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新たなフェーズに入る路上生活者支援。ホームレスの人々の数は減っているが…

深い医療支援の必要性


大西:これから20分ほどかけて課題についてどうしていくかについて、これまでのスピーカーに集まってパネルディスカッションをお願いします。

三つのキーワードを中心に話していきたいと思います。一つ目はハームリダクション、二つ目はハウジングファースト、三つ目はネットワーク。既存の行政ではできなかったことをどうしていくかということを考えていきたいと思います。

渋谷の活動では、「路上に戻る」という決断をした人がいたとのことでした。病院に行くのは嫌だ、生活保護は受けたくない、という方々です。そういった当事者のニーズや、見えてきたことについて、のじれんの室田さん、教えてください。

室田:普段の医療相談は、月に一回公園に来ていただいて相談をしていました。まさに西岡医師からあった通り、短期的な視座の支援しか提供できていませんでした。今回のプロジェクトとの関わりでいうと、シェルターがあったおかげでより深く医療相談をすることができました。雑談のなかから得られたヒントを支援につなげられたのは大きかったと思います。

大西:今回渋谷は特に重篤な疾病をお持ちの方が多かったと思います。医療者としてそういった状況についてのお考えをお聞かせください。

高桑:重篤な疾患を持つ方については、普段は医療相談に来ない方でした。池袋でも医療相談会を行っていますが、数十名の相談者の方を前にして、丁寧にひとつひとつ質問をするというのは難しいのが現実です。今回のプロジェクトは社会福祉士の方にも入っていただき、問診も丁寧におこなっていきました。そのおかげで、重篤な疾患を持つ方も発見できたと思います。

大西:ソーシャルワークと医療と現地の支援団体、自治体の担当者も含めて、実際のニーズに対応していただいたということですが、課題として路上に戻ってしまうということがあったと思います。その点についてはいかがでしょうか。

高桑:長期的な介入が必要だと思います。点の活動ではなくて、地域に根付いて活動している方々と連携して支援をしていくというのが現実的でしょう。介入というのは様々で、医療もそうですし、精神的なアプローチも彼らに取って大切です。ぱっと見ではよくわからない、複雑な心理状況を抱えている方もいらっしゃいます。そのあたりの介入は点の活動では難しいので、地域で活動している方と連携していく必要があるでしょう。

室田:私たち前提として、生活保護を受けていない路上生活者も受け入れる、ということから始めています。路上生活者にとって、病院に行くというのはハードルが高い行動です。保険もないし、付き添ってくれる人もいないし、交通費もないし、という状況です。ここに限界があります。積極的な医療は求められると思います。


ハームリダクションとハウジングファースト


大西:つづいて「ハームリダクション」について考えていきたいと思いますが、この言葉は聞き慣れないと思います。ドラッグ依存症の方に正しい注射針の利用法を抑えたり、安全な注射針を提供する、といった取り組みが事例に挙げられます。

ぎょっとするかもしれませんが「いけません!」と叱ってもどうこうならないので、最低限の命を守り、次の支援につなげる、という考え方です。炊き出しも同じ発想で、路上に留まることを支援しているとも見れますが、そういったなかで当事者のニーズにあった支援のあり方を模索することができます。

ハウジングファーストにもつながってきますが、今回のプロジェクトの特徴は個室のシェルターを確保するということでした。普段池袋の活動のなかで、個室シェルターのニーズはどのようなものでしょうか。

中村:ニーズは強くて、私たちは夜回りや相談会をしていますが、あの施設に行くのは嫌だ、という方が本当に多いです。そして行き場がなくなって、一緒に頭を悩ます毎日です。

個室に関しては、年末年始だけではなく常時必要だな、と感じます。本当は行政が用意すべきですが、できなければ民間でやるしかないとも思います。ハードルはありますが、できることをやっていきたいと思います。

大西:もやいはアパートの連帯保証人を引き受けています。シェルターのニーズ、住まいの貧困、就労しているけれど不安定な住まい、そういったことについて何かあればぜひ。

稲葉:一時間くらいあればお話できますが…(笑)

