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「人々の生活を変える”ソーシャル・スタートアップ”を応援したい」ソーシャル・スタートアップ・アクセラレーター・プログラム「SUSANOO」コーファウンダー・孫泰蔵さん

3月3日、厳しい冷え込みが身にしみる夜の代々木能舞台。この場に130名を超える人々が集まり、NPO法人ETIC.が新たに取り組むソーシャル・スタートアップ・アクセラレーター・プログラム「SUSANOO(スサノヲ)」のお披露目会が開催されました。今回の記事では、SUSANOOのプログラム・ファウンダー、MOVIDA JAPAN株式会社代表取締役CEO・孫泰蔵さんによる「前口上(本取組の紹介)」をまとめました。

数々のITスタートアップを自ら起業し成功させ、後に続く多くの起業家を支援してきた孫泰蔵さんが、なぜ今”ソーシャル・スタートアップ”を支援しようと考えたのか。そこから何を生み出そうとしているのか。未来への示唆に富む言霊(メッセージ)をお送りします。

喜びも悲しみも分かち合える仲間を集めて、スタートしてほしい

最初に、SUSANOOを始めた背景の問題意識をお伝えしたいと思います。まず、スタートアップ(起業)の9割はうまく行きません。特に、最初の想定通りにいくことなんて、もう100%と言っていいほどあり得ないことです。その原因は、よく言われるように「お金が」ないから、ではありません。自分でも起業を経験し、多くの起業家を見てきましたが、スタートアップの失敗の原因の多くは「心が折れてしまうこと」なのです。

これまで色んなベンチャーに投資や支援をしてきましたが、その際にたったひとつだけ、起業家にお願いしています。それは「共同創業者を連れてきてください」ということです。起業すると大変なことばかりで、どれだけタフな人であっても心が折れてしまうことがあります。だから、起業家が僕のところに一人でやってきたときには、彼がどんなに優秀で、どんなに素晴らしいアイディアを持っていたとしても、「喜びも悲しみも分かち合える、仲間を連れておいで」と伝えています。
 

“ソーシャル・スタートアップ”という言葉に込めた想い

SUSANOOはソーシャル・スタートアップ・アクセラレーター・プログラムという名前も持っています。これは、”ソーシャル・スタートアップ”を支援し、事業が加速するためのお手伝いをするという意味です。社会起業家とか、ソーシャル・アントレプレナー、ソーシャルベンチャーといった一般的な呼び方ではなく、あえて「ソーシャル・スタートアップ」という言葉を使っている背景には、僕たちのこだわりがあります。

最近のシリコンバレーでは、従来的なベンチャー企業と”スタートアップ”を、区別して呼んでいます。ではスタートアップとは何か。それは、「今までにないイノベーション(革新)を通じて、人々の生活と世の中を変える取り組み」です。言葉通りの「スタートして間もない事業」という意味ではなく、”スタートアップ”とは、創業から短期間で急成長し、事業を通して人々の生活やライフスタイルをガラッと変えてしまうインパクトを秘めた、イノベイティブ(革新的)な事業であるということです。

AirbnbとUberで、僕のサンフランシスコ出張生活は変わった

では、どんなビジネスが「スタートアップ」なのでしょうか。今日は、2つのケースをご紹介します。ひとつは、Airbnb(エアビーアンドビー)。Airbnbは自分が持っている空き部屋や、帰省や出張でしばらく空いてしまう部屋と、そこに泊まりたい人とを仲介する「空き部屋シェアサイト」です。僕はサンフランシスコによく出張しますが、最近ではもうホテルには泊まりません。もっぱらAirbnbを使って、他人の家を泊まり歩いています。

シリコンバレー発のAirbnbは世界中に拡大しており、去年1年間で400万泊を仲介したそうです。莫大な手数料収入を上げるWEBサービスへと成長したAirbnbですが、創業者が事業のアイディアをベンチャーキャピタルに伝えて資金調達をしようとした時には、「アホか。自分の家を見ず知らずの人に貸すかい」と全く相手にされなかったそうです。仕方なく創業者は、仲間の起業家からお金を集めてスタートしたといいます。

次に紹介するのは、Uber(ウーバー)。これは、ヒッチハイクの有料仲介サービスです。例えば僕が今、ここから渋谷に行きたいとしましょう。このモバイルアプリを使うと、今この周辺にいて、渋谷の方に向かっている車のドライバーから、「俺は1,000円でいくよ」とか、「じゃあ僕は800円で」といった連絡が来ます。それで僕が誰かを選ぶと、google mapに車のマークが現れて、こちらに向かってくるのがリアルタイムで確認できます。それで顔を見合わせながら「お前か?」「そうそう、乗りなよ」みたいな感じで合流して、渋谷まで乗せて行ってもらう。着いたら降車して「じゃあね」で終わり。決済はWEBで事前に行われているので、その場での現金のやりとりは発生しません。

2014年3月に日本上陸を果たしたUber(WEBサイトより)

Uberも、最初プランを考えた時に、みんなに「そんなの食えるわけない」と言われ続けたそうです。でも、昨年の全米での取扱高は、400億円を超えています。そんな売上のあるタクシー会社なんて、世界のどこにも存在しません。僕の経験からするとサンフランシスコでは、どんな辺鄙な場所にいてもUberを使えば5分以内には誰かしら迎えにきてくれます。50キロ以上離れたところに行くにしても、タクシーの6割引きくらいの値段でいけるし、時々ベンツのSクラスとかが迎えに来くることもあって、まるでお抱えの運転手がいるような気分に浸れたりもします。

Uberは、安く移動したい人のニーズと「スペースは空いているし、ついでだから乗せて行ってあげるよ」という善意をモバイルネットワークでつなぎました。個人としては便利で楽しいし、社会としては渋滞や、二酸化炭素排出量が減る。僕はもう最近では、どこに行くにしてもタクシーは使わずに人の車ばかり乗っています。このように、AirbnbとUberによって、僕のサンフランシスコ出張生活はとても便利で楽しくなりました。

もうひとつ紹介したいお話があります。先日Google本社を訪問した際に、Google Carに乗せてもらいました。全自動運転してくれるロボットカーです。実際に乗って公道を走っている時に、運転席でハンドルを握っていた担当者が突然、両手放しで後ろを向いて「この仕組みは・・・」とか説明しはじめるんです。想像してみてほしいのですが、これは結構びっくりします。でも不思議なことに、最初は怖いのだけれど、しばらく乗っているとすごく安心できるようになります。すぐに、人間の運転よりも、ロボットカーのほうがはるかに静かで安定性があるとわかるからです。

担当者に「どうしてロボットカーを作っているんですか?」と質問したところ、「君はこれまでどれくらいの時間を車の運転に費やしてきたと思う?」と聞き返されました。「何千時間・・・それ以上の膨大な時間だね」と答えると、「運転に費やしている時間を、自由に使えたらどうなると思う?移動中に子どもと遊んだり、趣味に時間が使えたりしたら、素敵だと思わないか?」と言うのです。おそらく、ロボットカーが普及した未来では「昔の人って、車を運転するのに毎日すごい時間をかけていたんだよ」と振り返ることになるのでしょう。

Airbnb、Uber、そしてGoogleのロボットカーのように、社会に劇的な変化をもたらす可能性をもった事業が、「スタートアップ」と呼ばれるものです。

後編:イノベーションを生みだす”オプトアウト”のカルチャー、SUSANOOで取り組む3つのテーマ、に続きます。

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