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特許をめぐるアップル対グーグルの「代理戦争」

サムスンのスマートフォンがアップルの特許を侵害しているとして、約20億ドルの損害賠償金と販売差し止めを求めた控訴審の審理が米カリフォルニア州北部連邦地裁で始まりました。サムスンはアップルもサムスンの2件の特許を侵害しているとして、7億円の損害賠償を主張していますが、アップルの要求は2000億円を超える桁違いのものです。そしてサムスンは、「アップルが特許を侵害されたと主張する機能は、基本ソフトを提供するグーグルが開発したものだ」というものですが、今回のアップルの訴訟の狙いは、そこにあるのだと思えます。このアップルとサムスンの特許をめぐる係争は、アップル対グーグルの「代理戦争」という匂いを感じます。つまりアップルがほんとうに狙っているのはグーグルのアンドロイドOSのそのもので、まずはサムスン相手にしかけてきているのではないかと思えます。

ふたつの理由があると思います。まずはサムスンはスマートフォンの出荷台数で、アップルを抜いて、シェアは30%を超えトップの座に君臨しています。ちなみにアップルのiPhoneは調査によって数字は違っていますが、15~18%程度です。しかも出荷台数ではサムスンの伸びが顕著で、シェアの差が広がってきています。

しかも、アンドロイド勢に限ればスマートフォン全出荷台数の75%をサムスンが占めています。アンドロイドOSのスマートフォンを出しているメーカーや機種は多いとはいえ、なんと営業利益では、アンドロイド勢の全メーカーの90%以上を占めている状態です。

世の中にさまざまなメーカーからさまざまな機種がでているとは言え、事実上はアンドロイドのスマートフォンといえばサムスンなのです。サムスンに打撃を与えることが、グーグルやアンドロイド勢の他のメーカーにアップルが睨みをきかせることにもなってきます。

ちなみにスマートフォン市場はどの指標でシェアを見るかで、市場の勢力地図が大きく変わりますが、売上金額ではアップルとサムスンが拮抗し、営業利益ではアップルがいまだにトップです。
なにで競争相手を圧倒するのかー5種類のシェア - 「発想力を広げる - 大西宏のマーケティ ング・アイ」 - BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

ふたつめは、米国での裁判ではサムスンを相手にしたほうが勝てるとアップルが踏んでいるからだと思います。いきなりグーグル相手だと同じ米国企業間の係争になって裁判に勝てるとは限りません。アップルとサムスンの特許をめぐる係争は、2011年にジョブズが、「サムスンはコピーキャット」と発言し、特許権侵害で米国・日本で訴えたことから始まり、世界各国で綿々と続いていますが、なかには英国での判決のように「ギャラクシーはクールじゃない」とアップルの訴えを退けたものもありました。相互の訴訟が多すぎてなにがなんだかわからなくなってしまうほどです。しかし、一昨年には、カリフォルニア州サンノゼの連邦地裁で、サムスンに損害賠償を支払うことを命じる判決があったことは記憶に新しいところです。しかしこれまでの経緯を見れば、どうも米国での訴訟はアップルに有利な結果になっているという印象を受けます。
Apple対Samsung裁判でまたAppleに有利な判決

アメリカの裁判は一般市民が陪審員となります。アメリカが生んだイノベーションを盗んで利益をあげているサムスンは許せないという市民感情が影響しているのではないでしょうか。

さて、今回の場合はOSに関する特許侵害です。サムスンが主張するように、本来はグーグルを相手にすべきところです。しかし、まずはサムスン相手に勝ち、次に同じ争点でグーグルを訴えることも視野にいれての訴訟ではないでしょうか。

アップルの反撃が効を奏するのかどうかはわかりませんが、これでサムスンが敗訴すれば、特許侵害がOSそのものに関したものであり、サムスンは賠償金よりももっと大きな制約や打撃を受けることになりそうです。

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