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【ドキュメント台湾国会占拠(5)】市民らが行政院も占拠 〜馬政権は「強制排除」を即決

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3月23日夜9時過ぎ ~抗議者らが行政院突入

▲行政院への突入の模様を配信した市民によるyoutube映像(現在突入の模様が録画で視聴できる)

 夜8時(日本時間9時)過ぎ、抗議者らの一部が行政院に突入。行政院長(首相)執務室などに侵入した。占拠したのは立法院を占拠する学生グループとは別の集団で、学生よりも大人の姿が目立った(※)。立法院を占拠するグループは即座に声明を発表。「我々は行政院占拠は指示していないが、理念は同じである。警察は暴力的な排除はしないで欲しい」と訴えた。

(※)日本のメディア報道では、「学生らが行政院も占拠」という記述が目立つが、実際には学生よりも、社会人や、いわゆる「独立派」の保守系団体の姿が目立ったという

 馬政権側の対応は早かった。「強制排除はしない」という方針を出している立法院とは打って変わって、行政院に対しては即座に強制排除に踏み切ったのだ。背景には、行政院内の国防省や外務省が占拠されることによる国家機能麻痺への懸念の他に、馬総統に近い江行政院長が現地時間23時の会見で「このような展開は心が痛い。今すぐ内政部に警察の派遣を求め、法的処置を取る」と、強硬な姿勢を見せたことにもある。

 立法院占拠については、馬総統と政治的に対立する王行政院長が「馬総統は学生らの声に耳を傾けるべきだ」、と一定の理解を示していることが、ギリギリの防波堤となっている。しかし行政院占拠に対しては、そこを司る行政院長が「法的措置」を宣言したために、馬総統側も、強制排除に踏み切ることが可能となった。

 現地時間午後12時(日本時間深夜1時)、馬総統は緊急記者会見を開き、行政院を占拠する抗議者の強制排除を支持した。

 台湾のテレビ中継では、馬総統が会見で江行政院長の「強制排除決定」の支持を発表する前から、警察が半ば暴力的に行政院を占拠する市民を排除する様子が、繰り返し流された。しかし、テレビで流れる圧倒的多数の警官隊が市民を次々に制圧していく様子とは裏腹に、行政院敷地付近で取材を続ける原記者の現地報告では、行政院内はいたって平穏な空気が流れていた。

 原記者がいたのは、下に掲載した行政院地図の正門2付近。強制排除は地図の北側から始まり、散発的、部分的に抗議者との小競り合いを繰り返しながら、徐々に行われ、原記者のいるエリアで強制排除が行われるまでには大分時間差があったと考えられる。

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【原記者報告】午後9時過ぎ~ 行政院

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▲占拠された行政院 23日夜8時(日本時間9時)過ぎ

 23日夜8時(日本時間9時)過ぎ、新たな運動は新たな展開を見せた。市民らは立法院を占拠するだけに留まらず、「行政院」まで占拠したのだ。待機していた現場近くの喫茶店から行政院前へ急行した。

 行政院はすべての行政をつかさどる場所であり、立法院と違って、警察権力の指揮権も備えている。また、議員同士が殴り合ったり、靴が飛び交うような立法院とは違い、行政院が一日でも停滞すれば台湾国内の行政は停滞し、その被害は計り知れないという。

 行政院を占拠する市民はすぐに数千規模に膨れ上がった。立法院と同じように、中に大量の物資が運び込まれる。IWJが到着した頃には、立法院の本棟はすでに多くの警察が塞いでおり、内部に入ることは不可能な状態となっていた。警察との衝突で負傷したとみられる市民の介抱を目的とした医療班のみが出入りできるかたちとなった。

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▲正門を塞ぐバリケード

 バリケードが張られてはいたが、正門からは、比較的自由に敷地内と外部を出入りすることができた。各門で市民らによる演説が始まる。「警察帰れ」などといった声が上がり、呼応して拍手や歓声が起こった。

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▲警察の侵入を防ごうと座り込む市民たち

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▲占拠された行政院の別館「貴賓室 VIP ROOM」で休む市民

 同じ敷地内で、行政院の横に位置する別館「貴賓室 VIP ROOM」という建物も占拠された。その名の通り、VIPルームである。市民に占拠されたVIPルームは気品のかけらもなくなった。椅子やソファはバリケードとして使用され、空いたスペースやテーブルの上では市民が休憩していた。

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▲行政院貴賓室でバリケードを築く市民たち

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▲バリケードで封鎖された出入口

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▲行政院敷地内広場

 現地時間午後12時(日本時間深夜1時)を過ぎる頃、「強制排除が始まり、行政院からは血まみれの市民が運びだされた」、「催涙弾が用意されているようだ」、「警察が後門から突入した」などの情報がSNSなどで寄せられたが、中心部は警察が突入する気配はなく、市民らは最後まで笑顔でリラックスした表情さえ浮かべ、余裕を持っていた。正門は封鎖されておらず、敷地内と外も出入り自由だった。

 しかし、現地時間午前3時頃、ついに敷地内で座り込む市民への強制排除が始まった。(原佑介)

ドキュメント23日深夜へ続く。(取材:原佑介、林(現地)、岩上安身、須原拓磨・記事構成:佐々木隼也)

 IWJでは、IWJ台湾Chから、今も台湾全土で行われている抗議行動の模様を、現地市民の協力を得て報道し続けています。「持久戦」の様相を呈してきたこの事件。3月23日からは、原記者が現地に入り、生々しい抗議の模様や現地市民の声を体当たりで取材し、配信しています。この問題は、中国を米国に置き換え、ECFAをTPPに置き換えたら、非常によく似た構図となっています。IWJは苦しい財政状況ですが、可能な限り伝え続けたいと考えています。取材が持続できるよう、どうか緊急のご寄付、カンパのほど、そして会員登録をよろしくお願い致します。

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