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STAP細胞問題とブラック企業化する特定国立研究開発法人-裾野削り地盤沈下する日本の科学技術

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 3月17日に、独立行政法人通則法「改正」に伴う「国立研究開発法人と特定国立研究開発法人」(両者とも仮称)制度の法案作成を進めている政府の総合科学技術会議との交渉を行ったのですが、この中でSTAP細胞の問題をめぐっても若干やりとりがあったのでその一部を紹介しておきます。(by文責ノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

政府・総合科学技術会議(以下「総科」) 現在の独立行政法人(以下「独法」)を①単年度管理型の法人、②中期目標管理型の法人、③研究開発型の法人――仮称として「国立研究開発法人」という3つの類型に分けることが決定された。国立研究開発法人は、研究という業務の特性を踏まえ、期待される研究成果の最大化という観点から、独法制度下で柔軟な運営を確保する制度設計を現在検討している。

 国立研究開発法人の中には、さらに国家戦略に基づき世界最高水準の成果を目指す「特定国立研究開発法人」(仮称)を設けることになる。

 「特定国立研究開発法人」の対象法人は極力少数に限定とされていることから、3月12日の総合科学技術会議では、候補として理化学研究所と産業技術総合研究所の2つを確認した。現段階では法律を作る中で対象法人を最終決定する予定になっている。制度設計としては、総科と主務大臣の強い関与や業務運営上の特別な措置等を別途定める。具体的な措置は、内閣府・総務省共管の別法によることとし、その評価のあり方については、総科の評価専門調査会が検討しているところだ。

 ――独法通則法の中での「国立研究開発法人」と「特定国立研究開発法人」の違いは何か?

 総科 「特定国立研究開発法人」の主な措置としては、①研究開発の特性を踏まえた運用、②状況の変化に応じた主務大臣による的確な指示等の主務大臣の関与、③中期戦略目標期間(最大7年)、④中期戦略目標の記載事項の特例(研究開発成果最大化に関する事項、法人の長のマネジメントに関する事項、研究開発活動の改善及び効率化に関する事項等)、⑤中期戦略目標の設定、目標終了時の見直し等に関する総科の関与、⑥国際的頭脳循環に対応するための給与等の支給基準の特例、になる。

 ――しかし、この項目を見ると、必ずしも「特定国立研究開発法人」だけに限らず、「国立研究開発法人」にも共通する部分があるのではないか?

 総科 確かにそうだ。おおもとの独法通則法の書きぶりによって、この「特定国立研究開発法人」の主な措置の書きぶりも変わってくるということだ。ただ、⑤にある総科の関与は「特定国立研究開発法人」だけのものといえる。全体のベースとなる「国立研究開発法人」は、評価専門調査会が関与するが、「特定国立研究開発法人」は総科が目標設定と評価に直接関与するということになる。

 ――産総研も「特定国立研究開発法人」の候補にあがっているが、産総研は世界トップレベルを競う研究だけではなくて、基礎的な分野もある。具体的なマネジメントとして、基礎的・基盤的分野と先端分野のバランスはどうなるのか。悪くすれば、世界トップレベルを競う先端分野に、お金も人も集中することになれば、基礎的・基盤的研究はないがしろにされる危惧があるのではないか。

 総科 産総研については経済産業大臣の意向や法人の長の意向によることになる。総科と主務大臣と法人が一体になって進めるのが「特定国立研究開発法人」の主旨だが、具体的には法人の長のマネジメントも大きいだろう。

 ――今回も結局、独法通則法の枠の中で制度をいじることになるが、独法の枠の中にいるために、人も予算も毎年削減されている。その中で「特定国立研究開発法人」が今回特出しされているわけだが、これには予算的措置や人員的な措置は考えられているのか?

