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評価経済社会は専制的か〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(3)あと小保方さんとかAKBとか

前回までのあらすじ

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 だんだん『黒子のバスケ』脅迫事件と関係なくなってきてるし、そろそろこの話は終わりたいのだが、前回までのあらすじ。

 一昨日のエントリー(幸せの配り方〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(1)) では、「カネ」「地位」「オンナ」「名誉」といったそれぞれの領域において、個別に格差を是正しなくても、それらのゲームが別々に行われて、こっちのゲームで勝った人はあっちのゲームでは負けている、という社会であれば良いのではないかという主張をした。

 さらに昨日のエントリー(幸せの互換性〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(2))では、そのようなかたちでの平等、つまり、個別の分野では格差があるけど総合して考えればまあまあ平等、というタイプの平等を、アメリカの政治哲学者マイケル・ウォルツァーが「複合的平等」と呼んだことを紹介した。

 しかし、現実には複合的平等はなかなか実現されず、「お金持ちだと大学に合格できる」とか、「美人だと芥川賞もらえる」などのことは起こりうるのであり、一つのゲームでの勝利が、別のゲームでの勝利に変換されることは珍しくないのである。

 そして、ひとつの幸せのかたちが、別のかたちの幸せに変換できてしまうような社会は、圧制的であり専制的であると、パスカルやマルクスは考えた、という話をした。

評価が支配する専制

 前近代社会は、生まれた身分の高さが、財産、権力、地位、名誉といった様々な価値に変換できる社会だった。近代になって身分社会が終わると、身分に代わって貨幣による専制が始まり、お金はもっとも互換性の高い価値となる。身分さえ金で買えるようになったのだ。

 ところで現代はどのような時代なのかというと、今はまさに「貨幣経済社会」から「評価経済社会」への転換期にある、というのが岡田斗司夫さんの見立てである。僕はこの岡田斗司夫さんの議論を、興味を持って追いかけている。

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評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている

 

  つまり、これからの時代は、手持ちのお金よりも、他人からの評価がもっとも重要になる、という話なのだが、「でも生きていくためにはお金が必要でしょ?」という反論はここでは的はずれである。お金で評価を買うことはできないけれど、他人からの評判さえあれば、そこからお金を生み出すことができる。この意味において、評価が貨幣よりも優越しているのである。それが岡田斗司夫さんの言う「評価経済社会」なのだ。

 『黒子のバスケ』脅迫事件の被告人手記を見ると、この人は、他人からの評価をすべて剥奪されてしまった人、という印象を受ける。あるいは、そのように思い込んでしまった人、と言ったほうが正確かもしれない。

 あるいは、STAP細胞の小保方晴子さんが「人生終了」などとネットで冷やかされているのは、彼女が職を失うからでも、お金を請求される可能性があるからでもなくて、この疑惑のおかげで人物評価が失墜し、マイナス評価が日本全国に行き渡ってしまったからである。職を失っても、お金が無くても、警察に捕まっても人生終了しないが、マイナス評価が莫大になると、人生は終了する。本当にそうなのかは分からないが、多くの人がそう感じているのである。そもそも小保方さんは、AO入試という人物評価制度によって早稲田に合格した人間だった。

 堀江貴文さんが警察に捕まり、会社や資産を失っても復活できたのは、まだあの人に財産がたくさん残っていたからというよりも、それでもホリエモンを支持し続ける人たちがたくさんからだろう。

 他人からの評価の重要性に気づいたホリエモンは、世間の反発を買う「イヤな人戦略」から「いい人戦略」に切り替えた、というのが岡田斗司夫さんの分析である。

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超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略

 

圧制としてのAKB48選抜総選挙

  問題は、評価による専制体制が、そんなに素晴らしいものなのかということである。

 例えば、AKB48グループの女の子たちは、「ファンからの評価」によって支配される専制体制において、もがき苦しんでいる。AKB総選挙というのは、そのもがき苦しむ姿さえエンターテイメントとして消費しようという、非常に趣味が悪い催し物なのである。

 「努力は必ず報われる」から夢に向かって全力で走るんだと言われたって、何を努力すればファンからの評価が上がるのか、皆目分からない。少なくとも、「恋愛禁止条例」を破ったら人気が下がるということだけは明白と思われたので、それだけは律儀に守っていたら、それを盛大に違反した指原さんが総選挙一位になったりするのである。

 いっそ単純に、誰が一番歌が上手いかとか、誰が一番美人かという投票であれば、彼女たちも傷つかないし、諦めもつくだろうが、「ルックスがアドバンテージ」であるとは言え、「いつだってかわいい子が人気投票一位になる」とは限らない。得体の知れない「評価」をめぐって争わされているのである。

  そして、それは今日の僕たち自身の姿でもあるのだ。

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