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『壊死する地方都市』を読んで

中央公論2013年12月号に掲載された「壊死する地方都市」(増田寛也氏ほか)が話題になっている。人口減少問題に警鐘を鳴らした特集だ。いや、この表現は甘すぎるかもしれない。この論文を読むと「壊死」という言葉があえて使われた理由がよくわかる。次第に身体が蝕まれていくように特に地方においては人口が減っていき、やがては地域そのものが存続できないくらいになってしまう、ということが実感として伝わってくるのだ。

日本の総人口、という点からすると問題は明確に見えてこない。というのも、ここしばらくは高齢者が増加を続けていくから、だ。その陰で若年女性の数が減り続ける、という事実が目立たなくなってしまっている。その点を増田氏は指摘する。

20歳から39歳までの女性人口(若年女性人口)は2010年から2040年までの間で大きく減少する、という。子どもを産むことができる女性の数が減っていく中で人口を増やしていくのは相当大変なことになる、というのは言われるまでもないことだろう。

この論文では、この2010年から2040年までの間に、東京一極集中などの人口移動要素が今と変わらなければ、2040年の時点で2010年当時と比べて若年女性人口が5割以上減少する市町村の数が全体の20.7%、3割以上減少する市町村に至っては81.7%と驚くほど高い予測がなされている。

僕が独自に調べてみたところ、佐賀県内の市町においても80%の市町が3割以上減少するようだ。
2010年から2040年までの間で日本の若年女性人口は15,843千人から10,105千人へと36.2%減少する見込みだ。佐賀県では96,045人から64,049人へと33.3%減少する。

2012年時点では佐賀県の合計特殊出生率は1.61と高いほうだが、それでもこれだけ若年女性の数が減るということは合計特殊出生率を相当アップさせても人口減少に歯止めをかけるのは難しいだろう。

いま佐賀県は出産・育児・子育て支援策として「418(しあわせいっぱい)プロジェクト」に取り組んでいる。これは「出生数を自然体のトレンドよりも418人分増やそう」ということでやっているものだ。「これを達成できれば合計特殊出生率を0.1ポイント上げることができる」ということなのだが、とてもこれだけでは人口を維持するのには足りないということになる。

「若い人たちは東京に集っているから、日本全体としてはいいのではないか」という考え方もあるかもしれないが、東京はこどもを産みにくい、育てにくい地域なのか、合計特殊出生率は日本の中で圧倒的に一番低い。「もともと比較的子どもの数の多い佐賀県のような地方から、東京のように子どもがあまり産まれていない地域に若年女性(男性もだが)が移動していく」という現象が人口減少に拍車をかけることにつながってしまっている、とこの論文は指摘する。

この論文をべースにした質問も佐賀県議会の2月定例会で行われるなど議会の関心も高く、佐賀県では既に人口問題に関するタスクチームをスタートさせた。

本気になって人口問題を考える時期に来ていると思う。

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