 総科 今のスキームでは予算的措置はまさに主務大臣によるところだ。予算は各省ごとに決まっているから、その中で主務大臣がどう配分するかによる。総科はアクションプランや資源配分の答申などで考えを示すことになる。

 ――独法化され10年が経過した研究現場で実感しているのは、これ以上、人員が削減されたら研究分野そのものを削っていくか、研究所をどんどん小さくしていくしかないところまで来ている。この問題を評価専門調査会はきちんと見ているのか?

 総科 評価専門調査会には研究現場にいた専門家等もいるので、そうした点も考慮している。また、昨年末に研究開発力強化法を改正し、有期雇用研究者については労働契約法の特例措置で人材の流動化をはかっているところだ。

 STAP細胞の再現性や論文の問題は
 ボトムアップで進めるマネジメント不在も要因だ
 研究の広い裾野があって世界トップレベルに到達する

 ――総科と主務大臣と法人の長が一体でというのは、要するにトップダウンで研究を進めるということになるのではないか。広い裾野があるから世界のトップレベルの研究まで到達するわけで、ボトムアップで進められるマネジメントが必要だ。今、理研でSTAP細胞をめぐって再現性や論文が問題になっているが、この問題でも理研がSTAP細胞の論文を世界に発信する前の段階で、きちんとした検証を踏まえるマネジメントが行われていたのかが問われている。研究を進めるにあたって、きちんとマネジメントできる人材がいないというのが大きな問題の一つでもある。科学リテラシーが低い日本において総科がきちんとそうした問題に対応したり発信することや、科学リテラシーを持ってマネジメントできる人材を育成して、ボトムアップとトップダウンを上手く融合するマネジメントこそ進めるべきだ。

 総科 トップダウンだけでなく、できるだけ研究現場の声も聞きながら進めたいと考えているが、国立研究機関は、大学や民間研究機関でやれないことをやるという点は踏まえる必要がある。理研の基礎研究と産総研の応用研究の連携なども進められればと考えている。

 ――競争的資金で基礎研究というような話もあるが、基盤的な資金は運営費交付金だ。この運営費交付金をきちんと確保する必要がある。今回の議論の中でも一律的な効率化を横並びでやるなどという発言も出されているが、総科が運営費交付金をきちんと確保すべきと強く発信すべきだ。

 総科 総科としては科学技術が大事だと考えてはいるのだが、どうしても厳しい財政状況で予算に限りがあるという財政当局からの話があり、難しい状況になっている。

 ――連年の運営費交付金削減によって、どの研究機関も事務部門はぎりぎりのところまで縮小せざるをえないため、研究者の事務作業が増え、どんどん研究自体もできなくなっている。これでは未来がない。

 総科 いま目先のことばかりになっていて困難な状況にある。成長戦略としてのイノベーションということで、その目をつまないように努力したい。

 研究者も基盤予算も毎年削っているのだから
 論文のシェアが低下するのは当たり前だ


[画像をブログで見る]

 ――研究独法は中期目標にもとづいて研究を進めているわけだが、予算がどんどん削られてその中期目標を進めることもできないような事態に陥っている。予算はどんどん削っておいて、成果だけは出せというのは成り立たないおかしな話だ。その上、今回の見直しでもこれまでと同様の効率化が進められるならば研究現場は立ちゆかなくなる。そのことはすでに日本だけが論文のシェアが下がっていること(▲上の表は文部科学省のデータ)に明確に示されている。論文のシェア低下が問題だというが、予算を削り続けて、人を減らし続けているのだから当たり前の話だ。それを逆にさらに効率化を進めるべきだというは、まったくおかしな話だ。

 総科 今回の制度見直しでは、そうしたことも踏まえて「国立研究開発法人」制度づくりを進めるということが、行革推進本部事務局の考えになる。

 ――今後のスケジュールはどうなるのか?

 総科 今国会で独法通則法改正と「特定国立研究開発法人」についての法案を成立できるように進めることになっている。6月22日が会期末で、まだ具体的なスケジュールが決まっているわけではないが、できるだけ早く成立させたいと考えている。

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