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安倍政権の方針で拉致問題は解決するのか

(1)日本と北朝鮮の政府間交渉が1年4か月ぶりにはじまりました。前回は2012年12月に局長級会談が決まっていたにもかかわらず、北朝鮮がミサイルを発射を予告したので、民主党の野田政権が対話を断ち切ってしまいました。私は戦略的判断ミスだと思いました。会談を続けるなかで断固として抗議すればいいからです。なぜそう思ったかといえば、対話が途切れればいちばん困るのは拉致被害者家族だからです。有本恵子さんのお母さんである嘉代子さんは、いま88歳になりました。夫の弘明さんは85歳です。横田滋さんは81歳、早紀江さんは78歳。国家犯罪であるとともに人道問題でもある拉致解決のためには、戦術的対応では前に進みません。いままた安倍政権が問われています。「拉致問題を私の政権で解決する」と主張することには賛成です。ところが総論は正しくても、解決に進む各論ではいくつかの問題があります。

 ミサイル問題と核問題は「6か国協議」の枠組みで解決していかなければなりません。案外知られていませんが、この国際的枠組ができたのは、2002年の日朝平壌宣言がきっかけでした。それはアメリカ政府高官が何度も言及しているとおりです。宣言第4項にはこうあります。「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した」。小泉純一郎首相も「この地域における信頼醸成のため、六者協議による対話の場が整備されることが重要である。協力をえたい」と発言しました。金正日国防委員長は「信頼醸成の対話については、関係各国の関係が正常化するにつれ、そのような対話の場が整備されると考えている。共和国もそのような場に参加する用意がある」と肯定的に答えたのでした。

 この「日朝平壌宣言」は、日本と北朝鮮が関係を正常化していくうえでの基本的な政治文書です。小泉政権以降の政権が、民主党時代もふくめて、北朝鮮との関係を「日朝平壌宣言」を基礎にして進めることを継承してきました。小泉政権が終わってからも、それぞれの首相の施政方針演説では、日本の基本的立場として踏襲してきたのです。第一次安倍政権も同じ対応を取っていました。ところが2012年12月に成立した第二次安倍政権では、様変わりしました。私が「質問主意書」で問うたように、安倍首相の施政方針演説や所信表明演説から「日朝平壌宣言」が消えてしまったのです。いちばん最近の演説を見てみましょう。
〈北朝鮮には、拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動を取るよう、強く求めます。拉致問題については、全ての拉致被害者の御家族が御自身の手で肉親を抱きしめる日が訪れるまで、私の使命は終わりません。北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しの三点に向けて、全力を尽くしてまいります〉。(平成26年1月24日、所信表明演説)
 拉致、核、ミサイルには言及しているものの、「日朝平壌宣言」の言葉はありません。おそらく意図的なのでしょう。国交正常化に向かう意志はないという宣言にほかなりません。田原総一朗さんが安倍首相本人に伝えたように「趣味としての右翼」を実践しているのか、それとも本音なのかはわかりかねます。余談ですが田原さんは安倍首相を「保守本流」で右翼は趣味だと判断しています。私はそうは思いません。ネット右翼と同質の皮相な思想の持ち主が首相になってしまったと思うからです。とはいえ日本の総理大臣であることは事実です。ならばその条件のもとで拉致問題をどう解決していけばいいのでしょうか。安倍首相が「日朝平壌宣言」を基本にしなければ交渉はそう遠くないうちに挫折するでしょう。あえていえば安倍さんの挫折などどうでもいいことです。有本夫妻、横田夫妻をはじめとして多くの家族が苦しむことを何とか一刻も早く解決しなければなりません。横田滋さんは「首相は『私の任期中に解決』と言うが、何をしているか明らかでなく、実績を見せてほしい」と記者に語りました(3月21日)。これが正直な被害者の思いなのです。はじまった日朝交渉で戦術的に何が必要なのでしょうか。(続く。3/31)

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