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「人口・世帯」減少時代への備え−「世帯」が増え続ける時代の終焉 - 土堤内 昭雄

日本の大きな社会環境変化のひとつは、高齢化や少子化という人口構造の変化だ。それは社会保障制度の在り方をはじめ、さまざまな社会政策に影響を与える。人口構造の重要な要素である総人口は、2010年の国勢調査の1億2,805万人をピークに、今後50年間に4,132万人の減少が見込まれている*。これまで日本社会では、天災や疫病などによる短期的な人口減少はあったが、長期的な人口減少局面を迎えたことはなく、まさに大きな時代の転換点に差し掛かっているのである。

もうひとつの大きな社会環境変化は世帯構造の変化だ。農業が中心だった時代には、三世代が同居する「拡大家族」も珍しくなかったが、戦後、勤労世帯が増え、「夫婦と子どもからなる世帯」の核家族が「標準家族」になった。今日では核家族の高齢化により単独世帯や夫婦のみ世帯が増加、世帯規模の縮小が続いている。その結果、2010年以降は「人口」が減少しながらも「世帯」は増加を続けるのである。

しかし、2019年には世帯数も減少局面を迎える。これまでは人口・世帯がともに増加してきたが、今後5年間の人口は減少し世帯は増加、それ以降は人口と世帯がともに減少する時代が訪れるのだ。それに対して企業経営や社会政策はどう対応すればよいのだろう。これまで「人口減少」に関しては、消費に及ぼす影響や労働力不足等の社会的影響について認識されてきたが、「世帯減少」に関しては、あまり注意が払われて来なかったのではないだろうか。

例えば住宅は個人単位ではなく世帯単位で必要とされる財だ。現在でも既存住宅と世帯構造のミスマッチから空き家が増加しているが、今後は世帯数そのものが減少するため、住宅需要が大きく低下することが予想される。世帯単位の国民健康保険料やNHKの放送受信料なども、大幅に収入が落ち込むのではないか。テレビやパソコンの利用はすでに個人単位になっているが、家庭の中にはまだ多くの世帯単位の家電製品などもあり、「世帯減少」は今後の消費動向に大きな影響をもたらす。

社会政策においても、世帯を単位として考えられてきた社会保障制度などは大きな転換を求められるだろう。世帯が内包してきた子育て、教育、介護などのさまざまな生活保障機能が縮小する可能性があるからだ。今後、我々は「人口減少」という社会状況に直面する上、5年後には「世帯減少」という“未知との遭遇”が待っている。しかし、それは不測の事態ではなく、確実に予測可能なことなのだ。「世帯」が増え続ける時代が終焉するという大きなパラダイムシフトの中で、今から国や企業、個人は、「人口・世帯」減少時代への備えを考え始めても早すぎることはない、と思うのである。

*国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」
(参考)研究員の眼『縮小する家族・拡大する家族~社会保障を担う“家族”という含み資産』(2014年2月17日)

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