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「明日、ママがいない」最終回がYoutubeで14万回も再生された理由 - 川合雅寛

日本テレビ系列で放送されていたTVドラマ「明日、ママがいない」が3月18日の放送を持って終了しました。全9話と通常よりも少ない話数ですが、内容としては十分満足できる終わり方でした。

「明日、ママがいない」問題の簡単なおさらい

「明日、ママがいない」はBPOと呼ばれる放送倫理・番組向上機構に取り上げられた作品であり、初回終了後、熊本の慈恵病院等から内容変更の依頼があったりと世を騒がせた作品であるため、ご存じの方も多いかと思います。(日本テレビ ドラマ「明日、ママがいない」放送に当たりまして:慈恵病院HP)

「明日、ママがいない」は当初はスポンサーがついていましたが、その脚本の内容に慈恵病院や児童養護施設側が誤解を招くと反発が起こり謝罪要求と作品の内容の是正を求められました。ですが、日本テレビ側が大きな対応をせず、4話以降のTVCMが打ち切られることになり、代わりにAC(以下、日本広告機構)が流れ、最終回を迎えました。

「明日、ママがいない」の視聴率はどうだったのか

全体平均視聴率は12.79%、TVCMがACに切り替わった4話以降の平均が12.1%とテレビ不況と言われているこのご時世でかつ、水曜10時という時間帯を考えても安定していると思いますし、良い作品だったことが伺えます。

この作品の特徴は児童養護施設というキーワードに高校教師、人間・失格でセンセーションを巻き起こした野島伸司脚本という点だったのですが、蓋を開けてみると、親子愛の再定義というテーマだったので波風も少なく、人の心理面に深く入り込んだ作品に仕上がっています。そのため、ドラマというよりも小説に近いのではないかなと思いました。爆発的な視聴率は稼げませんでしたが、いぶし銀の作品になったと思います。

ポストテレビ時代の申し子かもしれない

私はこの作品に当初は興味がなく、ようやく見たのは7話目からでした。
しかも、その時間帯に家にいるわけでも無いのでリアルタイムで視聴をしておりませんし、録画も特にしていませんでした。では、どこで見ていたのでしょうか?

それはYoutubeにある日テレチャンネルです。

Youtubeの日テレチャンネルは他の動画と違って広告が一切無く、インターネットの回線速度以外はストレスがありません。ここを利用すると、見逃しても1週間は見ることが出来ます。3月19日現在、「明日ママがいない」最終回は14万回以上再生されており、この見逃し視聴は成功しているようです。

Youtubeの「明日、ママがいない」が毎回10万回以上の再生されており、テレビの「明日、ママがいない」の毎回の視聴率が11%を超えていた事を考えると、1万回再生あたり1%程度とも考えられYoutubeへのアクセスもテレビの視聴率も同じ傾向が見て取れます。

ネットとテレビでは見られ方が違った?

もう少し統計的な数字を元に調べてみると、ネット経由の視聴者がYoutube上の本作品へどのようにアプローチしたのかが見えて来るため、解説していきます。

Youtubeでは各動画毎に統計情報が公開されているので実際の日毎の再生頻度等を確認してみました。放送終了後の3月12日は既に約4万回再生され、翌13日の再生回数は約4.5万回程でした。その後はゆるやかに再生回数は減り、19日現在14万回超の再生回数となっています。これは22時の放送終了後、帰宅後か帰宅途中にスマホから見たのではないかと思われますし、翌日にはネット上で記事なっていましたので、そこから興味を持ってアクセスしたが、その後は話題性が無くなったため急減したものと考えられます。

また、平均視聴時間が15分程度でしかなく、1話50分あるのにこのような結果になっているのは、Youtube等のインターネット動画はシーンを選択することが可能であるため、最終回としてどのようにこれまでの伏線を回収したのだろうかと、前回までに里親にもらわれなかった子供たちの決着シーンだけを選んで観ていたのでは無いだろうかと思われます。

最初に掲げた視聴率と再生回数の相関関係ですが、興味があってアクセスするという意味では相関関係が認められそうですが、視聴時間を考慮するとネット特有の作品へのアプローチがあったように考えられます。やはりインターネット上の動画はテレビ番組や映画の様な作品自体を見せるものではなく、情報提供の一つの形なのだと思います。

作品の品質と広告費の関係性

「明日、ママがいない」はスポンサードを無視したフリーミアムモデルとして語り継がれることになるでしょう。干渉されること無く作品を維持することで、様々ないざこざは起こりますが作品としての価値は上がる、もしくは維持されるということがある程度証明されたと思います。

世の中に批判的な人間がいるからといって、広報としてイメージダウンがなされクレーム電話対応が増えるからと、スポンサーを降りるというのはポリシーがあまりにもないと思います。それだけ、広告宣伝費の使い方と企業イメージについて、誰も何も考えていないということになります。

本件に関しては、作品の品質と広告費のバランスを見つめなおす良い機会だったと思います。結果的に、9話と通常よりも2話少なくなりましたが、これは打ち切りではなくそれだけ、意味のないTVCMをこれまでは流していたんだろうということが推測されます。Youtubeでは50分間しっかり作品が途切れずに流れていますので、通常よりも1話2話分凝縮されていると考えて問題無いと思います。

Youtube等で見るということは作品と広告が分離しています。広告のために強引に割りこませるようなカット割りを考えなくても良くなります。これにより必然的に作品の作りこみによる価値向上し、テレビへの回帰が行われTVCMもより行われやすくなるかもしれません。むしろ、ネットで見るということを前提に、シーン割が考えられる時代が来ているのかもしれません。

私は広告という分野に触れたことがないので、これ以上話すことは出来ませんが、今回の件はテレビの価値を再認識した良い出来事だったと思います。

「明日、ママがいない」はスポンサード広告モデルが見直されるチャンス。
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