その前にハームリダクションの考え方ですが、とても面白いと思っています。路上生活者支援のフェーズが変わっているという問題意識があります。今から10年前から最初はボランティアで支援を始めましたが、2002年に支援法ができて、その間に制度化が進んできました。一方で自立支援センターを中心とする就労支援、もう一方で生活保護を適用しようとする動きがあります。多い時期に比べると、ホームレスの数は減っています。

ただ、まだまだ見えないホームレスといわれる路上にはいないけど家がない方がたくさんいらっしゃって、また路上に残っている方は様々な困難を抱えていらっしゃいます。やはり今まで制度によって助かった人もいますが、そのやり方は限界に来ているというのが今の状況だと思います。もちろん、そうした共通認識が各団体に広がってプロジェクトが立ち上がったのだと思います。

その上でハームリダクションという考え方ですが、行政もNPOもそうですが、社会的に成果をアピールする必要があるんですね。これだけの人数を就労させました、と数で示さないといけなくなると、支援が「シナリオ化」してしまうというか、このようにステップアップしていきましたということを見せることに注力してしまいますが、そのような考え方に限界が来ていると思います。

支援することによって命は守れましたが、また路上に戻りました。路上で支え続けていきます、というと一般には理解がされにくい、カンパを集めづらかったりしますが、まさにそこが必要だと伝えていく必要があると思っています。

個室のシェルターに関しても、今の行政が紹介している施設は劣悪なので、個室を用意して、それをステップアップして路上から脱出する人は出てくるでしょう。一方で、そういった制度を前提としないシェルターも必要だと思ってもいます。


制度を前提としない支援


大西:制度を前提としない支援というと三谷が思い浮かびますが、三谷を取り巻く環境も変わりつつあり、集う人々の高齢化もあると思います。三谷でのニーズがどこにあるかをぜひ聞いてみたいと思います。

荒川:たしかに三谷の相談に乗るなかで、個室がいいという人が多くなってきています。もともと三谷は日雇い労働者がほとんどでしたが、そうではない人が増えてきたんですね。それはやはり三谷にくればご飯が食べられる、路上に寝ることができるということで、三谷に縁がなかった人が入ってきたというのはあるでしょう。

今回のプロジェクトを一緒にさせていただき、シェルターは個室できれいで、初めて路上に出る人にとっては安心できる場所だと思いました。三谷にはそういった方が来なくて、渋谷や池袋は若い人も集まりやすいと思いますが、三谷は中高年の人が多いですね。

今回シェルターの利用を聞いているなかで、やはり必要性があるな、と。自治体のは本当にひどいんですよ。大部屋20人とかですから。結局は自治体が用意するものを変えていかないと意味がないし、私たちにつながる人はいいけれど、そうじゃない人は追い返されてしまいます。今回皆さんとお話して、そこをみんなで一緒に取り組んでいければいいのかな、と思います。



民間からモデルを作る



大西:おっしゃっていただいたように、既存の支援のメニューの質が高くありません。ぼくらがずっと支えて、行政の代替をやるわけにもいきません。

ただ、どういった支援がありえるのかについては、ぼくらがモデルを示せます。路上にいたいという人は路上にいてもいい、ちょっと体を休めたい人は体を休める、ハームリダクション、ハウジングファーストのような観点を意識した支援が必要だと考えています。今回は民間の助成金でもなく、行政の受託でもなく、クラウドファンディングで自由度高く行うことができました。

「○○じゃないとダメだ」という条件付きの支援に囚われることなく、実際に利用する人のニーズに合わせた支援の方法をつくっていくことが必要だと思います。今回初めて新宿、渋谷、池袋、山谷で、現地で長く活動をしてきた団体と、医療相談ということで専門家の方のグループと、うまく連携してそれぞれのよさを消すことなく、連携することができました。そこから見えてきた成果や課題を整理して、新しい東京の路上生活者支援のあり方のきっかけを作れるといいな、と思っています。社会にフィードバックしていきたいと思います。

本当はひとり1時間くらい聞きたいところですが、今日の報告会はこちらで終了したいと思います。お忙しいところありがとうございました。

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