、2013年度業績発表後の利益確定売り、業界トップであるテンセントの株価調整に連れ安、業界全体の成長性への過大評価に対する懸念、等々が言われています。

また、海の向こうの米国市場でも、たとえばこんなことがありました。日本でも人気のオンラインゲーム「キャンディー・クラッシュ・サガ(Candy Crush Saga)」を開発するKing Digital Entertainment社(本部ロンドン)が、26日にNasdaq市場に上場。14カ国語に対応するゲームで世<界に3億人を超えるユーザーを抱える有名企業の上場は、調整局面に入ったNY市場復活の起爆剤として期待を集めましたが、「Candy Crush Saga」が収入の4分の3を占める”一本足打法”リスクへの懸念などから、公募価格の22.5USDを16%下回る19.0USDで取引終了。同社のみならず業界全体の成長性にも疑問符が付けられるというオチになりました。その流れが海を越えて香港市場にも押し寄せた、という見方もあります。

いずれにしましても、前回の特集時にもコメントしましたように、競争激化が著しいこの業界ですので、投資するには冷静に分析してからの方が良いかと思われます。前置きが長くなりましたが、今日はその成長の裏に潜むリスクも見ていきたいと思います。

[銘柄別の株価急落度合い]

先週の株価急落というのがどのくらいだったか、まずは関連銘柄を見てみましょう。

  (単位:HKD)
           3/24株価  3/28株価  下落率
0082 第一視頻    0.94    0.79    -16%
0434 博雅互動   11.38    9.58    -16%
0484 雲遊       52.25    42.50   -19%
0700 テンセント  587.00    535.00   -9%
0777 網龍網絡   15.84    14.18   -10%
3888 金山軟件   32.00    28.85   -10%
8002 IGG       8.74    6.97    -20%

このように週初から週末にかけて、テンセント以外は軒並み二ケタ下落。

特に博雅互動、雲遊、IGGといったゲーム専業ほど激しく下落しています。またテンセントはご存じの通り指数を左右するほどの大型銘柄ですので、ゲーム専業ではないとはいえ、9%も下落(3/27時点では11%もの下落)したというのは業界にとってかなり衝撃的なことだったと思います。

[オンラインゲームの二つの業態]

一口にオンラインゲームと言いましても、業態は大きく2つに分かれます。一つはPC中心のウェブゲーム(2013年度オンラインゲーム市場全体の83%)、もう一つは携帯端末でのモバイルゲーム(同17%)です。

まずウェブゲームにつきましては、画面が大きくコアユーザーがメインのため、画像やコンテンツが相当緻密でないとなりません。したがって莫大 な開発資金が必要で、しかも開発期間が長期にわたるため、それに耐えうる体力を持った企業でないと参入は難しいものです。しかし一度開発に成功し人気を博すことができたら、長期に渡り大きな収入と利益を享受することが可能です。例えばMMORPG(=Massively Multiplayer Online Role- Playing Game)と呼ばれる大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲームの中でも特に有名な「剣侠情縁網絡版3(剣網3)」は、金山軟件(キングソフト:3888/HK)が6年かけて製作したものですが、投入から4年以上経った今でも人気が衰えず、引き続き同社の稼ぎ頭になっております。

一方、モバイルゲームにつきましては、携帯端末の画面が小さいためにそれほど高精細は求められません。またライトユーザーが短時間遊ぶケースが多いため、コンテンツの緻密さもPC用途と比べると簡単で済みます。よって参入障壁が低く、多くの企業が参入してきているのが実状です。また、ゲーム自体のライフ(期間)もウェブゲームに比べると短かく、ものによっては数カ月から半年で飽きられるという性格を持っています。それらの点が投資家に見抜かれてしまい、冒頭でご紹介しましたように米国市場でKing Digital Entertainment(KING)が公募比大幅安で推移。2011年末Nasdaq上場の先輩株「Zynga(ZNGA)」の株価落ち込みと同じ轍を踏むともっぱらの噂となっています。

上記のメリットとデメリットをまとめますと次のようになります。

■ウェブゲーム
 メリット :参入障壁が高く、一度参入すると長期間莫大な利益を上げることが可能。
 デメリット:開発費用と期間がかかる。

■モバイルゲーム
 メリット :開発費用と期間がかからない。
 デメリット:参入障壁が低く競争大。ゲームのライフが比較的短い。

[過度の悲観も禁物]

以上見てきたことで、業界全体、特にモバイルゲーム関連がネガティブである印象を持ってしまうかもしれません。しかしながら、過度に悲観するのも避けたいところです。それは、ここ数年の爆発的にスマートフォンが普及しているため。例えば2013年度決算で見ますと、博雅互動(0434/HK)は前年比+32%増収、IGG(8002/HK)に至っては同+104%増収と飛躍しています。その原動力となったのが、モバイルゲーム事業の躍進です(実は博雅互動は依然ウェブゲーム事業が収入の60%を占めています。しかし前年の83%からは急減、その代わりにモバイルゲーム事業が前年の17%から2013年は40%に大きく伸ばし、全体の増収に貢献しています)。

しかも、モバイルゲームはまだ市場全体の17%を占めるに過ぎません。そのぶん伸びシロが大きく、モバイルゲームが今後、業界全体を引っ張っていく成長エンジンとなることは確実と言えるかと思います。

[さいごに]

いずれにしましても、中国のオンラインゲーム市場は間違いなく成長を続けており、その市場規模の推移は次の通りとなっています。

     (単位:億人民元)
          市場規模  前年比伸び率
 2003年実績   19       -
 2004年実績   31      +63%
 2005年実績   48      +55%
 2006年実績   75      +56%
 2007年実績  122      +63%
 2008年実績  198      +62%
 2009年実績  276      +39%
 2010年実績  349      +26%
 2011年実績  469      +34%
 2012年実績  601      +28%
 2013年実績  890      +48%
 2014年予想 1,150     +29%
 2015年予想 1,470     +28%

このように、今の中国で年率30%前後の高成長を続ける業界は、オンラインゲーム以外にはそれほどないと思います。その中で激しい競争に生き残った企業が莫大な利益を享受すると考えるのは自然であり、したがって個別企業の分析は絶対に欠かせないセクターとなります。苦労した分、儲けも大きいものと期待したいところです。

過去のメルマガより抜粋

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