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「死の商人」とは

 1日に武器輸出に関する見直しが閣議決定され、それに先立つ内閣府のレクチャーに参加してきました。

 よく世間(朝日新聞などのメディアも含めて)では兵器を製造する企業を「死の商人」などと脊髄反射的に非難することがありますが、これはいかにも大人げないでしょう。

 というか、かなりナイーブです。

 我が国は兵器・武器の世界有数の輸入大国です。

 兵器を売るのは悪いけど、買うのはいいのでしょうか。

 武器輸出を「死の商人」と非難する人たちが、輸入する側を「死の消費者!」と糾弾することを見たことがありません。

 こういっては何ですが売春は非道徳的だが、買春は倫理的にOKといっているようなものです。

 それに問題なのは自国で開発できない国から兵器を買う権利を奪うことが正当化できるか、ということがあります。

 例えばA国とB国があって、A国は自国で開発して戦闘機を持っています。ところがB国は開発できません。戦闘機の輸出が非道徳的と許されないのであれば、B国は戦闘機を持てません。

 A国は戦闘機が持てないB国から容易に制空権を奪え、侵略は容易になるでしょう。

 また実際に戦争にならなくても、A国はかなりB国に対して様々な要求を突きつけることができるでしょう。

 ところがB国が戦闘機を輸入できれば、A国とB国の間では軍事的な均衡と抑止力によって「平和」が保てます。

 B国が戦闘機を持たない場合と持った場合、どちらが「平和」でしょうか。
 
 「武器輸出は『死の商人』だ!」と、頭ごなしに糾弾する人達はこのように具体的なことを考えていないのでしょう。

仮にそのようなことも考えた上での武器輸出を否定するのであれば、兵器の作れない国は死ね、といっているようなものなのですけども。

実際問題としては武器輸出によって、紛争が起こることも、それがエスカレーションすることもあり、先進国が武器供与を外交の手札に使ったり、途上国支配に利用するケースも多々有ります。

この事実を否定はしませんが、武器をすべて禁輸すれば世の中が平和になるというのは空想に過ぎません。武器輸出のメリット、デメリットを良く議論すること必要でしょう。

ところが政府もメディアもそのような情報をあまり開示したり、報道したりしません。

ですから観念論が幅を効かせているわけです。

またデュアルユースに関しては事実上野放し状態です。

我が国しか供給出来ないコンポーネントや工作機械などが堂々と外国の軍隊や軍需工場で使用されています。

また一方で優れた国産兵器は禁輸さえなければたちまち世間を席巻するというのもイリュージョンです。実戦経験もなく、市場でも揉まれたこともなく、基礎研究費用や実験費用もロクに使わないで、海外の情報もまともに収集しないで優れた兵器ができるものでしょうか。

また国内市場ではロクに収益が上がりません。収益がなれれば研究開発も、設備投資も、従業員の教育もできません。

このような現状を保守派の論者は、防衛産業は儲け度外視でやっていると浪花節というか、演歌の耐える女的な自体を美化することが多いのですが、そんな状態が長年続けば、まともな製品、ましてや最先端の製品なんぞつくれるわけがありません。

先日日本飛行機のハンガーが潰れて日米の哨戒機などがダメージを受けましたが、ハンガーは建設後60年も経っておりました。ハンガーを立て直すという「設備投資」をしていれば防げた事故でしょう。

国内のメーカーの生産設備はかなり老朽化しているのが現実です。

兵器輸出に反対にしろ、賛成にしろ冷静に現実を見つめて議論をすべきです。

それができていない一因には防衛省の秘密主義があります。他国では当然開示すべき情報を握りこんで出さない。だから町場ではファクトをベースにした議論が盛り上がらないわけです。ですから防衛省は積極的に情報を公開すべきです。

例えば「MAMOR」のような広報誌では自画自賛だけではなく、もっと議論のデータとなるような情報の開示や防衛省や自衛隊の問題点も取り上げるべきでしょう。

提灯記事を書き飛ばすことが広報の仕事じゃないはずです。

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html

月刊ZAITENに「防衛産業はやりたい放題」を寄稿しました。

リンク先を見るZAITEN (財界展望) 2014年 05月号 [雑誌]
財界展望新社
2014-04-01

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月刊WEGDE4月号に以下の記事を寄稿しています
先細る防衛産業 中小こそ輸出のチャンス 国はバックアップを

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楽天Kobo電子書籍ストア
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